10話
スマートフォンの画面には、『SNSの新着メッセージがあります』という通知がいくつも並んでいた。
「これって……彼女さん?」
「ああ……」
「全部……だよね」
袴田くんの睨むような目つきが、それが肯定だと物語っていた。
「え? 付き合ってどれくらいなの?」
「まだ一か月くらいかな。ちょうど期末テストの二週間前くらいからで……テスト前もこんな調子だった」
「けっこう心配性な感じ?
さすがにこのペースで来るのはしんどくない?
もちろん、袴田くんがそれでいいなら私が口を出すことじゃないけど」
「学校にいる間は返事できないって言っても、テスト期間中は無理かもって伝えても、『返事はいらないから』って言われてこの調子なんだ。
でも、一時間放置しただけで『一時間も返事がないのはおかしい』って言われたりして……。
これって、やっぱ普通じゃないのかな?」
袴田くんがちらりとこちらを見る。
「え、うーん……どうだろ。
私はここまで送ったりはしないかな」
「すまない」
完全に話へ入っていなかったユウリが、おもむろに手を挙げた。
「この通知はすべて同じ人物……つまり、袴田くんの彼女からということで合っているか」
「そうだって言ってるじゃん」
「だとしたら、彼女は何か危険な状況なんじゃないのか?
こんなに連続で送ってくるなんて……」
(……必要最低限しかメッセージを送らないユウリには、この状況が信じられないんだな)
「いや、そんなんじゃないよ。
たぶんさっき、『学校の用事があるから後で連絡する』って送ったから、『何の用事?』とか、そういうメッセージを送ってきてるだけ」
「な、何のために?」
「だから、そういう子なんだよ。
彼氏が何をしているのか、逐一気になっちゃうタイプ」
「…………なんの」
「ちょっと一回黙って話聞こうか」
ユウリの言葉を遮り、私は袴田くんへ向き直った。
「袴田くんは、何に困ってる?
乗りかかった船だし、私たちでよければ相談に乗るよ」
「……いや、これは僕の問題なので」
「本当に?
彼女のことを大切に思ってるから何も言えないのかもしれないけど、このまま学業に影響が出たら困るのは自分だよ」
「いや、そうだけど……瀬田さんにも五十嵐さんにも関係ないことだから。
それに、余計ややこしくなると思う」
「どういう意味だ?
言っておくが、ふゆこはお前より数倍頭が良いぞ」
袴田くんの冷たい返事に、ユウリが苛立ったように口を挟んだ。
「え? いやいや、袴田くんの方が賢いから」
「学力の話ではない。地頭が良いのはふゆこだ」
「私では君の役には立たないかもしれないが、ふゆこなら良い方法を思いつくはずだ」
ユウリは真面目な表情でそう言い、袴田くんの目をまっすぐ見つめた。




