Ep.16 休暇
ぷっはぁ〜!
やっぱりお風呂上がりの冷たい飲み物は格別だ。出来ることなら牛乳が飲みたかったが、果物搾りジュースがなかなか美味しい。
柑橘系の果物だろうか。
「どうだ?美味いか?」
と、お風呂から上がったばかりの様なルミナスが尋ねてきた。片手にお酒を持ちながら歩いている。
「めちゃくちゃ美味しいよ!」
「それは良かった。初めて取った魔物の果物だったが、毒では無いようだな」
「ええ、私が毒味役だったの!?死なないんだからルミナスが飲めばいいじゃん!」
「毒味役というか、不味いのは嫌なんだ。飲める様で良かった。今度から携帯しておくことにしよう。」
「それはいいけど、なんで私を1番に飲ませるかなぁ…」
そんな私の愚痴を聴きながら、ルミナスは見てる方も飲んでみたくなる様な豪快な飲みっぷりで、ジョッキを一杯飲み干した。
「そんなグビグビ飲んで大丈夫なの?魔物が来たら戦えないよ?」
「私の経験則だが…ここに魔物がくることは滅多に無い。温泉の効果なのか、高所だから来れないのかは分からないが。」
「だと良いけど。」
「強力な魔物が出なければクロトが倒せば良いし、そもそも酔い潰れた私の方がお前より強い。問題無しだ。」
実際、ルミナスは強い。呑みまくってフラフラのルミナスですら、私が本気を出しても倒せないだろう。そのくらい、彼女の戦闘能力は目を見張るものがある。
おそらく魔素や何かしらの魔法による効果だと思うが、もし300年前にあの身体能力があれば、オリンピックの全ての競技で記録を塗り替えるのは間違いないだろう。
これでいて、ギルドの幹部では真ん中より下というから驚きだ。
そんなルミナスや彼女より強い人が何人もいて、全く勝てる気のしない魔族。彼らは一体何者なんだろうか…
そんな思いを抱きつつ、果実ジュースを飲み干したのだった…
そんな温泉でのごたごたもありつつ、この温泉地に来たのは休暇を取るためだ。あのヤバそうな魔人に殺されかけて、命からがら逃げ出してからというもの、毎日夢にあいつが出てきてあまり眠れていないのだ。
ルミナスも色々思うところがある様で、疲れた顔をしていた。
ということで、魔物がほとんど来ないというこの場所なら、枕を高くして眠れるだろうという算段である。
テントを張って布団をひき、横になってはみたが、なかなか寝付けない。となると、女子2人で始まることなんて決まっている。
恋バナ、だ。
「ねぇ〜ルミナス。恋バナしよ〜」
「寝かせてくれ。」
「私が寝れないからさ、いいじゃんちょっとだけ!明日すぐ出発するわけでもないでしょ?」
「仕方ないな…。恋バナ、か。何を話せばいいんだ?」
「恋愛話だよ。浮いた話の1つでも無いの?」
「そうだな…結婚はしたことは無いが、彼氏がいたことならあるぞ。」
「ええ、マジ?どんな人だった?」
「いたとは言っても300年前だしな。そこまではっきりとは覚えていない。確か、ウィリアムとかいう名前の男だった。」
「たしかって、もう覚えてないじゃん。」
「300年前の彼氏を覚えているほど未練がましい女では無いぞ。」
「そりゃそうか…。じゃあ、アメリカでは?そういう話は無いの?」
「いかんせん色恋沙汰には興味が無くてな。」
「ちぇっ、つまんないの…」
「そういうお前はどうなんだ?何かあるのか?」
「私はまぁ…あんまり覚えてないから…」
などと話し、眠りについた。言い訳では無いよ?本当に覚えていないのだ。
少しだけルミナスのことが知れたのかもしれない…




