4話
「そもそも、男女交際というのは、こうやって相手を選定してから始めるものなのか?」
「……んなわけないでしょ。
普通は好きになってから告白するもんだから。
好きになるまでの過程は人それぞれだけど……」
「ふむ。ふゆこはどうやって交際を始めたんだ?」
「はあ?! わたし!?!」
突然の質問に、思わず仰け反る。
「わ、わ、わたしは……え? 彼氏いるって言ったっけ?」
ユウリとは親友だと思っているが、恋愛話をしたことはない。
彼女には縁も興味もないものだと認識していたからだ。
「聞いたことはないが……そのコルクボードに、同じ人物との写真が何枚か飾られているから、そうなのかと予想した」
コルクボードには、進藤先輩と撮った写真が何枚も飾られている。
そのほとんどは、付き合う前に体育祭や文化祭で偶然を装って撮ってもらったものだ。
「う、うん。そう。彼氏」
その言葉を口にした途端、耳たぶまで一気に熱くなる。
実際に先輩を「彼氏」と呼べるようになってから、まだ四か月しか経っていない。
「ふゆこが告白というものをしたのか?」
(げ、私の恋バナになってる……)
ユウリは顔色ひとつ変えないのに、こちらは先ほどから冷や汗が止まらない。
ほかの友達と話すときは、羞恥心よりも「長年の片思いが実ったことを聞いてほしい!」という気持ちのほうが強かった。
なのに、どうしてユウリにはその気持ちが湧かないのだろう。
それでも、もう乗った船から降りることはできない。
ふぅ……と息を吸い、グラスを手に取って麦茶を流し込む。
「ユウリは知らないと思うけど、進藤先輩は同じ中学なの。
私が中学のときバスケ部だったのは知ってるよね? そのとき男バスのキャプテンをしてて……」
ちらりとユウリを見ると、無表情のままこちらを見つめている。
「ちなみに、こういうときは相槌とか打っていただけると、大変話しやすいです」
「!! そうなのか……な、なるほど。
バスケ部だったのは知ってる。進藤先輩が男バスのキャプテンだったことも知ってる」
「え! なんで?」
「なんでって、中一のときに男バスは県大会に出場しただろう。
たしか終業式の日に壮行式があって、代表として一言話していたから覚えている」
「相変わらず尋常じゃない記憶力……」
「まあ、それで……先輩とは中一のときに知り合った。当時はほとんど話したこともなかったんだけど……」
そう、あの頃はまだまだ子どもで、恋愛感情というものをよく理解していなかった。
バスケ部の後輩のことは男女関係なく全員の名前を覚えていて、気軽に声をかけてくれる優しい先輩。
その程度の認識だった。




