3話
「……袴田……」
しばらく沈黙が続いたあと、ユウリがぼそりとつぶやいた。
「あ、やっぱり袴田くん?そうだよね、同じクラスだし!
もしかしてユウリも結構タイプだったりする?」
「そういうわけではないが……彼は今、斜め前の席だったなぁと」
「それだけかーい」
私は頭をゴツンとローテーブルに打ちつけた。視線がたまたま部屋に掛けられたコルクボードへ向き、はっとする。
「そうだ、海と髙田くんの写真は見せてなかったよね」
立ち上がり、コルクボードに飾られた写真のピンを抜き取る。
楽しそうに笑う六人の男女。
その写真をユウリの前に置き、隣に立つ笑顔の海を指差した。
「この子が海だよ。可愛いでしょ?」
「……かわいい、という評価なのか」
「可愛くない?
目鼻立ちがはっきりしてるから、『女だったら確実に可愛いよね』ってよく盛り上がるんだけど」
「たしかに、男性アイドルのような見た目だな」
「でしょ? 性格もめっちゃいいからモテるんだけど、なぜか彼女を作らないんだよねぇ。
まあ、『彼女欲しくないの?』って聞いたら『欲しいに決まってんじゃん』って言ってたから、ユウリにもチャンスはあるはずだよ!!」
そう言うと、ユウリはまた少し考え込んだ。
「あ、あとこれが髙田くんね」
今度は棚に置いてあった雑誌を手に取る。
一般人のコーディネートを特集したストリートスナップ。その中でも、一際大きく掲載されたカップルの写真を指差した。
「これさ、去年の冬のなんだけど、『髙田くんが載ってる!』って話題になって買っちゃったんだよね」
「友人でもないのに買ったのか?」
「いや、まあそうなんだけど……たまたま本屋で盛り上がっちゃって……誰かが買うって言うから、そのノリで? それに、この雑誌自体はよく読むし!」
言い訳じみた言葉を口にすると、なんだか恥ずかしくなり、顔に熱が集まるのを感じた。
ほかの友達になら気にならないのに、ユウリにはなぜか、このミーハーな一面を知られるのが少し恥ずかしい。
「……そうか。たしかに、この写真はよく撮れているな」
「だ、だよね!
この女の子はもう別れてるけど、他校の子なんだ」
「それで、タイプだなぁ〜とか、好きになれそうだなぁ〜とかあった?」
「タイプで言うと……私は真田広之さん出演作は網羅しているがが、この中にはいないな」
「いや、高校生にあの渋さは無理だろ……」
今日一日かけた恋愛プレゼンは、その一言であっさり崩れ去り、ガクリと肩を落とした。




