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新月-saku-  作者: エリゴリ
3/6

第3話


マオから人を消す手伝いをするための条件は、二つ。


一つ目

消滅させる人間の存在と記憶は、朔にだけ残すこと。


二つ目

朔の家に、自分を置くこと。


どちらの条件も飲んだ朔は、“条件二”を果たすため、マオを自分の家へ連れて帰った。


白く、綺麗な三階建てのアパート。

最近建ったばかりなのか、外壁の汚れもほとんどない。

オートロック式のエントランスを抜け、二人は階段を上った。


朔「ここだよ。」


三階の角部屋。

扉を開けると、綺麗に整頓されたワンルームが現れた。


マオ「ここが朔の家ですか。真っ白ですね。」


整頓する物もないほど、物のない部屋。

マオは物珍しそうに、きょろきょろと室内を見回す。


朔「あんまり面白いものはないよ。」


マオの様子を横目で伺いながら、朔は上着を脱ぎ、ハンガーにかけた。


マオ「これは黒いですね。」


マオが指差したのは、部屋の片隅に置かれた黒く光る置物だった。

白い布を敷いた棚の上に、丁寧に据えられている。

その周りには、水を張ったコップと、花瓶に挿された葉。


朔「…それは、黒くていいんだよ。」


マオ「朔とおんなじですね。」


朔「ハハッ。そうだね。おんなじだ。」


朔はそう言って笑い、キッチンでタバコに火をつけた。


マオ「ぼくも、それ欲しいです。」


朔「え。自分で持ってないの? 好きなんでしょ?」


マオ「はい。好きです。いつもは、ぼくが消す人間から取っていました。今日は朔が来たので、忘れていました。」


朔「ハハッ。そっか、僕のせいか。わかったよ。」


朔はタバコを一本取り出し、マオに差し出した。


マオ「ありがとうございます。」


慣れた手つきでタバコに火をつけるマオ。

その様子を、朔は観察するように見つめている。


マオは、自分が吐き出した煙を、追うように目でなぞった。


マオ「やっぱり、これは面白いです。」


朔「面白いから吸ってるの?」


マオ「はい。それもありますが、なんだか懐かしい気持ちになります。」


朔「へぇ……死神になる前の記憶とかかな。」


マオ「いえいえ。ぼくは死神ではありません。恐れ多いです。」


朔「…マオの世界では、死神は恐れ多い存在なんだね。」


マオ「はい。神様ですから。ぼくのようなゴミとは違います。」


朔「ふぅん……」


朔はタバコの火を消し、マオに視線を向けた。


朔「もう一回、マオのことを詳しく聞いてもいいかな。」


マオ「いいですよ。」


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