表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過疎ダンジョンの人形姫、暇すぎて世界を救う配信者になるってよ  作者: ゼクスユイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/21

第17話 人形姫、有言実行するってよ

 8/1、草津支部会議室で【STARS】が収益化記念特別配信と銘を打って、配信を始めた。


「今日は収益化特別配信ということで、草津支部にお邪魔しとるで」


「しかも、今日はなんと!」


「「じゃ~ん!私たち、Cランクになりました」」


【¥10000 収益化&ランクアップおめでとう】

【¥10000 待っていたぜ、この時をよ!】

【¥555 疾走するスパチャ!】

【HAHAHA、アニメガールを応援したかったが、SHIT!ドルじゃあ無理だったぜ。円に建て替えないとな】

【STARSが設定を変えてくれら行けたはず】

【多分、初期設定の自国通貨のみ受け付けになっとるんやろうな】

【¥500 気持ちで】

【¥50000 スパチャ薄いぞ、何やってんの】

【上限スパチャキター!】

【富豪おるやん】

【関西圏在住なら命救われた人多いだろうから、富豪が混じっていてもおかしくない】


「開始数分でえらい金額が集まりそうや」


「お父さんの月収超えそうだよ」


「超えとるんちゃうか。こんだけ真っ赤なスパチャがあると」


「しかも、海外からスパチャ? をしたがっている人もいるみたい」


【今日の姫花ちゃん、妙に装備してない?】

【ボディカメラつけているな、ドローンあるのに】

【10年くらい前はメジャーだったんだけどな、ボディカメラ】

【冒険者が激しく動くから、画面はブレブレ。画質は荒いと来た】

【ドラレコカメラをそのまま持ってきたようなものだし……】

【配信ドローンが出来なかったら、配信者なんていなかっただろうな】


「設定は後で変えとくよ。私もよく分からなかったから、今日はお試しってことで」


「というわけで、本日のメインイベントはなんとギルド案件の探索や!姫花、説明よろしゅう」


「ちょっとニュースになっていたけど、このダンジョンで新たに2階層目が見つかって、調査していたBランクのパーティーが壊滅したの。で、ギルドから依頼を受けた私がその原因を探るために来たってわけ」


