Ep.44 魔物の軍勢
クロト達が迷宮に出発した頃、地上にて。
「ヴィザールさん…本当にこの作戦で大丈夫なんですか?」
「……問題無い。」
いやいや、問題多ありでしょう。
今回の地上における対魔人の作戦リーダーはヴィザール君になった。まぁそれは良い。実際実績はあるし、ランクもSと高い。ただ、人としての信用が無さすぎるのだ。
今回の作戦でも、谷に魔人達を誘き寄せて叩く、というものだが、地中や空から攻めてきたらどうするんだ、という話だし、そもそも崖上に配置する人数が少なくて、半分以上が別の所に置かれていて、一体何が目的なのか分からない。
「貴方、何がしたいの?」
「……食料は何処に閉まっている?」
「私の魔法空間よ。」
「ならいい。」
「谷で両側から叩くにしては数がイマイチですし、それにこんな所に兵を置かなくても……」
「周りを見に行ってくる。」
「あっ……」
ヴィザール君はシャル君を引き連れて何処かに行ってしまった。
「全く、何を考えているのか見当がつかんな。あれで本当に切れ者と言うのだから驚きだ。」
「あのひと、かおがこわい!」
「そうだな。もし何か会ってもアイツは私が殺すから大丈夫だぞ。」
「だ、ダメですよ仲間割れは!」
「それにしても、仲間にまで作戦を話してくれないなんて、何故なんでしょうか……」
「さあね〜。彼、慶ちゃんにも従わないし。」
本当に、彼は何を考えているのだろうか。まぁ、勝てるのなら何でも良いけど………
もし良からぬ事を企んでいるのであれば、私が消すのみだ。
「なぁ〜ヴィザールはん、あんためちゃくちゃ皆に怪しまれてんで。大丈夫なんか?」
「問題無い」
「それに俺にだけ作戦話してさ〜。俺そんなに信用あるかな、嬉しいわ。それゃあ説明せんかったら誰も納得せんよな〜あんな作戦。」
「………」
「ま、何でもええけど。で、今何処に向かってるん?」
「魔人どもの本軍だ。」
「は!?嘘やろ!?なんでそんなとこ行かなあかんねん、あんたアホやろ!捕まったらどないすんねん。」
「逃げる。その為にお前を連れてきたのだ。」
「ハアァァァ……ホンマ、思ってた以上に酷使されるわ……」
「位置の目星はついている。飛ばせ。」
「はいよ。」
そして。北京大迷宮から数百キロ離れた地点にて。
「おいおい………」
と言葉を失うシャル。
その眼前には、数十万とも思える魔物の軍勢が押し寄せていた。
「………奴らにとって、北京というのは余程大事な場所らしい。」
「…らしい、ちゃうわボケーーー!!どっ…ど、どないすんねん!!!早よ帰らなマズいぞ!」
「………」
魔物達をジッと見つめるヴィザール。
「…………なるほど、良いだろう。帰るぞ。」
「へいへい……」
「それは出来ないな」
背後からの声で後ろを向く2人。そこに立っていたのは、少年の様な魔人……クロトたちがイルクーツクで出会った魔人だった。
「なっ……誰やねんお前……」
「…………」
「すまんな。殺しは好きでは無いのだが、魔王様の命令だ。ここまで見られては、死んでもらう他無い。」
「ッチ…戦うしか無いってことか…」
「…フン。」
ヴィザールが、小さな魔力のこもったカプセルを投げつける。ピン、と糸で固定され止められた。
「おい、止められたとるやな…」
「馬鹿め、こっちだ。」
その手元には、同じような見た目のカプセル。ヴィザールがそれを潰すと、魔力の流れを妨害し視界も閉ざす煙幕が出た。
……霧が晴れると、2人は居なくなっていた。
「………」




