10.ユイの後始末とステータス
Side by ユイ――
私はハヤトにお手洗いに行くと伝え、冒険者ギルドのトイレに入る。視認妨害の結界を展開し、トイレの中にある窓からギルド脇の細道に出る。
(どこに行ったのかな?)
私は表通りに向かい、先ほどの3人組を千里眼を使用し探す。どうやらまだ近くにいるようだ、ハヤトが倒した冒険者を担ぎながら移動しているのが見えた。
私は視認妨害の結界、消音結界を同時展開しながら3人組に接近した。
「ねえ、そこの冒険者さん」
私は視認妨害の結界、消音結界の中に3人組を入れ、話しかける。私を下卑た目で見つめてくる。
(気持ち悪い。ゴキブリの方がまだマシね)
「おいおい、さっきの女じゃないか。彼氏も連れずに1人できたのか?」
「グヘヘ、1人で来るなんて無用心じゃないか?」
「うん、そうだよ。誰もいないところでお話しない?」
「あんな男なんかより俺らと楽しみたいって事か? とんだ好きもんだな。大歓迎だが今はこいつを治療しないといけないからな」
「デフルの治療はお前に任せた! 俺は先にしっぽり楽しませてもらうぜ!」
「おい、そりゃないだろ!」
「私が治療してあげるよ」
私はハヤトが倒した男に回復魔法をかけた。私の魔法は強力だ、みるみるうちに男の顎が修復されていく。気絶したままだが治療は済んだようだ。
「ギャハハ、マジかよ。そんなに俺たちと楽しみたいなら行こうぜ? 俺らの宿に案内するぜ」
「罠じゃないだろうな?」
「デフルの治療までして罠もないだろ? 俺は1人でも行かせてもらうわ!」
「私、そっちの狭い裏道がいいな」
「ギャハ、アオカンがお好みかよ? 早速行こうぜ」
「おい、俺も行くって!」
男たちの先導で薄暗い裏道に入っていく。人通りはほとんどなさそうだ。男たちの後ろで私は暗い笑みを浮かべた。
「グヘヘ、ここら辺ならいい感じだな。楽しませてくれよ?」
(そうね、ここなら万が一にも誰にもばれないし)
男たちは気持ち悪い顔をして近づいてくる。私は男たちの足を蹴り払い、2人を横倒しにする。
「ギャアアアアアアアッ、何しやがる!! 俺の足が!足が!」
「グウウウウウウウ、やっぱり罠だったじゃねーか! お前のせいでこんな目に!」
「うるさい」
私は男たちの股間を蹴り潰す。男たちはあまりの痛みに泡を吹いて気絶したが、私は回復魔法で少しだけ回復させ、男たちを叩き起こした。ついでにハヤトが倒した男の足も折り、痛みで気絶から回復させた。
「グウウウッ、一体なんだ!? 俺の足が変な方に曲がってる! ここはどこだ! あの男はどこにいった!?」
「ギャアアアアアアアアッ、痛い!! 俺の大事なあそこが!! 痛いよ!! 誰か、たすけてくれえええ!」
「グウウウウッ、俺は何もしてない! 早く回復してくれよ!! 謝る! 謝るから!」
(本当にうるさい、消音結界のお陰で誰にも気づかれないけど、耳が痛いわ)
「あなたたちはハヤトに傷をつけた。私はそれが許せない。それにあなたたち、ハヤトに復讐する気でしょ? その前にあなたたちの命を終わらせてあげようかしら」
「て、てめええええ。さっきの女か! あの糞野郎はどこいった!? ぶっ殺してやる!」
「やめろ!! デフル! てめえのせいで俺たちまでやられてるんだぞ!」
「そうだ! お前だけが殺されろよ!」
(醜い、なんて醜いのかしら。仲間割れ始めたわ)
私は全員の股間や腕、足、顎を砕き、腹に穴をあける。気絶しないよう、死なないように気をつけながら回復魔法するのを忘れない。
「ヒイイイイイイイイイイイイッ、あくまだああああ、たすけてくれええ!!」
「だれかあああ、たすけてええ! お願いだああああああー!!」
「もう殺して!! 殺してくれえええええ!!」
バキ、グシャ、ズブ、男たちの心を完全に壊さないように気をつけながら繰り返す。何回か繰り返すと男たちは悲鳴を上げる力もなくなったようで、静かになっていく。
「やめ、やめてください。うっうう、やめて、お願いします、もう2度と、逆らいませんから、ううう」
「デフルの、いうことを…、きいていた、だけなんです…、もう…やめて…ください。お願い、します…、なんでも、いうこと、ききますから…」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
何回か繰り返したところで全員の心が折れたようだ。虚ろな目で泣きながら許しを請うている。
(そろそろ頃合かしら?)
