Act.12 異母兄と同母兄
「あぁ、1週間は鼻が利かなくなるしそれ匂うのはごめんだな・・・。」
スクワッシュは、思い出して眉間にしわを寄せながら両足に怪我を負わせた男の首筋に手刀を打ち込み気絶させる。
これでしばらくは、五月蝿く無いと思うが、もしかすると奴の異能が、本人とは関係なく自動的に働くものならば、近寄ることも危険かもしれないな。俺は、六角棍を拾い上げ、もがいている巨大な犬2匹ともう1人の少年に注意を払うが、こちらもしばらくは、問題無さそうだと判断する。
「スクワッシュ君、腕ぇ~、貫通ぅ~?痛いぃ~?」
「いってぇ!!叩くな!!」
アサギは、スクワッシュの腕の怪我に気がつき、近寄ると怪我の具合を確かめにか、怪我している腕をペっシリ。と叩き怪我の具合を確かめているようだ。確かめなくてもあの出血量なら魔法での治療が必要だと
判断できるだろうし、スクワッシュも日頃の喧嘩なら簡単に避けそうなものなのになぜか、アサギが叩くのだけは、避けれないみたいだ。もしかして、アサギのあの叩き方には、何か秘密が・・・。
「アッシュ。ぼぉーっと考え事するなよ。」
どうやら、考えているうちに魔法による治療は終わったようだ。そう今は、考えるより試験合格を考えないとな。
「あぁ、すまん。とりあえずここから離れるぞ。」
「えぇ~、この人たちからメダル取らないのぉ~?」
アサギの言うことももっともだが、自分で言うのもなんだが、得体の知れない異能者からは、早く離れるのが一番だと思う。犬たちもこの試験期間中は、鼻が利かないだろうというのは、スクワッシュで実験済みだしな。
「あぁ、離れる。行くぞ。」
いつものスクワッシュなら殴り足りないとか言い出しそうだが、何も言わず深刻な顔で頷くと先頭をきって、歩き出した。そして、俺もアサギもスクワッシュについていき、その場を離れたのだった。
追跡を警戒しつつ、南西方向の目的地の浜辺ではなく、念のため西に向かいすでに陽は天高く上っていた。
「早いけど、今日はここら辺で、最終夜を越そうか。俺は、リングマジックと異能で、魔力をだいぶ使ってしまったし、スクワッシュも怪我は直せても失った血までは、回復して無いしな。」
2人から反論も無く、スクワッシュは、野営場所を探しに、アサギは、食料になりそうなものを探している。何も言わずに役割分担をこなしていけてることを考えれば、訓練所であぶれもん3人が、いつも組まされていたことに感謝したくなる。だが、明日試験に合格となれば、冒険者ギルドに正式加入ということになり、スクワッシュは、親父さんの傭兵隊へ。アサギは、冒険者ギルドが管理している図書館への配属を希望している、俺は、いまだに自分の行く末を定めていない情け無い状態だが、それぞれの希望の場所に散っていくのだ。
「さてと・・・。とりあえずは、試験合格だよな」
俺は、マジック・ポーチからアサギに借りているこの島の簡易的な地図を取り出し、現在地とゴール地点の確認に専念していく。
バランスが悪そうで、バランスが成り立ってる危ういチームだが、このチームならきっと合格できるだろう・・・・。
変な香辛料を嗅いでからどれだけたったんだろう。少しは痛みに慣れてきたけど、シロもクロもまだまだつらそうだ・・・。
異能で作り出しモノと5感を共有してしまうが為の痛みだ。シロもクロも昔飼ってた犬を模して作り出した。犬らしく嗅覚が鋭くて、サバイバルでは便利だったんだけど、しばらくは休んでもらわないとね。シロとクロがかわいそうだ。
「っっ・・・。は、鼻が・・・。まだ変だ・・・。シロ・クロとりあえず、戻って。」
僕が命じ、指を鳴らすとシロとクロの体が、どんどん小さくなり、最後にはこの島に連れてきたときの手のひらにのる雑な木彫り人形へと変わる。同時に鼻の痛みも無視できる程度にまでなってよかったよ。これが、僕の異能。やさしい仲間を増やせる異能だ。
少し離れたところで倒れてる異母兄は、どうやら気絶してるようだし、食べ損ねた3人は、見当たらない。
