出発前夜
出発前夜。
あの会議の後、仕事を終えて会議室に行ってみれば、もうめちゃくちゃ。
アルマ君とオルカ君は大喧嘩して建物がぼろぼろだし、焉麒とカミュ君は呑み比べをしてベロンベロン。ヴィザール君はそもそも居なくて、まぁ元から期待はしていなかったが、案の定話は進んでいなかった。
結局作戦は決まらず、船上で決める事に。手紙でルミナス君も来れるのが分かり、少し安心した。
今日は、前回集まった、軍を率いる「幹部」の役割をするメンバー以外の、参加する全員が参加する食事会がある。
当然10万人全てを一つの会場に入れる事は出来ないので、10個ほどの会場に分け、内1つはS−以上の者のみでの食事会、飲み会だ。
なんとも高級そうな和食屋、「匠」という、世界最高峰の店……正直慣れない。
また予約時間に遅れ、アルマ君と大喧嘩になっては洒落にならないので、オルカ君を迎えに行ってから店に着く。30分前くらいに着いたが、貸し切りになっていたようで、スッと入る事が出来た。
座敷に座っていたのは、ヴィザール君のみ。かと思ったが、床で寝ている者がいる。自由だ…
「おうおう、無口のヴィザールじゃねーか。」
「…」
「む…無視…」
オルカ君がヴィザール君に突っかかっていたが、さらっと流されていた。
店員さんに案内されて、1番上方の席に座らせてもらう。すると、ヴィザール君が話しかけてきた。
「お前は、自分が10万の命を率いる事が出来る人間だと思っているのか?」
「そうだな…」
「聞き方を変えよう。この作戦に10万も連れていくべきだと思うか?」
「……それは、日本から北京までの状況による。魔人が太平洋に出ようとしている事を踏まえて、日本や中国沿岸部には魔物が多いから、精鋭数名では、体力が持たないだろあという算段だ。」
「本当か?飛空艇を開発出来るほどの技術力と、街や山を消し飛ばすような化け物が居て、突破出来ないのか?」
「……」
ヴィザール君の考えはもっともだ。だが、現在人間が使える魔法の中で、魔力量や気力を増やすすべはない。魔道具はほとんど国が保管している。多くの犠牲を出すかもしれないが、北京迷宮を攻略するにはこうするしか…
「おうおう、集まっとるのぉ!」
「みたいやね」
「おいしそうなにおいがするの〜」
「こらティアちゃん、走らない」
「間に合ったか。」
「みたいですね。良かった〜」
ジン君以外で来ていなかった幹部の皆が来た。先に会計を済ませていたジン君も来て、全員が席に着く。
「ん?なんだこのチビ。」
「ちびじゃないもん!」
「まぁ紹介は後で。とりあえず、食べようか!それじゃあ…」
『パン!』
と手を合わせて、料理を口に運び始めた。
「それで、このガキは誰だよ?あと、ずっと寝てるこいつ」
「口が悪いぞ。その娘は、ティアちゃんだ。魔素で変質した血でも、かなり特殊な一族で…。幼いように見えるが、というかまだ7歳だが、S−だぞ。」
「そうだよ!ティアもう7さい!」
「ふ〜ん。こっちは?」
「シュネー君だ。彼女はもS−。事情があって、基本寝ているから…彼女には、焉麒の副官をしてもらう。」
「副官?聞いてないぞ。」
「えっと、私から説明しますね。今回、ギルマス、アルマさん、オルカさん以外の4人。つまり、ヴィザールさん、カミュさん、ジンさんの4人に副官をつける事になっています。」
「自己紹介をどうぞ。」
ティアちゃんが、バッ!と立ち上がる。
「ティアです!がんばります!」
可愛い。というか、健気で純粋な感じが伝わる。
「ありがとうね。じゃあ次は…」
「俺やで〜。こんな可愛い自己紹介の後に話すのキツいなぁ。自己紹介やっけ。シャルや。よろしく頼むわ。」
「ありがとう。次はシュネー君だけど…」
「グゥ………グゥ………」
「………」
「……無理そうだな。」
「あとは、私ですね。リノです。今回の作戦の飛空艇開発も担当させて貰いました。それで、今紹介した4人が副官を担当するんですが…」
「ヴィザール君にはシャル君、カミュ君にはティアちゃん、ジン君にはリノ君、焉麒にはシュネー君だ。」
「なんじゃい。わしがこの寝てるガキの世話をせねばならんのか。」
「シュネー君は戦闘能力が無い。焉麒は頭使え無いだろ。手伝って貰え。」
「ガハハハハ!そう言われては敵わんな!」
「副官に兵を預けてもいいし、秘密兵器として置いておいてもいいし、切り口として突撃させてもいい。副官の使い方は隊長次第だ。」
「ひぇ〜こわいなぁ。ヴィザール君に突撃させられてまう〜」
「なんで俺らには副官が着いてないんだ?」
「S+以上の隊長に副官は要らないだろうな、と」
「あらオルカ、ビビってるの?」
「うるせぇ。」
「何か疑問があれば、食後に私かリノさんの所に来てください。」
「…それじゃあ、冷める前に食べようか!」
そうして、幾つか決定事項を話しつつ、前夜祭は静かに終わったのだった…




