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異世界ランジェリー・メーカー ~女性下着会社の社長と社員が転移したので、極上の下着で異世界の美女たちをコーディネートします~  作者: フシサバ


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第30話 女王の密室試着と、東方霊樹の神託

王立ルミナス貴族女学院での『制服大革命』から数日。

王都ルミナステラは、かつてない熱狂に包まれていた。


チサが魂を込めて染め上げた『ミッドナイト・ネイビー』のブレザーと、ユウが神業の型紙で仕立てた『ファーストブラ』の噂は、学院の塀を軽々と飛び越え、王都中の貴族令嬢たちの心を鷲掴みにしていたのだ。

保守派の重鎮・ヴァルガス伯爵を手玉に取ったカオリの商談手腕により、量産と流通のラインも完璧に掌握。

我が社『トリップ・トラップ』の王都本店には、予約注文の羊皮紙が山のように積み上がっていた。


だが、大勝利の余韻に浸る間もなく、俺たちはロズタリア王城へと足を運んでいた。

今回の潜入任務は、他ならぬ国王――セシリア陛下からの直命だったからだ。


「――以上が、王立ルミナス貴族女学院における任務完了の報告となります」


謁見の間ではなく、人払いのされた豪奢な私室。

ミサキが分厚い業務手帳を胸元に抱え、知的な声で報告を締めくくった。

その隣では、新たに【魔導意匠士(マギ・デザイナー)】として覚醒したチサが誇らしげに胸を張り、【契約執行官(コントラクター)】の称号を得たカオリが艶然と微笑んでいる。

そして【魔導機工師《マギ・マシニスト》】のユウは、愛用のハサミを腰に忍ばせ、静かに俺の背後に控えていた。


「……信じられませんわ」


ソファに腰掛け、報告書に目を通していたセシリアが、感嘆の息を漏らして顔を上げた。

翡翠色の瞳を丸くし、美しい唇を震わせている。


「あの頑固一徹で、王室の言葉にすら耳を貸さなかったヴァルガス伯爵を、汚職の証拠で締め上げつつ、新たな流通利権を餌にして完全に手詰まりに追い込むなんて……。カオリ、貴女のその交渉術、一国の外交官としてスカウトしたいくらいですわ」


「ふふ、恐縮ですわ、陛下。これもすべて、社長が掲げる『美の解放』という理念あってのこと。私はただ、頑固なおじ様の深層心理にある欲望を、ほんの少し手玉に取っただけにすぎませんもの」


カオリがタイトスカートから伸びる脚を優雅に組み替え、大人の余裕を見せる。

セシリアは楽しげに喉を鳴らし、今度はチサへと視線を向けた。


「そしてチサ。貴女が染め上げたという、その『ミッドナイト・ネイビー』の生地。見本を見せていただきましたけれど……信じられないほど神秘的な発色ですわね。光の角度によって表情を変え、肌の白さを極限まで際立たせる……。魔導研究所のエリザですら『染料の魔力粒子が完璧に整列している』と舌を巻いていましたわ」


「えへへー! 任せてくださいよ陛下! あたし、女の子が一番可愛くなれる『色』に関しては絶対に妥協しないんで! あのセレスティーナ様が鏡の前で泣いて喜んだ顔、マジで国宝級でしたから!」


チサがおへそを出したいつものキャミソール姿で、元気にピースサインを掲げる。

有能すぎる社員たちの活躍に、俺も代表取締役として誇らしい限りだ。

セシリアは満足そうに何度も頷いていたが、やがて――翡翠色の瞳を細め、どこか悪戯っぽく、そして熱っぽい眼差しで俺をじっと見つめてきた。


「……報告は大儀でしたわ、皆さん。ですが……ソウイチロウ」


「はい、何でございましょう、セシリア陛下」


「貴方という人は、本当に罪作りな殿方ですわね」


セシリアは立ち上がり、すんなりとした足取りで俺の前へと歩み寄ってきた。

白薔薇の香水の匂いが、ふわりと鼻腔をくすぐる。

彼女は俺の胸元にそっと指先を滑らせ、上目遣いで唇を尖らせた。


「女学院の若き蕾たちを救うためとはいえ……私の可愛い生徒会長や、頑固な女性教師まで、貴方たちの『手』で骨抜きにしてしまったのでしょう? おかげで私は、貴方の指先による定期メンテナンスを何日もお預けにされて……肩も、背中も、すっかり寂しさで凝り固まってしまいましたわ」


