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過疎ダンジョンの人形姫、暇すぎて世界を救う配信者になるってよ  作者: ゼクスユイ


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16/21

第15話 人形姫、前倒しするってよ

 咲夜たちがカタコンペの中に中に入ってみると、そこはポイズンミイラやゾンビウルフといった地上よりも上位のアンデッド系モンスターが出てくるダンジョン。ただ、ダンジョンと言っても地下2階までしかなく、そこまで広いわけでもない。毒にさえ気を付ければ、初心者向けと言って差し支えないだろう。


(今はDランクやけど、こんなにも弱かったんか、ここのモンスターって)


(イメージしながら戦っているけど、強くなった気がしない)


「百合、イメージが乱れているわよ」


「あっ、ごめん。集中、集中」


(まずいわね。思っていた以上に百合も成長しているわ)


 百合たちの急成長に姫花の計画が追い付いていなかった。まだ慢心癖が残る二人をミノタウロスをぶつけるのは危険。だからと言って、このダンジョンでその悪癖を抜けるかと言われると怪しい。


(草津ダンジョンが使えたら、こっちで強さを調整したウルフの群れを増やすとかもできたけど、そうはいかなくなったし……そううまくはいかないわね)


 となればレッサーリッチとの苦戦具合しだいでは荒療治もやむなしだろうと、カタコンペ内を進むと、シャドーゴーストの群れが行く手を阻むように現れる。


【出たわね、初心者殺し】

【こいつ魔法しか通用しないからマジで害悪】

【あの手に捕まれると魔力減っていくし、最悪】

【こいつに魔法を使っていくと、リッチ戦で詰むんだよな】

【移動速度も速いから、逃げられないのもむかつく】

【懐かしすぎて涙が出る】


「って、ことはウチは役立たずやん」


「そんなこと無いわよ。強敵相手だと思って、剣を振るってみなさい」


「?ようわからんけど、分かったで」


 いつものように剣の刃に魔力を行き渡せてシャドーゴーストを斬ると、ドロップアイテムに変わる。あっけなく倒したことに、視聴者どころか斬った咲夜でさえ唖然とするレベルだ。


「一部例外はあるけど、ゴースト系は魔法攻撃しか通用しないはずよ」


「冥、じゃあ聞くけど魔法攻撃ってそもそも何?」


「文字通り魔法で攻撃することで……ああ、もしかして、そういうこと」


「ゴースト系モンスターは実体がないから実体のある攻撃が無効になって、魔力での攻撃しか通用しない。でも、今の咲夜は剣に魔力を帯びさせているから、実質魔法攻撃に等しいのよ」


【そんな裏技が!?】

【武装色の覇気!?】

【魔力のコントロール、くそ重要じゃねえか!】

【ワンピで見た!】

【覇気くらいに戦略を根本から変えているだろ!】

【育成学校、ちゃんと指導しろ!】

【学校も教えているよ、あくまで魔法を使うための一環だけど】


「ってことは普通に倒せば良いってわけやな」


「うん。一緒にやろう」


 防御力は紙装甲なシャドーゴーストに二人の攻撃を防ぐ手段などなく、蹂躙されていく。Dランクのパーティーとは思えないほどの快進撃にただただ驚くばかりである。


【これ、本当にD欄? B欄じゃねえよな】

【ギルドは何をしているんだ。さっさとランク上げろよ】

【HAHAHA、アニメガールの弟子たちも中々見どころがあるじゃないか】

【アニメガールwww】

【何一つ名前と被ってないのに誰か分かるwww】

【一人だけアニメキャラみたいな強さだしな】

【そのアニメキャラと渡り合って勝利した奴もいるぞ】

【そいつはアニメガール2号やな】

【2号の方が先だろうがwww】

【年齢的にはアニメレディだろ】

【アニメレディwww】

【黒魔女さんに新しい異名あらわる】


「人に変な異名つけないでくれる」


「あら、黒魔女は良いの?」


「まだ格好いいから良いわよ、どっかの勇者と違って」


【あっちも何一つ悪くないのに勇者呼びだもんな】

【パラディンとか聖騎士とかで呼んでくれないかな。今からでも遅くないよ】

【↑勇者のレス】

【このコメント書いたのぜってー勇者だろ】

【おめーは勇者呼びが定着したんだ、諦めろ】

【ひどくないかな】


「勇者ってそんなに強いの?」


「勇者と呼ばれるきっかけとなった淡路ダンジョンブレイクだと、当時20歳未満でありながら、獅子奮迅の活躍を見せた若きエース。今でも接近戦なら他の追随を許さない日本トップの冒険者よ」


