燃ゆるダンジョン
コーメイから、前人未踏ダンジョンの攻略マラソンという前代未聞の命令を受けたレイアは、
半信半疑のまま、新たな部下を迎えに訓練場へ向かっていた。
そもそもダンジョンなんてものは、簡単には見つからないものなのだ。
仮に見つかったとてその攻略には何年もかかるのが常識だ。
それを簡単に行けだのアイテム持って帰れだのなんだの。
思い出したら腹が立ってきた。何であいつばっかり姫様と仲良くしてるんだ。
「もしかして、体のいい厄介払いか……?」
いったん奴を斬って、姫様には謝ることにしよう。
などと物騒な思考になりつつあったタイミングで訓練場に到着した。
「レイア様、お待ちしておりました。軍師殿よりこちらをお預かりしております」
「なんだこれは……“ダンジョン攻略ワザップ”??」
タイトルはよく分からんが、どうやら今後の方針指示書のようなものらしい。
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『まずは、訓練所でパーティを編成しよう!』
ダンジョン攻略は少数で実施される。詳しい理由は学者がごちゃごちゃ言っていたが、
要するにダンジョンの中では5人まで一緒に行動できるが、6人以上だとばらばらの場所に転移させられるという話だ。
なんでも昔の神様が嫉妬深いとか何とかかんとかでとのことだ。
コーメイからの指示で、指定されたメンバーと合流する。
模擬戦を見て、悪くはないが、そこまで光るものがあるとは思えんのだが……
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『つぎは、装備を整えよう!』
だんだん胡散臭くなってきたな。
そもそも全員官製の装備は持っているのに、整えるって何を…
ページをめくって絶句した、したが、コーメイの実績と姫様からのお願いだ。
今回だけ、信じてみよう。ダメだったらすぐ帰ってきて、奴の首と胴をお別れさせればいいだけだ。
装備を色々といじって指示通りの編成になった。
装備剥いだやつとか、妙に露出の多い女とかいるけど大丈夫かな?
私のダンジョン攻略パーティーが完成した。
頭が痛くなってきたが、一旦、状況を確認しよう。
◆前衛
剣士:私、火のスキルを使う剣士メインアタッカー
戦士:アーノルド、両手にタワーシールドを持った巨漢の男。サブリーダー。
◆中衛
僧侶:バート、神聖魔法を使う男、素手
呪い師:クロード、呪詛魔法を使う男、素手
◆後衛
踊り子:ディアナ、元酒場の店員、訓練所に飲料を納入しているところをスカウトしたらしい
両手盾?魔法職は素手?そして最後一般人じゃないのか?
両手盾はどうやって攻撃するんだ、大体重くてまともに動けないだろ?
魔法職は杖を持って魔法の威力上げなくてもいいのか?
踊り子って戦いに役立つのか??
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『ダンジョンへ行こう!』
まあ、ここまでは百歩譲って良いとしよう。
この後はダンジョン攻略だ。そもそも未発見のダンジョンなんてあるのだろうか…
「最初は初心者向けのダンジョンでパーティーの戦い方を勉強しよう!」
どこまでも胡散臭い。
このワザップによると最初のダンジョンは、ん??この王都の下水道の中だと!?
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指示通りに、下水に降りる私たちパーティー。王都襲撃の際も下水に降りたが最近こんなのばっかりだ。
ダンジョンは下水の奥、衛生用に飼われている巨大スライムのさらに奥か。
スライム殺すと方々から怒られるから、餌で釣ってどかすようだ。
どこからここまでの情報を手に入れることができるのだろうか。
実際に巨大スライムに丸々としたチキンを投げたらそっちへ寄って行った。
そしてその巨体の後ろには…
「どうやらここまでは、軍師様のいう通りのようだ。気持ち悪いほどにな…」
ダンジョンへの、入り口がぽっかり口を開けているのであった。
この巨体がいたおかげで未発見のままだったのだろう。
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そろそろレイアは下水道に向かっているころだろうか。
執務室で俺はダンジョンチームについて考えていた。
即席で編成したにしては高火力高安定性のチームができたと思う。
まずは両手タワーシールドについて、これにはある程度体格ができている奴がいないと無理だったから、アーノルドがいて助かった。
それに何よりすごく常識人だった。サブリーダーとは書いたがレイアよりもリーダー向きだろう……
スキルも欲しかったシールドバッシュを覚えているようだから十分だ。
訓練所で試してみたが、この世界のスキルもほとんどゲームと同じ仕様で動くようで安心した。
このゲーム、マホロバのシールドスキルの使用は盾の防御力を攻撃力に見立ててアタックする。
つまり盾が2枚なら攻撃力は倍だ。理由とかは知らん、開発に聞いてくれ。
そこに、店売りの最強レベルの炎鉄の盾を両手に装備することで、瞬間火力は一級品になる。
ついでに(?)、防御力も高くて一石二鳥だぜ。
ただし、素早さが尋常じゃなく遅くなるが、その辺は抜かりなしだ。
バートとクロードの魔法職は、主に呪文を使った支援要員だ。
普通のビルドでは魔法の威力を上げるために杖などを装備するが、今回は素手だ。
