12話
「ねえ、私もドリンク買って帰る」
そう言うと、ユウリはいまだ数人が並んでいる列をちらりと見た。
「そうか。じゃあ、ここで」
「嘘でしょ!?そこは待つとこでしょ!」
「そろそろ帰らないと。今日は十九時から母とテレビ通話の予定なんだ」
「まだ十七時だよ? 並ぶくらい付き合えるでしょ」
ユウリはその賢い頭で計算したのか、黙って列の最後尾に並んだ。
「ダニエルに買って帰ろうかな」
「あ、それいいじゃん! パパ、めっちゃ喜ぶんじゃない?」
「何がおすすめなんだ?」
「無難ならブラックミルクティーかな。暑いし、さっぱりしたいならフルーツティーもいいし……ダニエルパパって甘いの好きだっけ?」
「すごく好きだな」
「じゃあ黒糖もいいんじゃない?」
ぶつぶつと呟きながら、ユウリは店舗に掲げられたメニュー表を見つめている。
彼女のことをよく知る私だからこそ、不思議だった。
「夢の中のことなんて気にする必要ないんじゃない?」
「ユウリは感情表現は苦手だけど、ちゃんと相手を思いやれる人だよ」
一瞬目を見開いたあと、ユウリは静かに左右へ首を振った。
「それは、ふゆこが優しいからそう思うだけだ」
「……なら、次の人を考えないとね!」
「え、あ、ああ」
「とりあえず、うちのクラスの海と遊びに行くっていうのはどう? もうすぐ夏休みだしさ」
「海に遊びに行くのか?」
「違うよ! 坂村海。こないだ説明したでしょ」
「ああ」
「二人だけだと気まずいだろうし、私も行くからさ」
「海となら絶対楽しくなるよ!」
「そうだろうか。そもそも友人と呼べるのも、ふゆこだけだからな」
その言葉に自虐の響きはない。
白人の血を引く彼女は、その整った容姿もあって人目を引く。進級したばかりの頃は、毎年のように彼女の周りへ人が集まる。
だが、それも長くは続かない。
他人の興味や関心に合わせたり、愛想よく振る舞ったりすることを彼女はしない。数人で交わされる他愛ない会話に加わり、それを楽しむことも苦手なのだ。
「ユウリと一対一で付き合えば、誰だって面白い子だってわかるのにね」
「面白い?
そんな面白い話題を提供したことがあったか?」
その言葉に返事をしようとしたところで、順番が回ってきた。
ユウリは黒糖ミルクティーにパール三倍を注文し、受け取ったカップを満足そうに掲げた。
友人関係にはコミュニケーションが欠かせない。
誰かの話を聞き、ときには自分のことも話す。
私はユウリの親友だけれど、お互い自分のことを多く語る関係ではない。
彼女は、私が自分のことを話さなくても気にしない。
そして私は、そんなユウリを観察するのが楽しい。
そういう関係で満足しているからこそ、私たちの間には友情が成り立っているのかもしれない。




