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過疎ダンジョンの人形姫、暇すぎて世界を救う配信者になるってよ  作者: ゼクスユイ


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第10話 人形姫、喧嘩売られるってよ

 幾度かの警察、ギルド職員への事情聴取を終え、突発性ダンジョン(通称:神隠しダンジョン)は姫花たち【STARS】が解決したものとして発表。

 ただ、フロストドラゴンといったAランクのモンスターや魔王の力を得た雪女の存在は警察やギルド職員には一切伝えておらず、スノージャイアントをはじめとするCランク主体のダンジョンであったからこそ、彼女たちの力でも解決できたということになった。


「実際、ドラゴンとか倒したのはベルセルクさんやしな~」


「だよね。それ言ったら誰が倒したんだってなるし、言えるわけないよね。ベルセルクさんいなかったら、私たちみんな死んでいたよ」


「少し前に姫花がドラゴンソロ討伐したり、ウチが目隠しでワーウルフ倒りしたおかげもあってか嘘もバレへんかったしな。せや、聞こうと思って忘れていたんやけど、姫花とベルセルクさんってどんな関係なん?」


「私って身寄りが居ないのよ。そのせいで長らくダンジョン暮らしが長くってね。無免許だから、当然、人には言えないダーティーなことに手を染めたり……そんなときに出会ったのがベルセルクたちってわけ。男所帯のパーティーに年端行かぬ女の子が入ったら、そりゃあ姫様扱いよ」


「それもそうやな。何をしていたかはあえて聞かんけど、大変やったのは分かるで。そういうことなら、今回のことは心の中に秘めとくわ。百合もそれでええな」


「うん。聞かれたくないことの一つや二つあるもんね。それに見てよ、ネットだと私たち、ちょっとした英雄扱いだよ」


 事前に打ち合わせしておいた嘘を素直に信じてくれたことに安堵しつつ、百合のタブレット画面をのぞき込む。そこに映し出されているのは、直近の動画に書かれているコメント欄であった。



 23. あのとき、同じ電車に乗っていた者です。助けて頂きありがとうございます

 24. ニュースを見てチャンネル登録しました

 25. 次の動画マダー

 26. このコメントは削除されました

 ︙

 42. 26のコメ消されたな。やらせだのなんだの言いやがって

 43. 【朗報】公式発表で死亡者0。貴方達のおかげです

 44. 神隠しの犠牲者0は3年前のつくばと同じくらいの異業やろ

 45. あっちは24万人だからさすがに『名も無き英雄』と比べるのは失礼

 46. 久しぶりに聞いた。この子たちも彼を目指して頑張ってほしい



「最後は雑談みたいになっていたわね」


「それにしてもウチらが名も無き英雄と比較される日が来るなんてな」


「3年前の私たちに言っても、絶対信じてもらえないよね」


「(も~のすごく嫌な予感しかしないけど)名も無き英雄って?」


「知らんの? 3年前、つくばで発生した神隠しダンジョンをたった1晩で解決したにも関わらず、名乗り出ない英雄様や」


(その英雄様の一人が目の前にいるんだけどね)


「あのときはみんな冒険者になるってはしゃいでたよね。姫ちゃんって強いし、アングラみたいなことしていたんでしょう。英雄様のことなんか知っている?」


「ノーコメント。あの事件は公表できないことが多すぎるのよ」


「さすがの姫花もしら……ん? ってことは何か知っているってことやんけ! ジャンプしてみ、秘密の一つや二つポロッと落ちるやろ」


「カツアゲに応じるようなやわな女に見える?」


「どっちかというと絡んできた不良をカツアゲしてそうだよね~姫ちゃんの場合」


「ああ~わかるわ。って、それやとウチがしめられるやんけ!」


「咲夜ちゃん、ジャンプ、ジャンプ~」


「とんでも小銭しかでえへんわ!」


 二人のドタバタ劇に笑いながらも、姫花は3年前の出来事を少し思い出していた。



 3年前のある日の夜。アリスが西洋風の男性騎士姿のセイバーを作成していた頃、セバスチャンが慌てた様子で自分の作業場に走りこんでくる。


「大変です、姫様!」


「どうしたのよ、セバスチャン。こっちはもうすぐセイバーができるってのに……それともこの層近くまで人間が来たのかしら?」


「違います。ここを除いた関東のダンジョンで異変が発生しているんです」


「異変? 話を聞かせて」


 作業着姿からゴスロリ服に着替えたアリスはセバスチャンからの話を聞く。なんでも、関東中のダンジョンでモンスターが一斉に敵・味方問わず攻撃をしており、しかも、寝返ったモンスター同士は攻撃せず、実質第3軍といって差し支えないらしい。しかも、その第3軍は最下層を目指すグループと地上を目指すグループに分かれており、制圧しきれなかった場合、関東にあるダンジョンが一斉にダンジョンブレイクを引き起こす可能性すらある。


