北京への行き方
ワシントンD.C.にて。
リノ君をリーダーとして、北京に渡る方法を探し始めてもうすぐ半年が立つ。向こうに行く事自体はもっと昔から考えられてはいたが、新しく開発する事になったので、急ピッチで作ったという訳だ。
こうなったのは、オルカ君が北京に行こうと言い出した割に、行き方を考えていなかったからなのだが、彼は全く研究に参加していない様だ。後で叱らねば。
これまで日本やユーラシア大陸に渡った時は、まだ温暖な時期が続いていて、陸路で進む事も出来たし、魔物がそこまで活発では無かったので、しっかり準備すれば海路で進む事も出来たのだが、近年は渡る方法が見つけられなかった。
ところが、先程リノ君から完成したとの報告を受け、今発表会へ向かっている最中なのだ。
ギルドを出て歩きながら、街並みを見る。魔物が生まれ、大慌てだった頃に比べれば綺麗になったが、やはり技術レベルはかなり低い。都心部という事もあり、世界中の人間が集まっているので、50階や60階立てのマンションなどはある。エレベーターやエスカレーター、ショッピングモール、コンビニ、スーパーなど、一見すると300年前と変わらぬ風景にみえる。
しかし、町の外に一歩踏み出せば、荒れ果てた土地が広がっている。これは、滅亡を防ぐために、1つの地域に物や人を密集させ、発展させるという政策によって生まれたもので、ワシントンD.C.やニューヨーク、ロサンゼルスを含め、格大都市は健在、どころか昔より発展している。
5億人が大都市にしか居ないのだから当然だろう。
などと考えている内に、会場に着いた。
かなり大きな会場で、熱気に溢れている。
フリーのコーヒーを嗜みながら待っていると、正面の幕が開いた。
「ご来場の皆さん、ごきげんよう。今回、北京への移動手段の開発で、監督を任されている、リノと申します。どうぞ、よろしくお願いします!」
自己紹介の様に話しているが、ある程度何かしらの技術開発に携わっている者で、リノ君の名を知らない者など居ないだろう。彼女は世界トップクラスの技術者だ。世が世なら、エジソンやニコラ・テスラなどと並び、教科書に載っていたであろう、そう思わせるほど、素晴らしい才能がある。
「早速ですが、今回私が開発した物、飛空艇の設計図をご覧ください。」
と言って、正面のスクリーンに映し出されたのは、かなり細部まで書かれた数枚の設計図。皆がじっと見つめ、しばらく沈黙が続いたが…
「なっ…全長400メートルだと!?」
「小さな町ではないか…」
「しかも、似た様な設計図が複数枚あるぞ!」
「どうなっておるのだ、リノ殿」
わっと歓声や驚きの声が上がったが、無理もないだろう。昔ならともかく、今の力で400メートルもの船を作り上げるとは。大戦艦を抱えて海を通るつもりなのか…いや、飛空艇と言っていたな。
「い、一旦落ち着いてください。えっと、順番に説明していきますね。」
ゴホン、と咳払いをして、次の画面に移った。これは、400メートル級の船の設計図の拡大版だ。
「こちらの船は、全長407m、総重量40万トンの飛空艇です。飛空艇というのは、海に浮かせる船ではなく、空を飛ばして進む飛空船のような物だと思ってください。」
と始め、細かい内部の設計を説明していった。私には全く理解出来なかったが、リノ君が説明する度、周囲から感嘆の声が漏れていた。
「当然ですが、一隻で行くのは危険が伴うため、この船を主艦とし、複数船を作っています。それが、こちらの設計図です。」
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「こちらは先程に比べると小さいですが、全長197m、総重量10万トンです。この船を3隻付け、計4隻で、『空から』北京を目指したいと思います。」
わああぁぁぁぁと、歓声が上がった。私も拍手をする。これだけの大きさがあれば、相当な人数を運べるだろうし、物資が不足する事も無さそうだ。
拍手喝采はしばらく止まず、その他細かい説明や注意事項などを発表し、その日の発表会は終わった。リノ君に呼ばれているので、舞台裏へ行き、彼女と話をする事にした。