「困ったね。同母兄さんに叱られちゃうよ・・・。とりあえず・・。」
僕は、懐から小さな小石を取り出した。兄から預かった小石には、不思議な文字が、青く光っている。それを軽く掘った地面に埋め、しばらく待つと小さな双葉がでた。それは一気に成長し、小さなつぼみが出来る。そして、そのつぼみは、すぐに開いたのだった。
開いた蕾の中は、美しい花なのではない。そこには、僕そっくりの顔。そう同母兄の顔だ。目がゆっくりと開き、僕を見る。何度かみてる異能だけど、あまり気持ちいいもんじゃないよ・・。
「シャトナーク・・・。石を使って、私を呼び出したという事は、シャトルーズは、失敗したって事でしょうか?」
「うん・・・。」
僕は、倒れてるシャトルーズを指差し、自分の犬達も酷い目にあわされた事を伝えると、同母兄の顔をした花は、フッー。と1つため息をついた。
「短絡的馬鹿だと思っていましたが、血縁をご招待すらできないとは、大馬鹿ですね。あなたに石を渡しておいて正解でしたね。ただ、あなたが一緒にて失態を犯すとは何事ですか。」
僕は、頷き、「ごめんなさい。」の一言だけ返した。同母兄にお父様の命令を無視して、異能者を食べようとしたことがばれたら、僕も酷い目に会うに決まってる。無駄なことはしゃべらないほうがいいと思った。
「まぁ、今言っても仕方が無いことですね。せっかく見つけた自由の身の異能者なのですから是非ともお父様に会っていただかないと困りますね。シャトナーク。人型を出してください。その後はわかりますね?」
僕は、頷くとポケットからシロやクロとは違う人型の木彫りを取り出し、異能の力を吹き込んだ。
みるみる大きくなり、大人の身長たりで大きさが止まると異能生物は、目を開け、そこで呆然と立ち尽くしている。人型の思考能力は複雑すぎて、今の僕の異能じゃ、形は出来ても命令に従うことすら出来ないそんな生物になってしまう。。でもそんな人型異能生物にも使い道を同母兄は見つけた。
僕は、同母兄の顔が生えてる草を堀おこし根っこ事取り出すと、人型異能生物の首筋に置く。
「さてと・・。」
その作業まで終えると同母兄の草の根が、一気に伸び、人型異能生物の首に埋まっていく。呆然としていた顔は、感情も思考も無いはずなのに驚愕と苦痛の表情になるが、それも一瞬だった。先ほどまで、幼稚な技術で作り上げた木の顔が、同母兄に変わっている。
異能生物だったものは、両手を握り、開きを繰り返し感覚を確認すると全身を動かして全身の感覚を確認しているようだ。
「まぁ、いいでしょ。シャトナーク。今度からもう少し細身で作ってください。こんなごつごつしていたら不細工ではありませんか。」
「・・・はい。」
僕の木彫りの能力を高めろと言ってるんだろうけど、人は嫌いだから人型なんて作りたくないなんていうと叱られるだろうな。
「シャトルーズには、責任を取ってもらうためにもしばらく反省してもらいましょうか。」
同母兄は、パンッ!!と両手をあわせ音を立てると異母兄のすぐ横にあった木が、異母兄の体をゆっくりと飲み込んでいく。
「・・・。」
僕も一度、同母兄に逆らって、あの異能を受けたことがあるんだ。木の中に閉じ込められて、暗いし、身動きも出来ない。でもきつつきが木をつついたら痛いし、虫が這う感触もある。おなかはすかなかったけど、二度とごめんだとしか思わない。そんな異能だ。
「あなたの犬達《お友達》もしばらく使えないのですね?では、私でなんとかしますか。」
木が、異母兄を飲み込み終えると合わせていた手を離し、僕に確認すると今度は、近くの木に触れる。
「木々の根っこを踏んで歩いている以上、私からは逃げられませんよ・・・。西ですね。西に5キロ。といったところでしょうか。シャトナーク行きますよ。」
「はい、兄さん。」
先に歩いていく同母兄について行く。逆らって、あの木の独房はごめんだし、同母兄の権限は、現レギアス帝国皇帝の孫であり、皇位継承権第2位であるお父様の後継者であることから僕には、逆らえない。逆らう気すら起きない。