「ってことは冥と同じくらいの年?」


「彼の方が2つ年上よ」


「へえ~ってことは肉体的にもほぼ全盛期。それはぜひともお手合わせしたいわね」


【本州の夏は暑いからね。できれば秋口の連休が良いな】

【勇者って隠す気ゼロじゃねえか】

【勇者なのに女子高生をボコるなんてサイテー】

【いや、模擬戦だからね。それに相手の了承を得てからやるよ。飛行機のチケット無駄にしたくないし】

【俺たち一般人と違ってチケット無料だろうが】

【庶民の味方アピールするんじゃねえ】

【いくら無料でも、税金の無駄遣いはしたくないだけだよ】


「ずいぶんと腰の低い勇者ね」


「冒険者はイメージ商売でもあるのよ。傲慢な勇者なんてそれこそラノベの世界にしかいないわ」


「世知辛いわね」


 シャドーゴーストを倒し切った二人がドロップアイテムを集めていると、百合が大声で何かを見つけたようだ。


「見て、見て!闇の宝玉落ちていたよ」


「レアドロップやん」


【杖を強化するのに必須アイテム】

【万単位で取引されている奴】

【まとめて買おうとすると、ためらう額になるから困る】

【低ランクのダンジョンからも落ちるからそこまで高騰しないけど、需要あるせいで安くもならない困った子】

【俺たちからちょっとした小遣いだけど、この子らにしたら大金だよな】

【マジで運が良い】


「今日は焼き肉や!」


「ダイエットなんて気にしたら駄目だよね」


【この子らはwww】

【JKがそういうこと言ったらアカンやろwww】

【一杯食って健康的に居て欲しい】

【推しが幸せならそれでOKです】


「それにしても、肉体の無い幽霊からこういった物が落ちるって不思議やな」


「ウルフから毛皮や肉、爪、牙が落ちるのは分かるんだけどね~」


「あら? そういうことも知らないの?」


【あっ】

【あっ】

【あっ】

【常識「あっ」】

【常識死す】

【常識還らず】

【さよなら、常識さん】

【お前らwww】

【何かを察するコメント欄www】

【訓練されすぎwww】

【だってよ、姫花がそういう反応するってことはそう言うことだろ】


「ものすご~く嫌な予感しかしないんやけど、今度は何を知っとるんや」


「ドロップアイテムの仕組み」


【/(^o^)\】

【\(^o^)/オワタ】

【常識さん……】

【学者さん……】

【おいおい、死んだわ】

【常識さんのお墓を建てるウラ】

【ま、まだ本当のことだとは分からないから】

【何言っているんだ、ただのJKの戯言だろ。戯言だよね?】

【HAHAHA、アニメガールはジョークもとんだクレイジーだぜ】


「……注目されとるせいで聞かざる得ないわな。ドロップアイテムの仕組みってなんや」


「そもそもモンスターは魔力で出来ているの。だから、ダンジョンブレイク時の特殊環境といった一部例外を除いたら魔力の薄い地上では生息することは出来ない(私は人形の身体と言う外殻と姫花の骸の二重防壁あるから平気だけど)」


【ゴブリンを連れ出したらすぐ死んだってのは聞いたことある】

【俺はスライムって聞いたかな】

【確か、遺体も何も残らなかったんだよな】


「モンスターを倒すと、体を形成していた魔力は大気中に放出される。そこで、思い出してほしいんだけど、魔力はイメージによって姿・形を変えることは言ったわよね」


「ええ、魔力の変換のことね。確固たるイメージを持っていると……ってことは!?」


「冥も気づいたみたいね。ウルフ、現実でも獣を倒せば毛皮や爪、肉……そういった物が手に入るという共通イメージがある。そのイメージと結びついたことで、大気中に放出された魔力は変換され、ドロップアイテムに変わる。つまり――」


 姫花が湧いてきたシャドーゴーストを剣であっさりと斬り倒すと、レアドロップであるはずの闇の宝玉がコロコロと転がる。続けざまに他のシャドーゴーストを倒してもコロコロ、コロコロと通常ドロップかのように落ちる。


「放出された魔力を完全に制御できるなら、狙ったアイテムを100%落とすことができるのよ」


【はあああああ!?】

【相 場 崩 壊】

【闇の宝玉、急落確定】

【宝玉さん、安くなって】

【FAKE MOVIE】

【チートやめろ!】

【チーターじゃねえか!】

【リアルTASさん!?】


「と言っても、私でもこうやって近づいてとどめを刺さないといけないし、Bランク以上になると放出される魔力が膨大過ぎて制御しきれないし、Cランクでも多少の運は絡むから100%ドロップなんて早々できないわよ」


【恐らく人類最高峰の魔力コントロール技術を持っている姫花ちゃんが制約付きで成功するレベルか】

【良かった。相場が破壊されることは無いんだね】

【姫花ちゃんが本気を出さなかったらな】

【出さないで】


「別にお金に困っていないし、説明するために狙ったものだから、これらは売るつもりは無いわよ」


【よかった】

【相場「セーフ」】

【狙って出せる情報が出た時点でアウトだろ】

【安くなることは間違いない】

【数か月後にはできねよーってなって、元に戻りそう】

【冒険者が無能かどうかに取引業者の命がかかっている】

【買いか売りか楽しくなってきました】

【とりあえず明日、環状線が止まるのは分かった】


 姫花の爆弾発言でコメント欄が阿鼻叫喚になっている中、あっという間にボス部屋にたどり着く。扉を開けると骸骨になった魔術師が髑髏のついた杖を振り回して、シャドーゴーストやポイズンミイラを召喚していく。


