第3話
マオから人を消す手伝いをするための条件は、二つ。
一つ目
消滅させる人間の存在と記憶は、朔にだけ残すこと。
二つ目
朔の家に、自分を置くこと。
どちらの条件も飲んだ朔は、“条件二”を果たすため、マオを自分の家へ連れて帰った。
白く、綺麗な三階建てのアパート。
最近建ったばかりなのか、外壁の汚れもほとんどない。
オートロック式のエントランスを抜け、二人は階段を上った。
朔「ここだよ。」
三階の角部屋。
扉を開けると、綺麗に整頓されたワンルームが現れた。
マオ「ここが朔の家ですか。真っ白ですね。」
整頓する物もないほど、物のない部屋。
マオは物珍しそうに、きょろきょろと室内を見回す。
朔「あんまり面白いものはないよ。」
マオの様子を横目で伺いながら、朔は上着を脱ぎ、ハンガーにかけた。
マオ「これは黒いですね。」
マオが指差したのは、部屋の片隅に置かれた黒く光る置物だった。
白い布を敷いた棚の上に、丁寧に据えられている。
その周りには、水を張ったコップと、花瓶に挿された葉。
朔「…それは、黒くていいんだよ。」
マオ「朔とおんなじですね。」
朔「ハハッ。そうだね。おんなじだ。」
朔はそう言って笑い、キッチンでタバコに火をつけた。
マオ「ぼくも、それ欲しいです。」
朔「え。自分で持ってないの? 好きなんでしょ?」
マオ「はい。好きです。いつもは、ぼくが消す人間から取っていました。今日は朔が来たので、忘れていました。」
朔「ハハッ。そっか、僕のせいか。わかったよ。」
朔はタバコを一本取り出し、マオに差し出した。
マオ「ありがとうございます。」
慣れた手つきでタバコに火をつけるマオ。
その様子を、朔は観察するように見つめている。
マオは、自分が吐き出した煙を、追うように目でなぞった。
マオ「やっぱり、これは面白いです。」
朔「面白いから吸ってるの?」
マオ「はい。それもありますが、なんだか懐かしい気持ちになります。」
朔「へぇ……死神になる前の記憶とかかな。」
マオ「いえいえ。ぼくは死神ではありません。恐れ多いです。」
朔「…マオの世界では、死神は恐れ多い存在なんだね。」
マオ「はい。神様ですから。ぼくのようなゴミとは違います。」
朔「ふぅん……」
朔はタバコの火を消し、マオに視線を向けた。
朔「もう一回、マオのことを詳しく聞いてもいいかな。」
マオ「いいですよ。」




