6 侯爵閣下(二歳)との対面
こうしてマーガレットは、ようやくこの家の主人にお眼通り願うことができたのだ。
金髪碧眼の、無邪気で可愛い、二歳の侯爵閣下である。
閣下は何故か、侯爵家の子どもとは思えない簡素な服に身を包んでいたけれども、もちもちのお肌とふわふわの金髪が魅力的な、大変な美幼女であった。
「……こんにちは?」
侍女が見守る中、積み木のおもちゃで遊んでいる彼女に、マーガレットは恐る恐る、声をかける。
後ろ姿は、夢で見た四歳くらいの女の子より、ひとまわりもふたまわりも小さい。
彼女は、マーガレットの声を聞くと、ぱっと振り返った。
マーガレットの姿を認めると、溢れる笑顔を浮かべて、片手に積み木を持ったまま、てちてち歩いてくる二歳児の閣下。
彼女は、膝をついているマーガレットのところまでたどりつくと、マーガレットに嬉しそうに積み木を差し出した。
「マギ!」
目を丸くするマーガレットに、彼女は「まぎ! マギ!」と笑い声を挟みながら声をあげている。
扉近くで、家令達が侍女達に、「キャサリン様にマーガレット様のことを教えたのか?」「いえ、そんなまさか」と会話しているのが聞こえる。
マーガレットの名前を知っている様子の、閣下……。
「……あのとき、会ったのは、あなたなの?」
「ん!」
「……そう。……そっか……」
「えへへー」
素敵な笑顔の可愛い侯爵閣下は、それから小一時間、楽しそうにマーガレットにまとわりついてきた。
彼女の膝に勝手に座ってきたり、積み木による芸術作品の隣でジャンプし、作品が壊れて大泣きしたりと、色々な姿を見せてくれたのだ。
「キャシーちゃん」
「マギ。積み木……」
「また後で一緒に作ろうね」
「うん……」
「あのね。私でいいのかな?」
マーガレットがそう尋ねると、侯爵閣下は、くりくりの碧い瞳をパチクリと瞬いた。
そして、「マギ!」と、力強く頷いてくれたのである。




