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短編置き場  作者: 渋音符


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19/19

面影


 先月骨組みになった軒下

 横断歩道の向こう側

 高い自販機の左肩

 君が待っている気がした


 早足で信号を渡ったら

 右折中の車とお見合いした

 点滅してない青

 頭を下げて通った


 今朝の雨の名残が錆びた鉄を伝い

 眼鏡のつるに弾けた

 骨組みの中

 曇り空

 重く殴りつけるような痛み


 帰り道

 街路樹

 あの桜の樹の下に

 君が埋まっている気がした


 花びらの道を踏みつけ

 根本までやってきて

 その肌に触れる

 がさついて刺々した木の端

 屑が指を切った


 今朝の雨の名残が乾いた枝を伝い

 つむじの上に弾けた

 木漏れ日の中

 湿った空気

 深く押し込むような痛み


 視界の向こう

 飛蚊症

 眼鏡にとりついた汚れや虫

 それらと一緒になって

 君が待っている気がした


 不格好なダンス

 転けて跳ねる泥

 鼻につく花びら

 声

 顔

 まだ忘れられない

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