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「アラン様、大変ですよ。実は、レイモンド様達もお互い命の危機が視える人でした」


エマーリエが言うとアラン王子は驚いて前に座っている兄を見る。

レイモンドは肩をすくめてアラン王子にニヤリと笑って見せた。


「さっきエマーリエちゃんには説明したんだけれど、僕とジュリエットが見えるって知ったのは結婚前後だね。ちなみにお前と同じように夢で見るタイプだよ」


「なんで俺が夢で見ると思うんだ」


納得がいかないような顔でアラン王子が言うと、レイモンドはニヤニヤと笑う。


「だってお前、小さい頃泣きながら言っていただろう。僕のお嫁さんが死んじゃうって」


レイモンドが言い終わる前にアラン王子はエマーリエを振り返った。

真っ赤になって俯いているエマーリエを見てアラン王子は顔を手で覆いため息を付いた。


「兄上、何を言ったんだ・・・」


「昔の話だよ。僕がお前を慰めながら夢の内容を聞いてあげていたじゃない?」


「・・・そうだったな」


昔の話を出されて顔をしかめているアラン王子を見つめてレイモンドは楽しそうだ。


「城の大聖堂で、アランの結婚式だと思われるときに、アランのお嫁さんらしき人が殺される夢だと僕もアランも思っていたが、実際は僕の戴冠式にアランとエマーリエちゃんが斬られるという未来の夢だった。それに気づいたのは、僕達がお互い戴冠式で斬られる夢を見たからだ」


「兄上たちもだと?」


「そう。それを見たのは本当に一昨日だったよ。大聖堂で僕達は大勢の騎士らしき者に襲われるんだ。お互い報告をしていてね、気づいたんだ。エマーリエちゃんの出来上がったドレスを見てアランが昔、夢で言っていた場面とそっくりだってね。それに突然アランがエマーリエちゃんと婚約破棄だなんだって言いだしたのを見てお前は絶対に戴冠式で何かがあると見たんだなと思った」


「それで、俺達がお互い命の危機が視える者同士だと思ったのか」


アラン王子が言うと、レイモンドは頷く。


「申し訳ないが母上にカマをかけたらあっさり判明したよ。緊急事態だったからね。本来であれば夫婦間で留めておく話だろう。だから伝説と言う形で残っていると思うんだよね。ただ、今回は緊急事態だよ。なんせ僕達全員が死んでしまう恐れがあるからね」


レイモンドが言うと、ジュリエットも頷いた。


「私も夢で見るタイプなのだけれど、レイモンドが王冠を頭に乗せる時に傍に居た甲冑姿の騎士らしき人達が剣で刺し殺していたわ。そして私も刺されて倒れるときに振り返ったら、エマーリエちゃんと多分アラン君が剣で刺されているのが見えたわ」


「あと数日で僕達は死んでしまうかもしれないからね。お互い見えたものを共有しようと思って。回避しないとね」


レイモンドはそう言ってまた天井を見上げる。


「ちなみに、ベアトリス王妃も王様の危機がみえるんですか?」


エマーリエはふと疑問に思って聞くと、アラン王子もレイモンド王太子も興味があるのかじっとベアトリス王妃を見つめた。

ベアトリスは苦笑して頷く。


「そうね、視えたわよ。お嫁に来てからだけれど。あの人はそんなに命を狙われることはなかったから機会はなかったけれども。ただ、病死だけは見えなかったわね」


「母上も視えたとは驚きだね。病気は仕方ない、天命だったのだろうね」


悲しそうに言うベアトリスにレイモンドは驚きながらも王妃を慰めた。

少ししんみりした空気になり、ジュリエットは手を叩いて仕切りなおした。


「私たちはまだ天命ではないわ。私はまだ死ぬつもりはないわよ」


「それは俺もだ」


アラン王子は頷いて机の上に紙とペンを引き寄せて書き始める。

エマーリエが覗き込むと、大聖堂の図を簡単に書いて大きく丸印を付けた。


「夢で見た俺の位置はこの辺りだ。まず、エマーリエが立っている後ろから甲冑姿の騎士が後ろから斬りつけようとしていて俺はそれを阻止しようと剣を抜いて駆けつけようとして誰かに刺され倒れた」