素手魔法使いは回避率が上がる一方魔法の効果が低くなりがちだが、今回の二人の得意魔法は固定値魔法だった。
やはり固定値は正義。固定値は神。このまま固定値教に入信しても……
閑話休題。
固定値が素敵すぎて危うくトリップするところだった。
まあ要するに魔力上げようと上げまいと効果は同じだから生存性が高い方を選びましょうってことだ。
特にクロードの呪いに、対象と自分の素早さを同値にする魔法がある。
敵に使うには射程が短く、使いづらい呪いだ。
そのままではゴミ寄りのゴミだが、今回は前衛に最強鈍足要塞アーノルドさんがいる。
ここに同速の呪いを掛ければ、半裸の兄ちゃんと同じ速度つっこむ要塞が出来上がるってわけさ。
バートも地味にマイナー神の鍛冶神を信仰してくれてるおかげで、盾と炎にシナジーがあるのもグッドだ。
最後のディアナは、まあ趣味だ。と、言いたいところなんだが、こいつが一番ガチキャラといってもいい。
マホロバにはいくつか隠しジョブがある。
忍者、剣聖、メイド……そして踊り子。
酒場の看板娘をスカウトしてジョブチェンジするしか仲間にする方法はない。
だがその性能は一級品で、踊りによる全体バフとデバフ、特にバフが素早さを上げることができるため、
アーノルドとレイアの戦術にとても相性がいい。
最後にほぼほぼネタ技ではあるがしばらくは敵モンスターを打倒することができるコンビネーションもある。
中後衛のバフで前衛二人を強化して、レイアの最大火力技を、、、、
「やっぱりコーメイはいつ見てもニヤニヤ変な笑いをしておるの」
「その通りですねレイア様、執務室付きのメイドも怖がっておるとか」
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ダンジョンの攻略は、心配していたのは何だったのかと思うほどに順調だった。
アーノルドにバフを集めて突進する巨大な盾は、敵に同情したくなるほどだ。
撃ち漏らした敵も素手での格闘がそれなりの練度のバートとクロードに止められている。
それに露出女かと馬鹿にしていたが、ディアナの踊りはすごい。
何がすごいのか分からんが、もう凄く元気になる。これだったらその辺の魔物には負ける気がしない。
道中で連携を確認しながら、最奥を目指す。
「皆さん、装備の調子は大丈夫ですか?」
アーノルドが皆の様子を確認する。パーティーの大黒柱だ。
「ああ、問題ないぜ、素手になって杖もってた時よりも調子がいいぜ、どこまでも行けそうだ」
バートが軽口をたたく。
「確かに素手のほうが調子はいいですが、あまり調子に乗らないでくださいよ」
クロードがしっかり場を抑える。
「まあまあ、私たち最強チームの気がしました!ですからばーんといっちゃいましょう!」
ディアナがムードメイカーとなってチームを鼓舞する。
本当に良いチームだと思う。奴にはここまで読めていたのだろうか。
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しばらく探索を続けた後、重厚な扉が現れた。
どうやらここが最奥のようだ。
この先にボスがいるようだ。
だがここにもワザップの記述があった。
『ボスを焼き払おう!』
扉を開けた。腐った狼の群れと、ひときわデカいボス狼が見える。
「皆、行くぞ」
ワザップに書かれていた連携技だ。
バート、クロードがバフをアーノルドに集中する。
ディアナが炎の神への奉納の舞を踊る。
アーノルドが仁王立ちして両手のタワーシールドを構えた。
そして最後は私の最大の炎の剣で、思いっきりアーノルドの盾をぶったたく!!!
光、そして轟音、ダンジョンの最奥の部屋は一瞬のうちに煉獄の炎に包みこまれた。
そこには敵の姿はもう見えず、ただの焦げた炭のようなものだけが残るのだった。
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そろそろ5人連携技がさく裂したころかなあと、ひどく挙動不審のメイドが淹れてくれたお茶を飲みながら、俺は考えていた。
炎鉄の盾は、炎反射率があるから盾2枚をいい感じの角度にして、レイアの全力ぶっぱを反射させる作戦。
まあソーラーシステムとでも名付けようか。男の子みんなガ〇ダムオタクだから大丈夫だ(?)
冗談はさておき、計算上王都近辺のダンジョンであればワンパンできるはずなので、
このままアーティファクトを順調に集めてきてもらいたいもんだ。
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その日のうちにレイアの部隊は帰還してきた。
その手にはダンジョン攻略の証としてアーティファクトを持って。
「エイテ様、レイア隊帰還しました。アーティファクトはここに」
「レイア、そしてパーティーの皆よ、よくやってくれた大儀である。
そして、コーメイよどうやらまた、その神算鬼謀が発揮されたようじゃな。」
「いえ、レイアとその部隊の皆の手柄でしょう」
「コーメイ殿、申し訳ない」
「どうしました?」
「私は、あなたの進言を疑っておりました。ですが今回の攻略方法は素晴らしいの一言では言い表せない。
責任から逃れたいだけの卑怯者のカス童貞だと思っており、申し訳ない!!」
「お、おう、まあ分かればいいんですよ。それはそうと次のダンジョンもありますからね。ちゃきちゃき攻略してください」
「はっはっは!さすが我が軍師様じゃ!難題はいくらでもあるからの、次もよろしく頼むぞ」
(全然楽にならねえーー)