私は暗示魔法をかけながら話しかける。
この魔法は正常時には非常にかかりにくいが、精神が弱っている時には確実にかけることができる。
男たちの虚ろな目がさらに力をなくす。
「この地獄から解放されたければ、ハヤト様を敬いなさい。あなたたちを救えるのはハヤト様だけです。あなたたちのハヤト様への忠誠心が低ければ、また地獄に落とされることでしょう」
男たちの目に少しだけ光が戻る。
「はい! はい! ハヤト様を心から敬います。救いをくださりありがとうございます!」
「私にお礼じゃなく、ハヤト様にお礼を言いなさい!!」
私は男たちの顔の骨が折れない程度に手加減して殴る。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。ハヤト様ありがとうございますハヤト様ありがとうございますハヤト様ありがとうございます――」
どうやら心に刷り込みができたようだ。男たちの私に関する記憶だけ消し、恐怖心とハヤトへの信仰心だけ残して、その場を後にした。
証拠隠滅のために、全員を回復魔法で治療、清潔魔法で汚れを落とすのも忘れない。
(これでハヤトが復讐されることはないわ。ハヤトへの信仰心も植えつけられたし一石二鳥ね)
私は問題解決できたことに満足し、ギルドのトイレ窓からまた侵入し、ハヤトの元へ向かうことにした。
――Side by ユイ End
ユイがトイレに行っている間に、俺はギルドのカウンターで用件を済ませることにする。猫耳受付のニャルさんがカウンターにいたので、そちらに向かう。
「わわ、誰が喧嘩してるのかと思ったら、さっき登録したばかりのお兄さんだったのかわん」
「ニャルさんこんにちは。ステータスに関する本って貸し出しとかされてませんか?」
「あれ? 私名前教えてましたかわん?」
(やばい、鑑定で名前知ったんだった。誤魔化さないと)
「冒険者登録した時に教えてくれたじゃないですか。若いのにボケちゃダメですよ?」
「あれ? そうだったかわん? んー、そうだったような気もするわん」
「それで、ステータスに関する本貸し出しお願いします」
「ギルドは本の貸し出しはしてないわん。閲覧室から持ち出ししなければ勝手に見ていいわん。あそこの部屋に入るといいわん」
(女の子のトイレは化粧とかで長いからな。先に行ってよう)
「ありがとうございます。早速行ってみます。ユイ、えっと、さっき俺が登録していた時に一緒にいた女の子覚えてます?」
「覚えてるわん」
「その子がきたら、俺が閲覧室に入ったこと教えてください」
「わかったわん」
俺はニャルさんが指差した閲覧室に入っていく。10畳くらいの部屋に本棚が1つ、10人くらい同時に使えそうな大きな丸テーブルを囲むように椅子が8つほど置いてある。閲覧室には誰もいない。人気がないのだろうか。
俺は早速本棚をあさり始める。
(魔物辞典…分厚いな、これは今はいいや。ジョブの取得条件一覧、これも今は必要ない。ステータス解説、これを読もう)
俺はステータス解説と書かれている本を読み始める。内容を以下に纏める。
HP=体力
MP=魔力
攻撃力=力+武器攻撃力
防御力=体力+攻撃を受けた部位の防具防御力
持久力=体力
攻撃速度、移動速度、動体視力=素早さ
所持可能な重量、力の強さ=力
魔法攻撃力=魔力×杖の魔力浸透率+魔法の威力
細かい作業、武器の扱い=器用
クリティカル(2倍ダメージ)確率=(運/10)%
自分と武器防具に鑑定を入れる。
