6話
期末テストの返却が始まった。
想像していたよりも良い結果に、自然と笑みがこぼれた。
高校受験でこの学校を目指すと決めた日から、勉強ではいつもユウリの力を借りてきた。
彼女の手助けがなければ、この学校に合格することはできなかっただろう。
そう思うと、ユウリから頼まれたお願いなど、とても小さなことに思えてくる。
「嬉しそうな顔して……そんな点数良かった?」
隣の席の海が肩を寄せ、話しかけてきた。
「え、ああ。まあね」
「まじか〜。ふゆちゃんって、いつもテスト余裕って顔してるよな」
「海は?」
「ギリギリ〜」
数学の答案用紙をぺらりと見せられる。
その言葉どおり、四十三点。赤点まであと少しだった。
「やばいね」
「もうさ、文系なんだし数学いらなくね?」
「それは言えてるけど……ねえ」
「んー?」
「良かったら、私の助っ人紹介しようか?」
「何、助っ人って?」
「相手がいいって言ったらだけどね」
この期間が終われば、すぐに夏休みに入ってしまう。
それまでに誰をターゲットにするか決まっていなければ、夏休みの貴重な時間を無駄にすることになる。
袴田が駄目だったときのために、他の候補とも会えるようにしておかないと…。
海が不思議そうな表情をしても、笑顔で返すだけにとどめておいた。
昼休みになると、普段は足を踏み入れることのない理系校舎へ向かった。
ユウリの観察の進捗を、どうしても確かめたくなってしまったのだ。
ふと、廊下に張り出された紙を見て思わず声を上げる。
そこには、期末テストの成績上位二十名の名前と点数が掲示されていた。
普通科は一学年二百八十人。
二年生から文系・理系に分かれ、理系クラスは百二十人。掲示されているのは、その上位二十人だった。
上位二十人だけとはいえ、今どき、こんな時代錯誤な取り組みが許されるのだろうか。
「嘘でしょ……」
その頂点には、五十嵐ユウリの名前が堂々と載っていた。
ユウリの名前から順に二十位まで目を通す。
――あれ?
なんとなく感じた違和感に首を傾げかけた、そのときだった。
廊下の向こうから視線を感じ、振り返る。
まるで怒っているかのように髪を逆立てたユウリが、こちらへ向かって歩いてきた。
大股で歩くのはいつものことだが、明らかに様子が違う。
「どうしたの? なんかあった?」
「ふゆこ……大変だ!」
「え? なにが?」
「袴田は、なにか大きな問題を抱えている」
ユウリの目は真剣だった。
そして、こういうときの彼女は、必ず何かを巻き起こす。