「レッサーリッチは自身の戦闘力が低い代わりに、雑魚モンスターを次から次へと召喚していく。対処が遅れたら、周りが敵だらけなんてなるから素早く対処すること」


「分かったで。百合、ウチがレッサーリッチまでたどり着くまでの道を作ってや」


「分かった」


 百合はイメージする。咲夜が通れる道を作れる魔法。昨日見た姫花と黒魔女の魔法合戦。その最中で打ち出される大魔法の数々。自分の実力ではまだ届かなくとも、イメージはできる。


「大地の精霊ノームよ、我が杖に宿りて、相対する者を貫け!アースランス!」


 イメージしたのは敵を撃ち貫く大槍。本来ならば複数本打ち出す槍が1本に集約され、眼前に展開していたミイラやゴーストを蹴散らしながら、レッサーリッチに迫っていく。


「ウガアアアア!」


 とっさに闇の障壁を出すも、貫通効果のある槍を防ぎきることは出来ない。アースランスに撃ち抜かれたリッチは倒れ、百合たちをスタート地点に戻しつつ、その眼前にアイテムドロップを残すのであった。


【はあ?】

【はあああ?】

【HAHAHAHA!】

【レッサーリッチがD欄の攻撃で一撃?】

【Dとは一体……】

【Bの下半分が消えていたとかいうオチだろ】


「……百合、咲夜、一つ言うわ」


「何言いたいかなんとな~くわかるけど、なんや?」


「計画前倒し。次からは第2ダンジョンに入ってミノタウロスを討伐するわ」


【残当】

【当たり前体操】

【ミノタウロスすら倒せそう】

【余裕じゃね?】


「一応、条件は付けておくわ。①私の助言は二人が倒してからする。斥候役は私がするけど、基本的には二人で相談しながら進む。②百合はミノタウロス戦のみアース系の魔法解禁。③夏休み中、ダンジョンに入れるのは3回まで」


「なんでダンジョンに入れる回数を決めとるんや?」


「何度でも挑戦できるなら、1回失敗しても次がある。次頑張ればいい。なんて思うでしょう。1回1回の探索に気を引き締めるにはこれくらいで十分よ」


「なるほどな」


「今の私たちならきっと行けるよ」


(ねえ、姫花ちゃん、ちょっと良い?)


(どうしたの、冥?)


(今の二人に梅田第2ダンジョンは危ないと思うんだけど)


(1回目の探索は盛大に失敗するでしょうね。下手すれば命に係わるミスもあると見ているわ)


(だったら……)


(私が居ればカバーはできる。悪癖の荒療治さえできれば、突破できるだけの基礎は教えたつもりよ。後は本人たちが気づくかどうか……2回目の探索でも失敗するようなら口出しするくらいはしても良いかもね)


(姫花ちゃんは教師やトレーナーに向いているかもね。卒業したら私の事務所に来ない?)


(あいにくどこかに所属するつもりは無いわ。模擬戦相手なら良いけどね)


(あらら、振られちゃった)


(本気でスカウトしようなんて思ってないくせに)


 黒魔女との念話も終わると同時に、配信も終わる。黒魔女はまだやり残してあることがあるらしく、これから九州に戻るらしい。大阪駅のホーム、通行人が立ち止まって写真を撮る中、姫花たちは彼女を見送る。


(盆に戻ってくるけど、その時は地元案内くらいするわ)


(楽しみにしているわ、冥)


 周りが騒いでいる中、念話で別れを挨拶をすます姫花と冥。ドアが閉まり、窓ガラスに映る彼女たちの姿がどんどんと小さくなっていく。


(パパ、ママ……大人になって初めて友達が出来たよ)


 年下といえども、自分と対等に渡り合える実力者。秘密を共有できる仲間。自分を哀れんだり、『黒魔女』という色眼鏡で見たりしない子……有栖川 姫花。


(姫花ちゃんと居る時だけ、素の自分が出せる気がするんだ)


 黒魔女は自分の身体をじっくりと見下ろす。学生の頃とは大きくかけ離れた、他人からは羨まれても好きに慣れない身体。知り合いは誰も居なくなって、好きだけど嫌いになった地元。楽しかった思い出は焼き尽くされ、うっすらと残る記憶しかない。

 もしかすると、彼女と一緒に居たらこの嫌悪感も消えるのだろうかと思ってしまう。でも、それはそれで彼女の好意を利用しているように見えて、より一層黒魔女は嫌悪感を強めるのであった。

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