「機材は壊れること前提でギルドから借りてます。いつもより、画質粗めだけど許してね」


「なんでも、ドローンやスマホを壊すらしいんや。ウチはカラス天狗的なモンスターの仕業やと思うんやけど」


「調べたらBランクでいるみたいだね。鳥取の砂漠じゃない方のダンジョンで」


【砂漠じゃない方www】

【砂丘にある砂漠ダンジョンは有名やからな】

【日本で唯一、砂漠の素材取れるダンジョンに対して……】

【¥1000 地元民、妖怪ダンジョンの知名度の低さに泣いた】

【妖怪に会いたいなら、渋谷のハロウィンダンジョンにいくしな】

【あっちの方が華やかだからな。死亡率もえぐいけど】

【だいたいバエとかバズりたい精神の人間が軽い気持ちで入るせい】

【妖怪とハロウィンのモンスターは別カテゴリーだと思うんです】


「どっちもモンスターでしょう。別種なだけで」


「ズバッと言うね。咲夜ちゃん的にはどう思う? 私は違う派」


「妖怪とジャックオランタンとかの類は別カテゴリーやろ」


「……もしかして私だけなの?」


【ワロタ】

【クソ強い代わりに常識が弱い女】

【違うよ、常識をコストに強さを手に入れただけだから】

【等価交換の法則】

【捨てるな】

【常識さん……】

【今回も常識さんお亡くなりそう】

【未知のモンスターさんを前にそもそも常識が通用しない可能性がありますの】

【姫花ちゃんvs謎のモンスターvs常識さん】

【よかった。無駄に戦わされるナイトメアなモンスターさんはいなかったんだ】


「今回はその謎のモンスター相手だから、私一人だけで行くわ」


「ウチらも行きたかったんやけど、無理についてきたら見捨てるとまで言われたし、現にBランクのパーティーが壊滅しとるからな……物見遊山はNGや」


「姫ちゃんに負担を掛けさせるわけにはいかないよね」


「そういうこと。私の戦闘見たさに誰かがこっそりと、もしくはギルド職員の制止を振り切って押し寄せてダンジョンに入ってきても、助けるような真似はしないから」


【当然だわな】

【Bランクを壊滅させたってことは、推定Aランクの未知のモンスターだし】

【救助する余裕なんてありませんわ】

【自分の身は自分で】

【ダンジョン探索の鉄則だよな】


 これだけ言えば、マスコミも変なことをしないだろうと考えた姫花は早速ダンジョンの中に入っていき、隠し階段を通じて2階層へとたどり着く。姫花の周りには配信ドローンが2台、前と後ろを監視するように飛んでいる。


「多少の分かれ道はあるけど、ほぼ一本道ね」


 行き止まりになっている奥には宝箱があるが、今は未知のモンスターの調査が優先ということでスルーして歩いていくと、ホール状になっているただ広い空間になっている。


「例のモンスターはここで出てきたのよね」


 もう少し足を踏み入れた瞬間にドッと湧いてくるリビングドールの集団。不思議な踊りで自らの上司に歯向かっていくが、上位も上位の存在に通用するわけもなく、あっさりと燃やされていく。

 そんなときだった。背後を映していたドローンカメラに地面からドロリとターバンの男が現れて、配信ドローンに斬りかかろうとするも、周囲を警戒していたクノイチ人形の忍者刀に阻まれる。距離を取って逃げようとする暗殺者を姫花が捕縛し、カメラの前に付き出す。


【なんだアイツ!?】

【同業者?】

【ドローンを初撃で攻撃してきたぞ】

【いや、よく見ろ、人形だ】


「新手のリビングドールかしらね。潜伏・奇襲型の。そんなのがいるという情報が無かったら、しかも戦闘中だというこの状況……並のスカウトだと気づかれずにドローンを破壊されていたかもしれないわ」


【クノイチちゃん、優秀】

【さすがは準レギュラー】

【正規メンバーくらいの出番の多さあるやろ】

【戦士ちゃん、魔術師ちゃん……】

【まとめて三人娘ちゃんでええやろ】


「ドローンが狙われたってことは今度はスマホ狙いもあるはず」


 今度はポケットから貸し出しスマホをこれみよがしに出してみると、遠方から飛んできたクナイをまたしてもクノイチ人形がはじく。クナイが飛んできた方をみると壁にへばりついた忍者風の男性が見える。


「薄暗いから断言できないけど、新手のリビングドールかしら。問題はアレが何に反応したか……ね」


 今度は剣を抜いてみると、ふたたびクナイが飛んできたので自分で弾き飛ばす。


「戦闘中に武器を取るとそれに反応して、武器を落とそうとするって感じかしら」


【スマホが狙われたのは投擲武器か何かに見間違えられたってことか】

【あんだけ遠くから見たら変な形の爆弾かと思ったのかもな】

【光るから余計目立つ。最優先で狙われてもおかしくない】

【戦闘開始時には飛んできてなかったから、さっきのドローン男と同じで戦闘中に湧いてくるタイプか】

【雑魚と戦っている最中にこっそり追加増援してくるとかやめろ】

【目の前じゃなくて、背後と壁際なのが最悪すぎる】

【しかも音もなく忍び寄ってくるしな】


「ドローン男は捕縛しちゃったから、どういった理由で襲ってくるか分からないわね。ただ、あの忍者を見る限り、ドローンを優先して落とすんじゃなくて、最後尾から順番に攻撃してくるだけかもしれないけど」


【ああ、なるほど。ドローンって最後尾にいるからな】

【ってことは、本来は後衛にいる魔術師狙いってことか】

【ドローン君、身代わりになった説はマジでありそう】


「そのあたりは後の調査で判明するとは思うけど、多少、不意を突かれた程度で壊滅するとは思えないのよね。リビングドール自体の戦闘力は他のモンスターありきだし……」


 とつぶやいていると、奥の方からガサコソと大きな音を出しながら迫り寄ってくる黒い巨体。蜘蛛のように手足が何本も生え、体には剣や杖が埋め込められ、ヤマタノオロチを彷彿させるような男女の首がいくつも生えている。通常個体とはあまりにもかけ離れた姿に、ソレがキメラドールであることであると判断するのに高ランカーの視聴者たちでさえ時間がかかるほどだ。


