第2話 ダンジョンマスター
ーー100階層ダンジョン、第1大階層
「早く、みんなこっちよー!」
フェリスの姉である【エルフ】のマリーは、1層の山の中にいる小モンスター達にそう避難を呼びかけていた。
ユウタが祖父より相続したこの100階層ダンジョンには、1、10、20、30と10ごとに大階層と言われる巨大な階層がある。
その大きさは、山手線内回りがすっぽり中に入ってしまうほどの広大さ。
ちなみにそれ以外の階層は大体東京ドーム1~5分ほど。
つまり、この第1大階層には必然的に多くのモンスターが生息しているのだ。
『わんわーん』
『うぉーん』
「えーっと、ダンジョン柴犬が500頭に迷宮スモールウルフが200頭……あー駄目、多すぎるよ~!」
第1大階層を任されているのは【エルフ】のマリー。
レベルは15ほどで、大階層管理者では一番弱い。
しかし、彼女も大階層管理者であるからには、この第1大階層にいる小モンスター達を守る義務がある。
そのためマリーは、必死にモンスター達を第2階層へ繋がる"階層転移門"に誘導していた。
「ダンジョン荒らしの侵入警報が鳴ってから、だいたい10分が経ったけど、まだここまで来てないって事は、入り口付近のスカルナイトの見張り達が奮戦している証拠よね、早く逃さなくちゃ」
この100層ダンジョンの入り口には、度重なるダンジョン荒らしによる被害から、スカルナイトの見張り部隊が配置されている。
その数はおよそ20体。
一体のレベルは10ほどで大した事はないが、それでも20体いればそこそこの足止めにはなるのだ。
『ドゴォォン』
その時、ダンジョンの入り口付近で大きな爆発音が聞こえた。
「な、何よこの音!」
『クゥゥン』
怯えたダンジョン芝犬がマリーの足に擦り寄った。
「よしよし平気よ(でも、この爆発は一体……もしかして、スカルナイトの見張り部隊が破られたのかも)」
そしてマリーの不安は的中してしまう。
スカルナイトを破り、入り口から出てきたダンジョン荒らしが、第1大階層の山の中に侵入してしまったのだ。
「へへ、あの骨兵士ども結構強かったが、所詮コイツの敵じゃなかったな」
『カチャッ』
そう言って男はバズーカを肩にかけた。
「いやぁ、カズヤの兄貴、そのダンジョンアイテム"お手軽バズーカ"マジ強いっすよね」
「へへ、だよな、これ一個1500円なんだぜ」
「マジすか、安いっすね」
ダンジョン荒らしのカズヤとシズヤ。
最近、近隣の民間ダンジョンを荒らしまくっているお尋ね者である。
「そだろ、コイツで適当なモンスター倒して、ダンジョンにあるお宝をゲットすれば、利益ハンパねぇのよ」
「確かに!兄貴天才っすねー!」
笑いながらそう話すカズヤとシズヤに近づく影が一つ。
「ちょっとあんたら!何のつもりよ!」
現れたのは自分の大階層を荒らされ、怒り心頭のマリーだった。
「うひょー!見てくださいよ兄貴、めっちゃ美人のエルフっすよ!」
「へへ、たまらねぇぜ」
下卑た笑いを浮かべマリーに近づく2人。
「な、何よあんた達やる気なの?」
「おー怖え、やる気だとよ」
「やってみなよ美人なエルフさん、俺たちが手取り足取り教えてやんよ」
「へぇ面白いなそれ、俺にも教えてくれよ」
「あ?何だよ、テメェなんぞに誰が教えてやる……あ、お前は」
ダンジョン荒らしの背後から現れたのは、このダンジョンの所有者にしてマスター。
そして大人気配信者の"ユウタのドキドキダンジョン生活"だった。
「マスター!」
「よぉマリー」
「マスターだと?」
「あ、兄貴コイツですぜ、名のあるダンジョン荒らしの集団を皆んな返り討ちにしてるって噂の奴は」
怯えた目でユウタを見つめる子分のシズヤ。
「俺の可愛いマリーやダンジョンモンスター達を痛めつけやがって、お前ら覚悟はできてるんだろうな?」
「くっ、何だよテメェやろうってのか!」
「こっちはただでさえドラゴンのブラッシングに、スライムの餌やりとかで忙しいんだ、一発で決めてやるからな!このクソダンジョン荒らしが!」
こうして今日もユウタの配信はダンジョン荒らしのお陰で大盛り上がりとなる。
現在の同接は3万。
コメント欄は戦闘パートへの期待感に溢れていた。
ーーコメント欄ーー
"やれユウタ!"
"12時間労働ダンジョン管理人の力見せてやれ!"
"マリーちゃん可愛いな"
"俺の嫁に手を出しやがって、成敗してやれユウタ!"
まったく、通常の俺の配信とは思えない盛り上がり方だな。
まぁでも……。
「任せとけ皆んな、俺のダンジョンは俺が守る!」