「考えられる理由は?」


「異常が発生したのとほぼ同時刻、つくば市全域を覆うような突発性完全閉鎖型のダンジョン、通称神隠しダンジョンが発生しています。関係性は不明ですが……」


「こういうときはあると考えましょう。無かったらまた考えればいいの。関東のボスモンスターたち全員に連絡付けるわ」


 アリスがダンジョンコアを操作し、ボスモンスターたちと話せるようにする。どこもかしこも、自分たちが作り出したモンスターでてんやわんやしているが、他のダンジョンの様子も気になるのは事実。短時間だけの会議が開かれるのであった。


「現状、一番怪しいのはつくばのダンジョンよ。神隠しダンジョンは正攻法で乗り込むことは不可能。人間たちはただ指をくわえて待つだけしかできない。だけど、私たちモンスターなら一つだけ方法がある」


【それが我々がイレギュラーモンスターとしてダンジョンに乗り込む作戦か】

【こやつらと手を組むつもりなど毛頭もない】

【そもそも過疎ダンジョンの主が主導を握っているが気に食わないズラ】

【それに反乱したモンスターを抑えるのが手一杯で……】


「手が足りないところは私の人形をイレギュラーモンスターとして送ってあげる。なんたってこっちは過疎地帯。18時過ぎたら誰も来ないから、戦力はあり余っているもの」


【だが、我らのようなモンスターがイレギュラーモンスターとして乗り込むとなるとそれ相応にポイントが……】

【復興のことを考えると、余計なことに消費したくない】

【雑魚人形が勝手にやってろズラ】

【人形貸してください、お願いします】


「あら、こっちが総取りしても良いの? 24万人が犠牲となっているならそのダンジョンポイントは膨大。何もおてて繋いで仲良くしましょうって言いたいわけじゃないの。これは競争よ」


(坐して待ってもいたずらにポイントを消費するだけ。彼女の言う通り、多大なポイントを消費して敵陣に乗り込めば、リスクはあるが、こちらが受けたダメージを上回るポイントを得られる。この益をみすみす見逃すのは愚かではある)

(競争となれば、足の速い私が有利。この勝負、貰った!)

(他の連中よりかは弱いとはいえ、出し抜くことができれば関東一のボスモンスターになることも夢じゃないズラ)

(僕の留守は彼女の人形に押しつければ……いや、それはなんだか不義理な気もするけど……)


「どう? 勝った者は関東の実質的な支配権を得ることができるこの競争に参加してみるって言うのは?」


【こちらが一方的にやられるのは好かん。良いだろう、その企みに乗ってやる】

【くだらない案だ(と言いつつ、手元で転送の準備を進めている)】

【売られた喧嘩は買ってやるズラ(戦闘はコイツらにある程度任せて、いいどこ取りしてやるズラ)】

【戦力借りますし、少しでもお力になるんでしたら】


「決まったようね。埼玉ダンジョンにはこちらから人形を送っておくわ。じゃあね」


 通信を切り、こちらも準備を進めていく。何しろこっちは自分一人、乗り込むことができれば、ダンジョン内で人形を召喚できる。要はダンジョンの全勢力を引き連れていけるのと同じ。つまり、攻略の基本たる手数でこちらが圧倒的に有利に立てるのだ。


(こちらが不利な交渉をするわけないでしょう。ポイントは胴元たる私が貰うのよ。それに、こんな事態を引き起こしたのは誰か分からないけど、過疎地域だからって私のダンジョンを省いた報いを受けると良いわ!)


 連絡が取れる者限定とはいえ、関東のボスモンスター総出でのダンジョン攻略。傍から見れば一見意味不明なこの状況下ではあるが、その動機が何であれ、人を殺すはずのモンスターが人を助けるという矛盾した行為が精霊の目につき、少し後に一騒動を起こすことになるのだが、それは別の話である。




(でも、3年前の事件はまだ終わっていなかった。ここ関西には知り合いのボスモンスターなんていないし、同じことが起きたら対処できるかは分からないわね)


 となれば、咲夜たちの強化という名目で近くの高ランクのダンジョンに潜りこみつつ、ボスモンスターたちと話をしてみるのも良いかもしれない。どちらにしても、大きく動けるのはもうすぐ来る夏休み。その到来を待ちわびているのかのように外ではセミが鳴き始めているのであった。

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