「ここまでドール系のモンスターが出ていることを考えるとキメラドールかしらね。あそこまで育った個体はそう見ないけど」


 リビングドールたちが不思議な踊りで(上位存在である姫花に効かない)デバフをまき散らしながら、キメラドールが体に埋め込まれた杖からフレイムハリケーンを放ち、姫花の人形たちを燃やそうとしてくる。


「中級呪文の力比べでもしようかしら。アクアプレッシャー」


 炎の竜巻を消火する水の奔流を受けるキメラドール。顔をずぶ濡れにした元凶を前に人形の目に怒りの色が灯る。


「二重呪文、アクアカッター!」


 複数の水の刃がキメラドールの放ったフレイムボールを切り裂きながら、女の首を斬り落としていく。だが、斬り落とされた首からぼこぼこと綿のようなものが出てきて、みるみるうちに女の顔の人形が復元されていく。


「自己再生能力持ちで練度は低いといえども、中級魔法の使い手……撤退手段であるスマホを失われ、魔術師も居なかったら全滅は必至ね」


【冷静に見ている場合か!】

【ギルド連中、助けに行けよ!】

【地方支部だとCランクくらいしかいねえよ】

【このレベルだと足手まといだわ……】

【それに姫花ちゃんから、見捨てる宣言しとるし……】


「予備も含めてスマホはあるから大丈夫よ。それに後方は私の人形が守っているもの。撤退できない状況は来ないから。と言っても、こっちも中級魔法だと千日手になりかねないから、上級魔法を使いましょう。タイダルウェーブ!」


 突如発生した大津波が周囲のリビングドールやキメラドールが発した魔法ごと飲み込んでいき、壁に叩きつけられる。全身がびしょぬれになったキメラドールがガクガクと足を震わせながら、起き上がろうとしたとき、突如として男性の大声がダンジョンに鳴り響く。


「せっかく撮ったデータがおじゃんじゃないか!弁償しろ!!」


【誰だ、アイツ!?】

【姫花ちゃんが入るまでギルド職員が見張っていたよな】

【咲夜:隣にいるギルマスが怒鳴り散らかしているで】

【当たり前だ】

【つーか、後ろ、後ろ!】


 騒ぎ立てていたカメラマンを良い餌とでも思ったのか、キメラドールがパックリと頭まるごとひとかじり。鋼鉄の刃の歯できれいに切断された首から下を不要と言わんばかりに踏み付け、姫花を威嚇する。


「そんなのでビビるとでも――」


 威嚇したキメラドールの姿が一瞬にして消えると同時に、姫花がとっさにステップを刻むかのように動き出し、何かを叩きつけられたような衝撃音と地面のくぼみが取り残される。


