2話
「では、五十嵐ユウリさんの初彼氏候補者を発表いたします」
久しぶりに我が家へ招かれたユウリは、狭い自室のローテーブルの前で膝を抱え、三角座りをしたまま小さく拍手をした。
私はカバンから大学ノートを取り出し、ゴホンと咳払いをする。
今日の授業時間をほぼすべて費やして作り上げた候補者リストを発表するのは、少し緊張した。
「まず、一人目は……ユウリと同じクラスの袴田昌磨くんです」
ユウリは顔色一つ変えず、私を見つめている。
「彼を候補者にした理由はいくつかあるんだけど、まず第一にクラスメイトってこと!
相手のことを知りやすいし、仲良くなるチャンスもあるでしょ?
袴田くんは学年順位も十位以内で、ユウリと話も合いそう。
それに高身長の塩顔イケメンで、実は文系女子の間でも結構人気なんだよね。
問題点は……私が彼のことをあんまり知らないから、もしかしたら彼女がいるかもしれないってことかな」
そう言ってスマホの写真を見せると、ユウリは眉をひそめた。
「これは……盗撮では?」
「違います。体育祭でたまたま映り込んでいたので、拡大しただけです」
「さっ、次!
二人目は私のクラスメイトの坂村海。
お調子者だけどすっごく優しいし、気配りも完璧! 男子にも女子にも分け隔てなく接するから友達も多いし、ユウリの不思議具合にも適応できると思う。
ちなみに、高校に入ってすぐ彼女と別れて以来、今はフリーらしいから、そろそろ彼女が欲しい頃じゃないかな」
「……不思議具合?」
「……はい! 最後の候補者いきます!」
うっかり本音を口にしてしまい、私は慌てて大きな声を出した。
深く追及されると面倒なので、サクサク進めよう。
「三人目は、国際科の髙田彰人くん。
彼のことは知ってる?」
ユウリは首を横に振る。
「えー、知らないの!? 超が四つくらいつく美男子だよ!
ただ……泣かせた女は数知れずっていう、ガチの遊び人って噂。
うちみたいな公立の進学校でそんな人いるんだって思ったけど、国際科は帰国子女も多いし、ちょっと別枠な感じなんだよね」
ユウリの視線から目を逸らし、私はまくし立てるように話を続けた。
「でもユウリはパパが外国人だし、そういうタイプのほうが実は合うかもなぁって。
なんせ、ダニエルパパは愛を語らせたら日本一レベルだからね。
あと〜これは卑怯な作戦かなぁと思ったけど……フリーのときは誰でもオーケーらしいって聞いたから、すぐ彼氏になってくれるかもってことで選びました!」
胸を張ってノートを閉じた。
そして、心の中のブレを見透かされないように、最後の一言を放つ。
「さあ! どうする?」