【名前】ハヤト・ヤシロ
【称号】人外入門
【種族】人族
【職業】学生/冒険者
【ジョブ】剣神/武神/魔導神
【レベル】1
【スキル】
異世界言語、異世界文字、鑑定、アイテムボックス、ラーニング、幸運、レベル上昇時力、体力、魔力成長+100、剣術《極》、格闘術《極》
【魔法】
魔導術《極》
【その他】
剣装備時力+300、格闘時体力+300、杖装備時魔力+300
【ステータス】
HP(310/310)MP(305/305)
力8(+600)体力10(+300)魔力5(+300)素早さ9(+600)器用10運18(+300)
【装備】
鋼鉄の剣
異世界の上着
異世界の服
異世界のズボン
【鋼鉄の剣】
クミル作の鋼鉄製の剣
【耐久】4,504/4,504
【攻撃力】12
【価値】580,287
【異世界の上着】
異世界のジャケット
【耐久】498/502
【防御力】2
【価値】9,980
【異世界の服】
異世界のシャツ
【耐久】365/371
【防御力】1
【価値】5,980
【異世界のズボン】
異世界のジーンズ
【耐久】529/538
【防御力】2
【価値】6,980
ステータスに表示されない攻撃力と防御力、クリティカルを計算していく。
「んー、ってことは攻撃力が608+武器12で620、防御力は310+それぞれの服の防御力って服の防御低いな。クリティカルが31.8%ってことか」
(ステータスが高すぎて裸と大差ない。剣装備時ステータスボーナスのために、剣は持つ必要があるようだな)
「おまたせー、ステータスの勉強進んでる?」
ユイが閲覧室に入ってきた。すっきりした顔をしている。
(トイレ長かったし便秘だったのかな、てこんな想像するのは最低か)
「うん、大体わかったかな。ステータスが高すぎて、安い装備してもあんまり意味がなさそうなかんじだ」
「あはは、そうかもねー。ハヤトの場合装備そろえるより先にレベルあげちゃったほうがよさそうだね。でも龍種と戦うなら強い武器必要だよ!」
「ユイさん、初心者冒険者は普通、龍種とは戦わないと思うんだ」
「でもそのうち戦ってもらうからね! 頑張っていこー!」
(マジか、龍種と戦うとか人間には無理だろ!)
「おー! っていいなよ」
「お、おー!」
「それじゃそろそろ練習場にも行こう。ニャルさんに場所を聞いておいたから、ついて来て」
「了解。さっきはやりすぎちゃったもんな。この世界だとあれくらいじゃ罪にならないのかな?」
(デフルを殴ったときの感覚も地球で喧嘩した時とは全然違った。殴れば普通は拳が痛くなるのに全く痛みはなかったし、それどころか顎の骨がまるで豆腐を殴ったような柔らかさに思えた)
俺たちは閲覧室から退室し、話しながら練習場に移動する。
「そうみたいだね。冒険者同士なら殺さなければ大丈夫じゃないかな?」
「殺伐とした世界だよなー、いきなり殴られるとは思わなかったよ」
「ハヤトが大した怪我しなくて良かったよ。私もいきなりだったから油断してた。次は私が守ってあげるからね!」
(ユイの方が俺より強いのはわかっているけど、守られるのはイヤだ)
「ユイは目立ちたくないんだろ? 命の危険がない限り手は出さないでくれ。俺は守って欲しいんじゃない。ユイを守りたいんだ」
「ハヤト……」
ユイが熱いまなざしで見つめてくる。俺はユイに軽くキスをした。
「今はこれだけな?」
「うん…」
俺たちは地下1階にある練習場に下りていった。




