Ep.53 地上戦2
ガン!!!!
私の剣と、目の前の魔人の斧が、強くぶつかる。
ティアの足と私の剣の威力で、かなり強い振りになっている筈だが、軽々と斧で弾き返される。
「ッチ………このクソ筋肉が……」
「カミュちゃん、どうしよ〜!」
「そうだな……。」
私たちがここで止められていれば、10万と3万の数の差で叩き潰されて終わりだ。なんとか流れを作り出して戦局を変えようと考えていたのだが……なかなか上手く行かないな。
私の率いている軍は、私と共に魔人共の住む地獄のような土地を生き抜いて来た集落の者たちだ。平均的なランクは、Aにもなる。
全員がAやA+の超精鋭部隊なのだ。だから、3倍以上の相手を、ギリギリで抑えられている。
この魔人は……S+くらいだろう。そして、おそらくこの10万の隊長だ。
時間をかければ勝てそうだが、今は急がねばならない。早くしないと、囲い込まれて全滅だ。
「お前ら!!!!『三槍の陣』だ!!」
『オオオオ!!!!』
三槍の陣。文字通り、三つの槍を束ねた様な形の陣で、槍の先端に精鋭を置く。槍を刺し、槍と槍の間に入った敵を、両側から挟み撃ちにする、という仕組みだ。
「なんだぁ!?面白そうじゃねぇか!」
ここの目的は10万を抑える事だが、出来る事なら押し返したい。抑えて時間を稼ぎ、迷宮探索組の帰還を待つ……という事だが、10日以上はかかりそうだし、どうなることやら…
30分ほど打ち合っていると、目が慣れて来た。
「そろそろ、行くか。」
「わかったー!!」
再度突撃。
魔人の斧が正面から迫ってくる。ここで受け止めるのではなく、上手く見極めて受け流す。だが、これだけでは倒すほどの隙にはならないから……
「ガアァァァ!!」
ティアが魔人の足に噛みつき、動きを封じる。
「アア!?」
乗り物だと思っていた狼が、まさか攻撃してくるとは思わなかったのだろう。動揺している。
ここだな。
「死ね。」
右肩から袈裟斬り。
そして、去り際に心臓を突く。
「…ゴハッ…!」
ドサ、と倒れた。
「ふぅ……やっと倒したな。それじゃあ、ティア!」
「アオオォォォォン!!!」
ティアの遠吠え。それは、私たちの集落の者にとって、勝利を意味する。
『ウオオオオオオオオ!!!!』
一気に士気が上がった。敵将の首を取ったので、まぁまだ強い者はいるだろうが、かなり戦況は良くなっただろう。ただし、依然数の差は圧倒的なので、油断すると叩き潰される。
「後方!!斜陣を組め!!」
斜陣。隊を斜めに置く事で、5人に対し6人で攻撃出来る。それを、何度かに分けて相手にぶつけると、あたかも敵が倍増したかのような感覚に襲われる。
心理的効果しか無いが、大将を失った奴らには効果てきめんだろう。これでなんとか流れを変えたい。
「ふう………。他のところは大丈夫かな?」
アルマの隊
「マズいわね〜」
10万対2万5000。数の差が圧倒的過ぎる。こちらにはを使える者も多数いるが、魔人は皆を使うことが出来る。
魔族の軍の内、おそらく魔獣が7万、魔人が3万程度。魔獣はで消し飛ばせるが、魔人はそうはいかない。
弱くてもA−なので、私はともかく、魔法隊の者たちは、一体一体真面目に対応しなければならない。
魔人3万だけでも十分キツイのに、これは面倒だ。
一つ運が良いことがあるとすれば、スピカちゃんが大将を倒せた事だろう。
「頑張ったわね〜」
魔法通話でスピカちゃんと話す。
「頑張ったわね〜じゃないですよ…。」
——————
あ〜、あの人ホントに人使い荒いんだから……
こんなことなら北京なんかに来るんじゃなかった。推しのユウマ君の抽選100席限定オリジナルカードが貰えるって聞いて来たのに、嘘だったし。
それに、2万5000を率いるとか無理だ。
さっさと終わらせよう。
『オルカーン』
暴風。そしてそこに……
『ブラント』
爆炎だ。
ハリケーンくらいの大きさの、炎の渦。炎とは言っても、1000度はある。ユウマ君の抽選100席限定オリジナルカードの恨みを、晴らさせてもらおう。
さてさて、2万5000をどう使うか……。とりあえず、突撃?でも、魔法に巻き込まれると面倒だし……
私だけが奥に行って、みんなには普通に戦ってもらうか。拡声魔法で全軍に指示を出す。あ〜あ。私もアルマ先生みたいに思念伝達が出来ればいいんだけど。
『全員突撃ー!』
『オオオオ!!』
よし。それじゃあ私は奥に行こう。
10万の軍の奥に来て、またまた魔法を放つ。同じやつでいいか。
『オルカーン』
『ブラン……ぐっ……』
横から魔法が飛んできた。
「その魔法さばき、S+で人類最強の魔法使いというアルマと見た!手合わせ願おう!」
いやいや、私はA+だし……スピカだし。
「いやいや…」
「惚けてもむだだ!来い!」
ハァ……誰だコイツ。面倒だな。
『トート』
即死魔法だ。成功率が低いが、私はこれだけ得意なのだ。
「なっ……いきなり……」
しぶといな。
『トート』
「うっ………」
『トート』
『トート』
フッ……と下に落ちていった。
「やっと死んだ…なんだろう、復活とか系の魔法使いだったのかな…。」
下の方が大混乱している。聞いてみると、
「大将!どうされましたか!!」
「ハク様!大丈夫ですか!」
だって。大将、マジか。やったぜ。
それはそうと、魔力がかなり減ってしまったので、一旦前線に戻ろうか……。
——————
「しかしアレ、本当に大将なんでしょうか?流石に影武者とかだと思いますけど。弱かったし」
「そうかしら〜?」
スピカちゃんの得意な魔法、トート。もちろん私も使えるが、この魔法を防ぐ術は無い。出来ることは、事前に復活魔法を自分にかけておくこと。
これだけ強い理由は、成功確率が極めて低いからだ。私だって、1%にも満たないだろう。それを、彼女はほぼ確実に成功してみせる…
初見なら、私をも殺すことが出来る魔法使いだ。
ま、私は復活魔法をかけているから、倒すことは出来ないんだけどね。
「ふふふ」
「なんなんですか!それよりほら、戦況やばいので、手伝ってください!」
「ハァ〜、仕方ないわね〜。」




