8話
「やばい、もうなんでこういう日に限って呼び止められるかなぁ」
放課後、ユウリが袴田くんを呼び出したのは、駅近くの公共施設のフードコートだった。
校内で話せばいいじゃないかと言うと、誰に聞かれるかわからないという理由らしい。
フードコートだってうちの生徒がいる可能性は極めて高いのをわかっているのだろうか。
炎天下の中、日傘を差していても汗が流れ落ちる。
どうにか辿り着き、ふたりを探してみると、一番端っこの四人席に二人で向かい合って座っていた。
「ごめん、遅れた!」
テーブルに手をつき、ユウリにそういうと、袴田くんの体が一瞬ぴくりと跳ねた。
「え?」
「あ、はじめまして!二年三組の瀬田です」
「あ……え?これなに?五十嵐さん?」
まだなにひとつ説明してなかったのだろう。明らかに困惑している袴田くんを余所にユウリは飲み物を啜った。
「え?それゴンチャ?いいなぁ!」
「うん、悪くない。
ふゆこが遅いから、あそこで買った」
指を差した先に十人ほどの列が出来ていた。
「袴田くんに有名だと聞いたから試しに並んでみたんだ」
「あ、ほんとだ。袴田くんは何買ったの?」
「僕は、マンゴーを……ってそうじゃなくて、これなんの呼び出しですか?」
「ああ、すまない。
実は今日、君の様子を一日見ていたんだが」
(ちょ……いきなりストーカー発言かい)
「禁止されているのに、授業中ずっとスマホを触っていたな。理由はなんだ?」
「えっ……いや、それ……」
一瞬迷い、眉を寄せた。
「五十嵐さんに言う必要ある?関係ないよね」
「たしかに関係ないが、期末で大幅に点を落とした……とも聞いた」
明らかに顔が青ざめた。
「理系は三クラス、クラス点というものが存在する。
テストの点や授業態度、成績、学校行事への取組、その全てを数値化し、三年の最終年で一位になったクラスは推薦が優先されるのは知っているだろう?」
「え!なにそれ、せこい!」
「そうでもない。理系クラスはほとんどが共通テストを受けるからな。
だが、一部の生徒は秋のうちに終わらせられる推薦枠を狙っている。推薦は個人単位だが、同じ枠に応募がありどちらも同レベルだった場合、このクラス優先が適用される」
「私は学級委員として、これを獲得したいと思っている」
「よって、君のスマホ依存と成績の低下は見過ごせないということだ」
きっぱりと見据えるユウリとは相反して、袴田くんは真っ青なまま下を向いた。




