最恐の女王
呼び出しだ。
フォス様の執務室にお呼ばれした。ハンゾーに助けを求めたが、無視された。
怖いが、行かなくてはならんだろうな。
フォス様が、ジョーカーでないことは、ほぼほぼ確定だが100%ではない。
ここで不確定要素をつぶすためにも、あの人と会話する必要がある。
「コーメイ、お召しにより参上しました。」
「お入りください」
執務室には、フォス様とお付きのメイドが立っていた。
「この者は気にしないで、信用できますので」
メイドに案内され、応接テーブルに座る。
「コーメイ様はお忙しいでしょうから、単刀直入に聞きますわ。
王都襲撃事件の犯人はどなたでしょうか?」
フォスの瞳がひどく剣呑な色に染まる。
「私の勢力を削ぐくらいであれば、まだ生かしておいてもよかったのですが、
あの襲撃は、エイテも殺す気だったでしょう。であれば、生かしてはおけないですわ」
ごくりと息をのむ。
「犯人がフォス様でないことは、証明できますか?」
「ふふふ、どうしてそんなにも魅力があって蠱惑的な発言ができるんです?
私を誘惑しているんですか?」
ぐ、本気で言っているのかどうか分からんが…
「あの襲撃事件は内部犯もっといえば、王位継承候補のどなたかが犯人です」
「私が犯人だったら、あなた死んでますわよ」
「9割9分は犯人でないと思っていますので」
「あら、まあ。うふふ」
「犯人ここでは、ジョーカーと呼ばせていただきます。
あの日、私が介入せねば死んでいたエイテ様は、ジョーカー候補から除外します。
フォス様の可能性もあり得ましたが、初動でエイテ様の傘下に入る旨を公表したことから、
候補から除外してもよいかと考えております」
「あら、私が妹を殺してまで女王になりたいと思っていたと?」
「可能性はそうですね。まあ、あなた方姉妹が、
女王に固執する理由もいまいち分かっていないため、不確定要素ではあるんですが……」
「続けて」
「兵の再編のため、フォス様の私兵について確認させていただきました。そこで、ほぼほぼ確信できました。
あの襲撃がなければ、あなたは、第二王女か第三王女を排除していたんでしょう?
見返りはおそらく第一王女との盟約、もっと言えば第一王女があなたの後援につくとでも約定がありましたか?」
フォスは頬を上気させ、目を潤ませている。
マジで興奮してるなこの人……ゲームの設定で彼女は極度のサピオロマンティック、言ってしまえば頭いい奴に興奮する癖の持ち主だ。
おそらく妹のエイテに対しても、彼女が優秀であるが故の愛を注いでいるのだろう。
「第一王女についても調べさせていただきました。彼女はおそらく王位に興味はない。
しかし政治の第一人者では居たいと思う性格のように思えました。
彼女の王位継承戦における方針としては、おそらく第二、第三王女が女王にならなければ、
自分を含め誰が王位についてもいいと思っているはずだ。」
「ええ、その推理間違いございません。第一王女ファスティナ様はこの国を良くしよう、
そのためには自分が政治を握らねばと思っている傲慢なそれでいて傑出した英雄ですわ」
「第二、第三王女が王位に就いた場合、政治の場からの影響力を奪われることを危惧して、
手っ取り早くあなたを利用して、排除を企図したってわけですね」
「ええ、でも計画が漏れたのかどうなのか、機先を制されました。
主力はほとんどあの襲撃で失われ、ファスティナ様との同盟も白紙に戻りましたわ。
なんなら口封じの為に殺される可能性もありますわ」
なんちゅう爆弾をしれっと……
「それで残る犯人候補は第二第三が有力、第五第六第七は犯人であってもサクッと潰せば良いかなと」
「やはり私の目に狂いはなかったわ。コーメイ様結婚してくださいまし。そしてこの狂った世界を平らげてしまいましょう!」
「えーと、お話大変魅力的なんですが、敢えて煉獄の炎に身を投じる趣味はないというか、自ら鮫の口に入る鰯はいないというか…」
「まあ、今はそれでもいいですわ。それよりもエイテにはこの話は黙っていてね。
あの子には、自分で気づかせたいの。
何でも教えてもらっているようでは、あの子が成長しないもの」
「え、ですが……」
「あの子の成長が止まるようであれば、私があの子を愛せれるか自信がありませんの」
王たり得ない場合、肉親さえも殺すか、さすがゲーム最恐の女。
今回、危ない橋を渡ったが、フォス様が敵でないことの確信が持てた。
これは、どんなことよりも勝利に近づく成果だったといえよう。
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この時、俺は分かっていなかったんだ、
俺がこの世界に転生しているということの意味、
マホロバのシナリオは、狂い続けているってことを。




