11話
ユウリなりにフォローしてくれたのだろう。
ありがたい……とは思う。けれど、正直なところ袴田くんを助ける気などなかった。
彼女がいる以上、ユウリの彼氏になることはないし、話を聞く限り、この彼女は面倒な人だろう。関わらない方が無難だ。
きっと袴田くんも断るだろうと思って声をかけたのに、ユウリの妙な押しに怯んでいる。
(もう、普通に断っていいから~!)
顔では笑顔を作っていても、心の中はそんなものだ。
だけど、この気持ちはユウリには伝わらないのだろう。私が口にした言葉だけを、そのまま受け取っている。
「そこまで言うなら……話だけ聞いてもらっていいかな……。実は誰にも相談できなくて」
(おお……押しに負けたな)
「もちろんだよー。意外と関係ない人の方が話しやすいってあるしね」
ちらりとユウリを見ると、満足そうに口角を上げていた。
(完全に本来の目的を見失ってる)
「彼女は同じ塾の子なんだけど……正直なところ、なんで付き合ってるのか自分でもわからないんだ」
「ん? どういうこと?」
「一か月前に突然告白されて……正直……めっちゃ可愛くて……あんまりよく知らないままオッケーしちゃって」
「付き合ってみたら毎日連絡はすごいし、塾で他の子と話すのも禁止されて……正直しんどいっつーか」
(……だろうな)
「別れればいいんじゃないか?」
(ユウリ……我慢できずに言っちゃった)
「袴田くんは別れたいの?」
「いや、しんどいけど、別れたいとまでは」
「ねえ! どんな子なの? 写真見せてよ」
袴田くんは少し躊躇ったあと、スマートフォンを操作し、彼女だけが写った写真を見せてくれた。
薄茶色のカラコンを入れた大きな目。ゆるくウェーブのかかった茶色い髪。白い肌に、制服は私立高校のものだった。
「立伸社の制服だね」
「そう、そこの二年」
「同じ塾で同じクラス?」
「いや、クラスは違うよ。彼女、文系だし」
「……たしかに彼女、めちゃくちゃ可愛いから、付き合っていきたいなら袴田くんが合わせないと、他の子に取られちゃうかもしれないね」
「え……」
「でもさ、向こうが先に好きになって告白してきてるんだから、袴田くんが無理してまで付き合う必要はないと思う」
「できることとできないことは、きちんと伝えていかないと長くは続かないと思うよ」
当たり前のことを言っただけなのに、袴田くんは何度も大きく頷いた。
とにかく少しでも前向きになれるよう励まし、見送る。
その姿が見えなくなると、ユウリがボソリと呟いた。
「あいつ、ちゃんとスマホ触らないようになるかな」
「いや、そこはどうでもいいから。
ユウリはなんで袴田くんのこと観察してたか覚えてる?」
「……袴田と付き合えるかな?」
「いや無理でしょ。彼女いるし。
てか好きになる要素あった?」
「……すまん。理解できなくて途中から聞いてなかった」
ユウリは反省した犬のように頭を下げた