【なに!?】

【何が起きたんだ!?】

【分からん、説明してくれ】

【明らかに回避行動に専念しているし、説明無理やろ】


「簡単に言うと、さっきの捕食でカメラマンの男の姿を消すスキルを取り込んだみたいね」


【なにやってんだ、あの男!!】

【餌男め!】

【(敵の)強化パーツ】

【ふざけんな!楽勝モードだったのに一気に難易度上げやがって!】

【これだからマスコミは】

【とにかく逃げた方が……】


「見えなくても、水たまりの波紋を見れば位置は分かるし、大きさもわかっているから攻撃も当てられるけど、逃げ続けて反撃の1発で終わりなんて面白くないわよね」


【面白いとかそういうのじゃねえよ!】

【心配しているんだよ!】

【この期に及んで取れ高とか面白さとか考えている女】

【¥1000 これが日本の誇るおもしれー女です】

【咲夜:ウチに目隠しプレイさせたくらいやし、余裕やとは思うけど、相手はイレギュラー中のイレギュラーやで大丈夫か?】

【百合:やっちゃえ、姫ちゃん!】

【バーサーカー扱いで草】

【十分バーサーカーしているだろ】

【ここまで来たらアニメガールよりバーサーカーだろ】


「バーサーカーなんてひどい扱いね。たまにはこの子を出してみようかしら。サモン、ドール・ユニコーン!」


 魔法陣の中から出てきたのは可愛らしいお人形のユニコーン。愛嬌のある顔でキメラドールがいるであろう空間を睨みつけると、ユニコーンの角が光り輝き、姿を消していたキメラドールを照らし出していく。


【何が起こった?(n度目)】

【姫花、説明しろ!(定型)】

【とりあえず分かったのは、ユニコーンちゃんは可愛い】

【わかる】


「ユニコーンの光は魔を払い除ける能力がある。つまり、相手のバフをひっぺがすことができるのよ。そして、処……乙女ならその背に乗せて戦わせてくれる。見ての通り、私はきれいなお姫様だから乗れるわよ」


【子供が見ていることも考えて言い直す配信者の鏡】

【言い換えた時点でアウトじゃねえ】

【ユニコーンが処〇厨なのは有名だし、言い直す必要もなくねえ?】

【配慮して損するような話でもありませんし……】

【姫花ちゃんが処〇なのは分かった】

【咲夜:↑百合、判決は?】

【百合:有罪。没収。死刑】

【BANされて草】

【今の発言はしゃーない】

【異議なし!】


 ユニコーンにまたがって広いドームの空を飛んでいる姫花に魔法で攻撃を仕掛けてくるキメラドール。だが、練度が低い魔法が空を自由に駆け回れるユニコーンに当たるわけもなく、むしろ壁際にいた味方の忍者を巻き込むくらいだ。


「速度強化、三重呪文、ボルテックススパイラルランス!」


 無数の槍がキメラドールのびしょぬれになった胴体や手足を感電させながら貫き、地面に縫い付ける。その姿はまるで蜘蛛の標本。ピクピクとけいれんしているキメラドールに対し、ユニコーンの角に稲妻が迸る。


「ファイナルアタック、ライトニングユニコーンスピア!」


 ユニコーンの突撃で身動きが取れないキメラドールが木っ端みじんに粉砕される。それと同時に地上に飛ばされた姫花のもとにキメラドールのドロップアイテムである糸玉が何個か落ちる。


「へえ~、魔力が通しやすい糸ね。私は自前で出せるから要らないわ」


【草】

【もっとも無駄な新種のドロップアイテムwww】

【加工したら強い装備が出来そうなのにwww】

【売ったらすげー値段しそう】

【魔力を通せば、軽くて鎧より丈夫な服とかできるんだぞ。のどから手が出るほどには欲しいわ】


「このドロップアイテムが新種のリビングドールから出るかどうかで2階層の価値が変わりそうね」


(姫様、さきほどアサシンドールとシノビドールの行動パターンの変更、及びレアドロップを追加しておきました。これで姫様の発言と矛盾することはありません)


(装備品にするには相当数いるけど、そこは頑張って欲しい所ね)


 それでも、しばらくは身の丈を知らない冒険者が2階層に入り、キメラドールのえさになって阿鼻叫喚の事態を招くだろうが、それはそれでダンジョンポイントを稼げるので良しである。万が一に備え、ダンジョンコアも雪女から頂戴したダンジョンポイントでより深く、隠匿した層に移植してある。ただ、当面は2階層の熱に浮かれて、3階層目があるかの調査までは手が回らないだろう。

 配信を終え、ダンジョンから出た姫花に目の前が見えなくなるのではないかと思うほどの大量のフラッシュと「なぜ見殺しにしたのですか」「一般人を守ろうとは思わないのですか」と違反した男を擁護するような謎の声。答えはすでに言っているし、有言実行しただけだからと気にせず、会議室にいるギルドマスターに新種のドロップアイテムである糸玉を渡し、呼んでくれたタクシーで【STARS】の面々は帰るのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