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数日後、エマーリエはベアトリス王妃に呼び出され部屋に向かうとマドリーヌとジュリエットが待っていた。
珍しい組み合わせにエマーリエは軽く腰を下げて挨拶をする。
「お呼びとお伺いしましたが」
「固い、固いのよ!ねぇ、お義母さま」
すかさずジュリエットが手に持っていた扇子でエマーリエを指した。
「そうよ、私たちは家族になるのだから気楽にしていてね」
ベアトリスも微笑みながらエマーリエに席を勧める。
広い室内に置かれたテーブルの上にはドレスのデザイン画が散らばっていた。
一体なんなのかと首を傾げているエマーリエに、ベアトリスはため息を付く。
「やっぱり、エマーリエちゃんは準備していないと思っていたのよ」
「何の準備ですか?」
「レイモンドの戴冠式よ」
「戴冠式!年明けにあるとはお伺いしておりますが」
つい先日公表されたばかりの情報だ。
頷くエマーリエにベアトリスは首を振った。
「あなたも出るのよ」
「どうですかねぇ。母と父だけ出席するかもしれませんが・・・」
国王誕生の瞬間にはエマーリエは家族と出席するであろうことは予想していたがジュリエットがベアトリスと目配せをして大きく頷いている。
「やっぱり勘違いしているわよ。エマーリエちゃんは国王になるレイモンドの弟アランの婚約者なのよ。だから、出席するとしたら国王側。国民に手を振る側なの」
ジュリエットに説明されてエマーリエは目を見開いた。
今まで適当に眺めていた国の儀式をまさか参加する側になるとは思っていなかったのだ。
「まだ結婚していませんが・・・」
「婚約者なのだから当たり前でしょう。常にアランの隣に居るのよ。それなりの衣装を用意しないと駄目よ。アランは何も説明していないのね」
この場には居ないアラン王子に腹を立てながらもベアトリス王妃は机の上に広げられたドレスのデザイン画を数枚エマーリエに渡した。
どれも、華やかなデザインにエマーリエは目を輝かせる。
「素敵ですね」
「エマーリエちゃんにはこれが似合うと思うの」
「私とお揃いのデザインなのですわ。エマーリエお姉さま」
マドリーヌも手に持っていたデザイン画をエマーリエに渡した。
二枚の絵はよく似ているドレスが描かれており、エマーリエは灰色に近い薄い青い色、マドリーヌはピンク色のデザインだ。
レースがふんだんに使われて、スカートは大きく膨らんで動きにくそうだなと思ったがエマーリエは頷く。
「マドリーヌちゃんと同じようなデザインで光栄です」
「良かったわ。気に入ってもらえて」
ベアトリス王妃はホッとしてお茶を一口飲んだ。
「実はもうそのデザインで作らせているのよ。ドレス」
「えっ」
驚くエマーリエにマドリーヌは苦笑している。
「アラン王子が別に作っておられるのではないかと私たちは思っていたのですが、どうやら本当に用意をされていないようでしたのよ」
「そうなんですね。戴冠式に出るなんて少し緊張しますね」
数か月先の話だが不安になるエマーリエにジュリエットがため息を付いた。
「あなたは良いわよ。立っていればいいんだもの。私は王の妻になるのだから大変だわ」
「昔を思い出すわね。去年夫が病気で亡くなってしまうなんて思わなかったもの。自分の子供が王になるなんて・・・少し早すぎると思うけれど、レイモンドならいい王になると思うわ」
昔を思い出したのか、ベアトリス王妃は感極まり、涙をぬぐいながら呟いた。
「本当ね。私もこんなに早く王妃になるなんて思っていなかったから勉強が追い付かなくて大変だわ」
ジュリエットは豪快にお菓子を口に放り込んで言うと、ベアトリス王妃も頷く。
「そうね。ほとんど仕事はジュリエットちゃんがやってくれているから助かるわ。もう私も教えることも無いわね」
これから王妃となるジュリエットと王妃との会話をまさか自分が聞くことになるとはとエマーリエは妙な感動をしつつお茶を飲んだ。
「ベアトリス王妃様はこれからなんとお呼びすればよろしいのですか?」
ふと疑問に思いエマーリエが聞くとベアトリスは満面の笑みを浮かべた。
「お母さまでいいわよ」
まだ結婚もしていないのにさすがに呼ぶこともできずエマーリエは首を振る。
マドリーヌはクスクス笑ってジュリエットを見つめた。
「年明けには、ジュリエット王妃様とお呼びしなくてはいけないですわね」
「止めて頂戴。今まで通りお姉さまでいいわよ」
今まで通り気取らない雰囲気のジュリエットに感動しつつ頷くエマーリエだったがマドリーヌは首を振った。
「そうもいきませんわよ。王妃は気高くありませんといけませんもの。たとえ兄妹でも王や王妃は気さくに接してはいけませんわ」
凛として言うマドリーヌにジュリエットは豪快に笑った。
「固いわねぇー。身内だけはいつも通りでいいわよ。堅苦しいのは良くないわよね」
「そうよねー。王や王妃なんて仕事や規則が多くて大変なんだから、せめて家族で助け合わないとやってられないわよね」
お互い顔を見合わせてベアトリスとジュリエットは微笑み合った。
王妃になるのが自分ではなくてよかったとエマーリエは二人を眺めながらお茶を飲んだ。




