異変2
ニュースによると出火原因は調査中、火は俺がスヤスヤと寝ていた午前11時頃には既に猛威を振るっていたそうだ。
「え…?」
驚くと声が出ないというのは創作でよくある表現だが実際には1文字くらいは出る。
頭に浮かぶのは「入学式はどうなるのか?」「もしかして春休み伸びる?ラッキー?いやラッキーではないか」の自問自答
こういう時は晴人に連絡してみるのが一番良い手段なのは過去の出来事から学んでいる。晴人は俺のちょっとした悩みから課題や勉強にも付き合ってくれる聖人で頭が良くない俺にとって有難い存在である。特にテスト期間では世話になった。
大学が燃えてることを晴人に話したところで何かが解決する訳では無いが、誰かに共有したい気持ちが先行した。
ポケットからスマートフォンを取り出し晴人に電話をかけてみる、恐らく他の友達と遊んでいる頃だろうから繋がらないだろうと思っていると
「お、英司どうした?お前も一緒に映画観る気になった感じか?今から映画館に向かうとなると…自転車でもギリギリだけど大丈夫か?」
彼は以前からこういう前のめりな会話をする
だが奥手な英司にとっては相性のいい会話と言えるだろう
「見ないし行かないし、映画の要件じゃねぇよ」
「じゃあなんだ?飯?俺今日はラーメンの気分だなぁ」
俺の否定を重ねがけさせるなと思いつつも本題を切り出す
「大学が燃えてる?」
「あぁ…うんそうなんだよ、いや別に何かあるって訳じゃないんだけど」
言ったはいいものの会話が下手で続かない
確かに大学からの連絡を待つ方が賢明であるし言ったからと言って特段スッキリする案件でもなかったのを話してみて気づく
「悪い、映画の邪魔したな切るわ」
と通話を終えようとすると晴人が食い気味に止めに入った
「英司しばらく外でてないだろ?野次馬しに行こうぜ」
進学先が燃えているというのに悠長なことを言うなと思ったが、恐らく卒業式以降連絡していなかったこともあり心配してくれていたのであろう。
昔から世のため人のためと聖人君子のような行動が多かった晴人だからそういう解釈をしてしまう。
俺はその誘いを受け大学へ向かった
自宅から大学までは2駅で着く近場の所を選んだ
選んだと言っても学力的に余裕があったということではなく偏差値的には自分のレベルより上でギリギリ合格した。
その点、晴人からしてみれば自分のレベルより1つ下というもので、それなりに勉強していれば模試での判定も良く、受験のプレッシャー云々は無く前日まで俺の勉強に付き合ってくれていた。
俺は着替えて大学の最寄り駅まで向かった
大学は駅から歩いて10分程度の立地にあるのだが、火は消し止められていたのか煙も他の野次馬も無かった。
晴人が居た映画館は俺の自宅より大学に近いから先に着いているのだろうと踏み大学の前まで向かおうとしたが、駅から歩き出す1歩が妙に重たかった
「学校嫌いはそう簡単には無くならないか…」
そういう気分の問題なのだろう
学校でいじめや差別を受けていたということは無い
むしろ晴人が友達だったおかげかそれなりに人とは話していたつもりだし知り合い以上友達未満の浅い関係はあったと思う。
ただ単に集団生活が向いてない社会不適合者なのだろうと再確認しながらも足を進めた。
不自然な事に大学までの道のりで人が1人もおらず消防車、警察車両も見かけなかった。実際に事件に遭遇したことはないがこういうものなのだろうか?
ドラマや映画では現場に1日は常駐してるイメージがあったがそれも創作の類なのだろうか。
なんて考えてるうちに大学に着いた正門には晴人もおり無事合流出来たという訳だ。
「なぁ英司、こういうのって警察とか野次馬とかもっと居ると思ったんだが意外と事件の処理って早いもんなのか?」
ここに向かう過程で晴人もこの状況に違和感を覚えたらしい
「分からないけど、ニュースで見てた時は凄い野次馬の数だったぞ」
この辺りは栄えており見える範囲にショッピングモールもある、人がそんな早く消えるわけがないと思っていた。
「だよなぁ…まぁ火消えてるし、誰も居ないし入ってみるか!」
俺はこの誘いに乗ったことを数分後に後悔することになるのをまだ知らない




