Act.13 裸の貴族様
この試験最後の晩餐まだ陽が落ちていない夕方にとっている、木の実・雑草・スクワッシュが見つけた蜂の巣から取り出したまだ蠢いている蜂の子・そして蜂蜜だった・・。
明日、明日の夜はきっと温かいスープが飲めるはずだ。煙で発見されることを避けた結果の食事だが、俺は、もういやだ。
「蜂の子うめぇ~~!!」
「この木の実ぃ~、甘すっぱいですぅ~。」
スクワッシュは、蠢く蜂の子を手ですくって、口いっぱい頬張っている。獣人は、食文化が微妙に違うとは聞いていたが、昆虫を常食にしているのではない?と思うぐらい普通に食べているし、アサギはあんなのでも女であるのか、木の実等を好むようだ。でも俺は、普通のパンとスープが食べたい・・・。
「なんだ?アッシュ。疲れてるのか?しょーがねぇーなー。ほらこれやるよ。」
スクワッシュが、指で摘んでいるのは、でかい蜂の子だ。他の蜂の子比べて1.5倍はあるだろうか。それが、摘まれ、ビタビタと全身をよじっている。それを名残惜しそうにみているスクワッシュがいる。
「・・・。いや、いくら魔法で治したとは、お前への怪我は重かったんだし、お前が食え。おれは平気だ。」
というか気持ち悪くて食べられん・・・。
「そ、そうか?アッシュがいうなら仕方がなしに食べるぞ?アッシュがいうから食べるのであって、俺は、アッシュに食べてもらいたんだからな?」
「なんでもいいから食え・・・。」
上を向き口を大きく開くとスクワッシュは、摘んでいたでかい蜂の子を口の中に落とし、うれしそうに口を動かしている。
「でぇ~、明日はぁ~どうするのぉ?」
「まぁ、慎重にゴールの砂浜に向かうかな。ここから南に約10キロだから、明け方前から動いて・・。」
「そうですね。死なないで、この島を抜けてくれて、後は我等が領土まで来てくれればいいのですよ。」
「「「!?」」」
アサギの質問に答えていると突然背後からの意味がわからない答えが返ってきた。俺は六角棍を握り、振り返るが、誰もいない。
「スクワッシュ!?」
「いや、においは増えてない。音もなかったはずだ・・・。」
爪をセットし、身構えたスクワッシュは、聞くまでも無く答えてくれた。
「ふふふ・・・。音は無いでしょうね。匂いはあるでしょうけど、きっとあなた方にはわからないですよ。」
次は、頭上から同じ声が聞こえる。移動した音も無い、こちらの会話も聞かれている。考えられるのは、魔術系か、隠密系スキル。異能かだろう。
魔術ならば、遠方と会話する魔術があったはずだ。それならば、危険がすぐに及ぶことが無い。
隠密スキル系で、スクワッシュの耳ならまだしも匂いは、無理だろう・・・。
異能ならば・・。
「2人共散れ!!固まっていれば一網打尽にされるかもしれないぞ!!お互いサポートできる距離を保って散れ!!」
俺とスクワッシュが、一気にアサギから離れる。そうアサギが離れるのを待つよりアサギから離れたほうが早いのは、実践授業で経験済みだ。アサギに至っては、
「えぇ~、アッシュ君と離れるのぉ~。」
など言っていい、マジックポーチから魔法書を取り出している。
「悪く無い判断ですが、私には無駄な事です。とりあえずそこの獣人は、邪魔ですね。」
頭上から声が聞こえるとスクワッシュの足元の地面から茶色い鞭のようにしなりながら何かが何本もスクワッシュに伸びていく。
「なんだこりゃ!?」
驚きながら、そこはスクワッシュだ。見事なまでに避わしていく。
「さすが獣人ですね。ただの木の根ですよ。だから、もっと出せますよ。」
頭上の声と同時に数本だったものが、数十本になり、スクワッシュに向かっていき、1本避けそこなうと別の1本が絡みつき、最後には、身動き1つ出来ないぐらいに根が絡みついた。
「スクワッシュ!!」
「大丈夫ですよ。とりあえず殺す気はありませんので、すこしお話の邪魔をされたくないだけです。」
