表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千年妃(改訂版)  作者: nanoky


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/86

13 覚醒(2)

 「私の妻に手を出すなっ」と、怒鳴るや、高祖は右手を振り上げた。


 ダルディンは法力で撃つ気だと思い、止めようと動きかけたが、それより早くリーユエンが、デミトリーを突き飛ばし、高祖にしがみつき、

「やめて、この人を撃たないで、私が罰を受けるから、この人は許してっ」と、叫んだ。


 高祖は、振り上げた腕を途中で止めたまま、リーユエンを見下ろし、

「この凡人のことを覚えているのか」と、尋ねた。


 リーユエンは、高祖にしがみついたまま、頭を横に振った。

「いいえ、分からないわ。でも、この人は、私の大切な人・・・」と、ささやいた。


 高祖は、瞑目し、険しい表情のまま大きく嘆息した。


 リーユエンのそばへ戻ったデミトリーは、彼女を背中から抱きしめ、

「リーユエン、君は、私の大切な宝物だ」と、ささやき返した。


 ダルディンには、デミトリーの体から黄金のオーラが溢れ、それがリーユエンを包み込むのが見えた。同じ光景を目撃した高祖は、「陽気を受け取った相手か・・・厄介な奴が現れた」と、呟いた。

 

 デミトリーは、ようやく、周囲に注意を向け出した。

「あれ?乾陽大公もいる。ここはどこなんだ。それにリーユエン、君、随分可愛らしい格好しているじゃないか。」

 

 ダルディンは、デミトリーへ近寄りリーユエンから引き離し、立ち上がらせた。


「ここは、青大亀一族の国で、蜃市と言うのだ。王太子殿下は、一体どうやってここまできたのだ?」

 デミトリーの目線が一瞬遠くを彷徨った。


「長く、困難な旅だった。密林を越えた後、魔獣を撃退しながら、東嶺の山を越え、それから大圏谷、ここも魔獣や肉食性の蔓草に襲われ散々だっった。そして、また山を越えて、雪と氷しかない高原へでた。そうだ、そこで、ヨークの亡骸を見つけたんだ。あんな事になるって、一体何が合ったんだ?」

 

 ダルディンですらそれは悲惨すぎると感じ、その話題だけはずっと避けてきたのだ。ところが、デミトリーは、全く遠慮なく尋ねた。ヨークと聞いた瞬間、リーユエンの顔から一切の表情が消えた。


「ヨーク・・・そうだ、ヨークだ」

 リーユエンは低く呟いた。紫眸は冷たく不穏な光を帯び、眸の周りに血のように紅い輪郭が現れた。

 

 高祖の顔色が変わった。

「まずい、記憶が戻ってしまうぞ」と言いながら、高祖は、リーユエンへ手を伸ばした。けれど、その手の先が触れる前に、リーユエンの体から凄まじい怒気が吹き上がった。


「あいつは許せない、あいつだけは絶対に許さないっ」リーユエンは絶叫した。

 そのあと、突然顔を歪め、胸を掻きむしりながら、うずくまった。

「うっ・・・ウウウッ」


「いかん・・・」

高祖は、リーユエンを抱き抱え、「記憶が急激に戻ってきて、繭胎の中での苦痛も同時に思い出している。心の臓も守らねばならないから、今日はもう連れて帰る」と言うや、姿を消した。


 デミトリーは、突然消えた二人に驚いた。

「消えた、リーユエンは、どこへ行ったんんだ」


 ミレイナ王女は、デミトリーへ近寄り、下から顔を覗き込んだ。


「ねえ、ねえ、あなたは王子様だそうだけれど、リーユエンとはどういう関係なの?」


 見知らぬ少女から、いきなり話しかけられ、デミトリーはギョッとして体を仰け反らした。それでも、胸を張り、

「私は、リーユエンを愛している。私たちは、恋人同士だ」と、はっきり答えた。


 そう答えてから、ようやくダルディンへ、

「乾陽大公、一体あの場所で何があったんだ?それに、あなたやリーユエンは、どうして、こんな場所にいるのだ?」と尋ねた。

 

 ダルディンは、デミトリーを横目に見ながら、言った。

「そういう質問は、最初にして欲しかった。あなたが、いきなりリーユエンに抱きついたから、大事になるところだった。」


「へっ?そうなのか。何だかよく分からないが、それより、私に何か飲み物と食べものを出してくれ、飲まず食わずで十数日間砂漠を彷徨ったんだ」


 ミレイナが、召使へ合図した。彼らは、飲み物と食べ物の追加をテーブルに並べた。


 デミトリーは、王族の上品さより、獅子の本性丸出しで、ガツガツと食べ続けた。


「すごいわ、こんなにすごい勢いで、これだけの量を食べる人は初めて見たわ。チェンガム将軍より、たくさん食べているわ」

 ミレイナは、妙なところで感心した。


  ダルディンはデミトリーの天真爛漫な食べっぷりを見ながら、

(ウラナが、デミトリーは、リーユエンを本気で怒らせる名人だと言っていたが、本当だ。あれほど凄まじく怒るとは・・・あれで記憶が戻ってくれればいいのだが)と、思った。


  デミトリーの食べっぷりに呆れていたのは、ダルディンだけではなかった。

  生気をもらって落ちついたアスラも、頬杖をついて、デミトリーの食べっぷりを眺め、

「異界の魔物級の胃袋だな。よく、あんなに詰め込めるもんだ」と呟いた。


 ダルディンはアスラへ尋ねた。

「私たちが、ここへ飛ばされた後、お前とリーユエンに、何があったんだ」


「主は、あんた達を、こっちへ送り込んだ後、吐血して倒れたんだ。あの白装束の連中が、主を捕まえた。そして、首領が、主へ焼印を押し付けた。

 我は止めようとしたが、主は我に消えろと命じた。その後は、面覆の中へ戻って眠っていたから分からない」

 

 ダルディンは眉を顰め、アスラへ尋ねた。

「リーユエンはどうして、刻印を受け入れたんだ」


「我は、あの尸蟲と戦っていたから、よく聞こえなかったが、乾陽大公の追跡をやめるとか何とか言ってた気がする」

 

ダルディンは、やはりそうだったのかと思い、両手で顔を覆った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