Ep.30 来訪者
ガタンゴトン、と電車が走る。
と思っていたのだが、魔法で少し浮いているせいで、想像以上にスーーっと動く。楽なのは良いのだが、乗り物に乗ってる感が無くて、少し寂しくも感じる。
などと物思いに耽る余裕があるのは、やはりルミナスの索敵能力の高さだろう。
遠くの魔力を感じるのが得意だそうで、いつのまにかどこかに行って、いつのまにか帰ってきている。
「見つけた。殺してくる。」
と言って、電車から飛び降りて魔人を倒しに行くのだ。
そんな感じで、モスクワから出発して1日が過ぎた。
何も事件が無く、いや、トイレが無いという事故はあったが、とにかく暇。
ルミナスは屋根の上に座って周りを観察しているので、小瓶から魔人ちゃんを出し、体を回復させてあげて、一緒にトランプをしている。
体が戻った代わりに、普通の人間にも負けそうなほど貧弱になっていたが、泣きながら喜んでいた。
そんな生活も1日が限界だ。
「暇ーーーー!!暇すぎるぅ!」
「うるさいぞクロト。見つかったらどうする。」
「電車が走ってるんだから、声以前の問題でしょ。」
「外から見えなくさせる魔法を掛けてある。ただし、音は防げないから、大声を出すのは辞めてくれ。」
「都合が良いのか悪いのか分からない魔法だね。それはそうと、めちゃくちゃ暇なんだけど!何か無いの?」
「トランプを出してやっただろう。」
「私ポーカーとババ抜きしか知らないの!しかも2人でやったらすぐ終わるし。ゲームとか無いの?スマホ!Swatch2!」
「無い。というか、あってもネットに繋がらないだろ。」
「む。じゃあ何か無いの〜?」
「う〜ん…。何を持ってきたかな…」
ガサゴソと鞄を探すルミナス。お、これだ、と言って出してきたのは
「よし、本を読め。」
「ええ!?やだよ」
「魔導書だ。本を読んで魔法を覚えろ。習得に数年から数百年かかる魔法もあるが、レパートリーを増やしておく事に損は無い。」
「やだよ〜めんどくさい。一個一個解読して読んでいくの嫌なんだけど」
「ほら、『果物の皮を剥く魔法』と、『たくさん食べられる魔法』の魔導書だ。食いしん坊のお前にはぴったりだろう。」
「やかましいわい!」
楽しい列車旅が、勉強会に…
そう嘆いた時だった。
「ン!?」
とルミナスが右を向く。つられて私もその方向を見ると、何かがこちらに突撃してきているのが見えた。