「おや……それは職人として、最大の失態を犯してしまいましたね」


「ええ、大失態ですわ。……ですから、たっぷりと『お詫び』をしていただきます。……それと、ね」


セシリアは頬をほんのりと朱に染め、俺の耳元へと顔を寄せた。


「噂の新制服……あのブレザーという衣装、私用のものも一着、仕立てて持ってきているのでしょう? ……試着室へ、いらっしゃい」


女王陛下からの、抗いようのない『勅命』。

背後から、ユウのハサミが「シャキン」と鳴り、ミサキの手帳を握る手がギリリと音を立てた気がしたが、フィッターとしての使命を前にして引くわけにはいかない。


「……謹んで、お供いたします」


俺は紳士の仮面を崩さず優雅に一礼し、衝立の奥へと消えるセシリアの背中を追った。


◇


衝立に囲まれた、甘い香りの立ち込める密室空間。

ドレスを脱ぎ捨て、薄絹のシュミーズ一枚になったセシリアは、すでに待ちきれないといった様子で背中を向けていた。


「さあ、ソウイチロウ。まずはその温かい指で……私の身体を解き放ちなさい」


「かしこまりました。……失礼いたします」


俺は温めた両手を、彼女の白磁のような肩筋へとそっと滑らせた。


「んっ……あぁ……っ!」


触れた瞬間、セシリアの背筋がビクンと小さく跳ねる。


(……ふむ。一国の君主としての重圧、そして執務による長時間のデスクワーク。僧帽筋から肩甲骨の内側にかけて、微細な緊張が筋となって走っている。だが、以前のようなコルセットによる歪みはない。『ロイヤル・サファイア』が彼女の骨格を正しく支え続けてくれた証拠だ)