そう言って、アラン王子はエマーリエにペンを渡す。

エマーリエは戸惑いながらも一度だけ見た光景を思い出しながら図を眺めた。


「アラン様がこの位置なら私はここに居たと思います。なぜか少しアラン様と離れていますね。アラン王子が何か叫びながら剣を抜いてこちらに来ようとして私が後ろから斬られたようで倒れるときにアラン様が何人もの人に剣で刺されているのを見ました」


エマーリエは自分の居た位置を丸で囲んで紙を机の中央へと置いた。

ジュリエットは紙を取って、大聖堂の壇上の上に印をつけた。


「私は多分ここね。レイモンドの斜め前。後ろと横から騎士が来て刺されたわ」


レイモンドは印の付いた紙を見て顔をしかめた。


「凄く沢山の裏切者が紛れているってことになるよね。城の騎士の半分が俺たちを殺そうとしているって言う事かな。・・・これもう無理じゃない?」


顔の見えない敵の多さにレイモンドは諦めたようにペンを放り投げて机にうつ伏した。


「戴冠式自体を辞めることはできないんですか?」


エマーリエが言うと一同は首を横に振る。


「できるわけがないよ。国を挙げてのお祝いだよ。こうなったら集まっている人の武器を取り上げるとか・・・警備上無理か」


レイモンドは自ら提案するもすぐに諦めてまた机の上に顔を乗せる。


「一体誰なのかしらね。レイモンドが王になるのを反対しているのは・・・」


ベアトリスが呟くと、レイモンドがアランを見た。


「お前か?実は王になりたかったとか?」


「俺も一緒に殺される予定だからそれは無いな」


アラン王子が言うと、レイモンドがハッとしてベアトリスを見た。


「まさか、オズワルドか?」


「違うでしょう。あの子は臆病だし、王になるなんて考えたこともないと思うわ」


ベアトリスが否定をする。


「全く分からない。一体誰が僕達を殺そうとしているんだ」


レイモンドは机にうつ伏したまま呟いた。

「あれだけの騎士が寝返っているんだ、俺達が知らないうちに裏で誰かが動いているのだろうな」

アラン王子は腕を組んだまま難しい顔をしている。


「そうだね。もしかしたら、騎士達が知らない間に入れ替わっているとか?」


「不可能だろう。城勤めの騎士はそれなりに精査されている」


「どうしようか、当日・・・。回避できる方法と考えると、僕達を襲う騎士の数はさっと20名ぐらいかな?」


レイモンドは書かれた図を見ながら呟いた。


「俺達が予知した人数だから他にもいるかもしれないが」


アラン王子は頷いてエマーリエを見た。


「エマーリエの執事のセバスを護衛にしよう。せめてエマーリエとジュリエットの命は守り城から逃げるぐらいのことはできるだろう」


「え?エマーリエちゃんの執事ってそんなに凄いの?」


驚くレイモンドに、アラン王子は頷いた。


「前職は傭兵だと言っていたがかなりの腕前だ。もし、反乱が起きたらセバスが主となりエマーリエとジュリエットをこの通路から逃すことぐらいはできると思う」


アラン王子が図を指でなぞった。

レイモンドが居る位置を超えて祭壇の裏を通るという道だ。


「避難するときに、ついでに僕も拾ってくれないかな」


レイモンドが言うとアラン王子は肩をすくめた。


「俺の読みだとその時は、兄上は刺されている前提だ」


「その前に阻止しよう。とりあえず信用のおける騎士を周りに配置して、エマーリエちゃんの執事を護衛に雇って様子を見るしかないな。少し予定を変えるだけでも未来は変わるからね」


レイモンドの言葉にエマーリエとアラン王子も頷く。


「たしかに、少し予定と変えるだけで未来は変わるな」


綿密な計画をし、当日の移動や立ち位置を変える方向で戴冠式を迎えることになった。




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