7話
「で、どういうこと?」
屋上へ続く階段の踊り場で、ようやくユウリの手を離した。
テスト結果が貼り出された廊下で鼻息荒く騒ぎ始めたユウリをなだめ、ここまで連れてきたのだが、本人はいささか不満そうだった。
「袴田のことだ。朝から彼を観察していたんだが……大きな問題があった」
「えー、なに?」
「一限目も二限目も、ずっとスマホを弄っていたんだ!」
「校則では、スマホの持ち込みは認められている。しかし、授業中や校内での使用は禁止のはずだ!」
あまりにも真剣な表情だったので、思わず笑いそうになる。
「いや……言いたいことはわかるけど、今ってテスト返却ばっかりじゃん? そういう日くらいは、スマホを見ちゃうこともあるんじゃない? 普段はそんな子じゃないんでしょ?」
「それは……わからない」
「……スマホなんて、普段は先生もそこまで厳しく注意しないじゃん。基本的には生徒の自己判断って感じでしょ。他人が校則を守ってないからって、そんな咎めるタイプだったっけ?」
「……じ、実はふゆこに話してなかったことがあって」
「なに?」
「学級委員になったんだ……」
とてつもなく深刻な悩みを抱えているような顔で、こちらを上目遣いに見つめてくる。
「え……なにそれ?」
「正直、今までそんなことをしたことはなかったのだが……誰も立候補しなくてな。担任が『私がいいのではないか』と提案した途端、クラス全員が満場一致だったんだ」
(……なんか、ちょっと嬉しそうだな)
他人に興味がないはずのユウリが、こんなふうに人の行いを咎めるなんて珍しい。
おそらく、初めて与えられた学級委員という役目を全うしようとしているのだろう。
「そ、そっか。でも、じゃあどうするの?」
「ああ。だから、袴田を放課後に呼び出した」
「嘘っ!? 早いでしょ!!」
「いきなり担任に話すよりは、直接本人から理由を聞くべきだろう?」
「そ、そうかもだけど……袴田くんと話したことないんでしょ?」
「ない。だが、『クラスに関わる大切な話だ』と伝えたら、『わかった』と言っていた」
(行動力ありすぎだな……でも、これがきっかけで何か変わるかもなぁ)
「わかった! 私も同席させて? ユウリが暴走しないように見てあげる」
「暴走などしない! 糸のほつれは食い止めないと、いつの間にかすべて解けてしまう。そのためだ!」
「うんうん、わかってる。とりあえず、放課後どこへ行ったらいい?」
納得のいかない様子のユウリをなだめながら、放課後に会う場所を聞き出した。