俺は解剖学に基づき、親指の腹で深層筋肉をじんわりと捉え、滞っていたリンパをデコルテへと流していく。


「あ、ぁ……っ。そこ……熱いのが、奥まで染み渡って……っ。ふふ、やはり貴方の手でなければ、私はもう……満足できませんわ……っ♡」


セシリアがとろんとした目で振り返り、熱い吐息を漏らす。

俺は冷静に呼吸を整えさせながら、用意していた特注の制服を取り出した。


「陛下。こちらが、貴女の気品とプロポーションに合わせて特別に調律した『ミッドナイト・ネイビー』のブレザーです」


「まあ……! なんて深い色……。夜空をそのまま切り取ったかのようですわ」


胸元を優しく、しかし確実にホールドするインナーを装着させ、シルクコットンのブラウスに袖を通させる。

そして、仕立てたばかりのブレザーを羽織らせ、前ボタンを留めた。

少女たちのようなミニスカートではなく、膝丈のエレガントなタイトプリーツ。

姿見の前に立ったセシリアは、息を呑んで鏡の中の自分を凝視した。


「これが……私……? 凛々しくて、知的で……それでいて、ウエストのくびれと胸のラインが、信じられないほど鮮やかに引き立っていますわ……!」


ブレザーの深いネイビーが、彼女の金髪と翡翠色の瞳を極限まで発光させ、女王としての気品を保ちながらも、どこか瑞々しい若さを醸し出している。


「大人の女性が纏うからこその、気品と色香。……完璧に着こなしていただけましたね、陛下」


「ソウイチロウ……貴方って人は、本当に……っ」


感動に瞳を潤ませたセシリアは、衝立から出てくると、待機していた社員たちにもその艶やかな姿を堂々と披露した。

カオリが「まあ、息を呑むほどお似合いですわ」と拍手を送り、チサも「ヤバっ! 大人ブレザー、超アリじゃん!」と目を輝かせる。


最高のもてなしとフィッティングを終え、セシリアは上機嫌でティーカップを傾けた。

場の空気が十分に温まったところで、俺は本題を切り出した。


「セシリア陛下。女学院の改革が成功した今、我がトリップ・トラップは、次なる事業拡大へと舵を切りたいと考えております」


「あら、次なる事業拡大? ロズタリア全土、ヴォルガ帝国、さらには魔王領まで手中に収めた貴方たちが、まだ満足していませんの?」


「ええ。職人の探求心に終わりはありません。……私は今、新たな『至高の素材』を求めているのです」


俺は身を乗り出し、真剣な眼差しで告げた。


「着用者の魔力と呼吸に完全に同期し、何百年経っても一切劣化せず、永遠に肉体を支え続けるような……いわば『生きた繊維』。この世界に、そのような奇跡の素材は存在しないでしょうか?」


俺の問いに、セシリアはスッと目を細め、カップをソーサーへと戻した。

その表情から甘さが消え、統治者としての深い知性が宿る。


「……何百年も劣化せず、魔力と完全に同調する繊維、ですか。……ええ、心当たりがありますわ。ただ一つだけ」


「……!」


「このロズタリアから遥か東。荒れ狂う大海原を越えた先にある、隔絶された島国――『扶桑の島』。その最奥に広がる原生林に、数千年の時を生きる長寿種が住まうと伝えられています。……『エルフの隠れ里』ですわ」


エルフの隠れ里。

その響きに、チサとカオリが顔を見合わせる。


「エルフ……! マジで!? 耳が長くて美人ばっかりっていう、あのファンタジーの定番!?」


「ええ。彼女たちは世界樹の苗木とも呼ばれる神木『霊樹』を守護し、その樹液と繭から紡がれる【霊樹の天蚕糸(しんじゅのてんさんし)】と呼ばれる秘宝を代々受け継いでいると聞きます。その糸は、着用者の魔力回路と同化し、呼吸に合わせて伸縮する……まさに貴方の求める『生きた繊維』そのものですわ」


俺の職人としての血が、ドクンと音を立てて沸騰した。

何千年もの時を生きる繊維。

それさえあれば、いかなる体型の変化にも追従し、究極の快適性をもたらすランジェリーが作れる。

だが、セシリアは神妙な面持ちで首を横に振った。


「ですが、ソウイチロウ。エルフは極めて排他的で、誇り高い種族です。人間を『短命で愚かな羽虫』と見下し、里の周囲には何重もの幻惑結界を張り巡らせている。過去、我が国の使節団や高名な商人たちが幾度となく接触を試みましたが、誰一人として里の門をくぐることすら叶いませんでした」


「なるほど。国家の権力すら通じない、絶対の聖域というわけですね」


「ええ。……ですが、貴方たちなら、あの頑ななエルフたちの心すらも『解放』できるかもしれない。そう思いましてよ」


セシリアは懐から、古びた琥珀色のメダルを取り出し、俺の手のひらへと落とした。

表面には、絡み合うツタと弓の紋章が刻まれている。


「ロズタリア王家に代々伝わる、建国の祖がかつてエルフの長老と交わしたという『盟約の証』です。……それを持っていれば、少なくとも結界の前で即座に射殺されることはないはずですわ」


「感謝いたします、セシリア陛下」


俺はメダルを胸ポケットへと大切に仕舞い、深く一礼した。


(何千年と生きる、不老長寿のエルフたちか……。永遠の時を生きるがゆえに、姿勢の癖や深層筋肉のコリが、数百年単位で蓄積しているに違いない。誰の手にも触れられず、放置され続けた彼女たちの身体の悲鳴……。この私の手で、救い出して差し上げなくては!)


俺の内なる職人魂(おっさん)が、未知なる美女たちのフィッティングに向けて熱い咆哮を上げる。

東方の島国、そして神秘に包まれたエルフの隠れ里。

まだ見ぬ至高の素材と、2000年の時を超えた『とんでもない出会い』が待ち受けていることを、この時の俺たちはまだ知る由もなかった――。

ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます!


女学院編を無事に完結させ、次なる舞台は「東方の島国・エルフの隠れ里」へ!

セシリア様の大人ブレザー試着はいかがでしたでしょうか?


「社長ナイス!」「エルフ編も楽しみ!」と思っていただけましたら、

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皆様の温かい応援が、次なる美女を解放するエネルギーになります!

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