「うぐぅ!!うごぉ!!」
スクワッシュが、何かを言おうとしても根が猿ぐつわになり上手く発音になっていないようだ。牙で噛みちぎろうとしているが、それも無駄のようだ。
「そちらのお嬢さんは、その魔法書を捨てていただけませんか?女性に手を上げる気にならないのですよ。」
最低でも木を使う異能か。周りが森なだけ、やっかいだな。性格は、自信過剰な上、ナルシストってところかな。
アサギは、困った顔で俺をみているので、無言で頷くと魔法書を地面に置いた。
「はい、ありがとうございます。さてとでは、顔も見せないのは、失礼だと思いますので、そちらに行きますね。」
言い始めると声が徐々に降りてきている。だが、見つけることが出来ない。
メリメリ。
「!?」
木が裂けるような音が響き、アサギと俺の間ぐらいにあった木から枝のように腕が出てきた。そしてそれは、徐々に胴体や足、顔といったようになり、最終的に人の形に成ったのである。
「はじめまして、シャトザーク・レギアス・アカギと申します。」
木から出てきたそれは、ダンスを申す込むような優雅に頭を下げた。
が、これで、礼服を着ていればまだ、様になるのだろうが・・・。
「きゃぁ~。」
アサギは、顔を手で覆うが、指の隙間から見ているだろ。それ。しかも視線は股間じゃないのか?
そう木から出てきたのは、裸だ。端整な顔立ちで、りりしい男だと見て取れることから股間=男のあれがあるだろう。見たくも無いが、本能的に見てみるが、不幸中の幸いか、股間にはあれが無かった。
とりあえず、股間への急所攻撃は無効であるっと。確認したことにする。
「・・・。あなた方。かなり失礼な方々のようですね。」
腰まである長い黒髪をオールバックにし、黒い瞳で白い目で俺を見ている。
「とりあえず、ご親戚さんだよな・・。」
「そういうことになりますね。ネタを先に明かしますが、私の体はこの体ではありません。今朝方会ったと思いますが、私の同父弟達の異能で作り出した体で話をさせていただいております。」
あの罠にはめた2人か、意趣返しか?弟がやられて兄が仕返し?子供か、こいつら・・・。
「で?やり返しにきたのか?」
「ははは、まさか。愚同父弟達が、使えないのはわかっておりましたから。」
男は、両手を広げ肩の高さまで持ってくると首をかしげるとい大きなジェスチャーをした。
異能の能力は知らないが、あれだけの体術使いと馬のような犬を2匹使う奴が使えないという評価なのかよ・・。
「まぁ、愚同父弟達と同じようにあなたを拉致して、お父様の前にひざまつかせるのは、趣味ではないといったところでしょうかね。」
奴らのお兄様は、鼻で笑っている。このチームの最大火力にして、最速のスクワッシュをあの状態にしてしまったという事は、実力も余裕もあるのだろう。
「で、あなた様はどうしたいのですか?そして、わたくしごときに、レギアス皇国北方領主殿が何か御用でしょうか?」
「ほぉ~。レギアス・アカギの家系が現北方領主だということをご存知だったのですね。そうですね。2つ目の質問には、答えられません。」
平民が貴族に取る態度で皮肉めいて頭を下げたのだが、日ごろからかしずくかれ慣れて、当たり前の態度だと思ったのかもしない。精一杯の皮肉はあっさりと流された。
「1つ目の質問は、難しいですね。そうですね・・・。」
シャトザークは、右手で顎を左手で右腕のひじを持ち考えいる。
「とりあえず、殺すなどという野蛮な行為は、あまりしたくありません。ただ、貴方に我が領土に来ていただくためには・・・。そうですね。妙案が浮かびました。きっと貴方も喜んでくれると思いますよ。」
シャトザークは、右手の人差し指で、空を指すと、腕のほうから皮膚の下で何かが、指の先端へと向かっていく。そしてその何かは、指の先端まで来ると皮膚を突き破って、姿を現した。それは小さいが、呪力の込められた魔道具のようだった。




