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【三部連載中】魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
【イエロー編】時計ウサギと昼の月
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16 悪かったな、頼りなさそうで


 息抜きに外へ出た。

 久しぶりに集中した。いや、いつも集中していないわけではないが、朝から殆ど部屋にこもりっぱなしだったし、さすがにくたびれた。気分転換に小銭だけポケットに突っ込んで周辺をぶらぶらと歩く。


 外に出て早々に後悔した。ずっと部屋に籠っていたせいか、八月に入って更に猛威を振るう夏の太陽が目に刺さる。

 蒸し暑い上に空気が肌に張り付くし、眩しい。もう夕方五時回ってるぞ、もう少し日差しを落ち着けてくれ。


「あら? 英時君?」


 当てもないのでコンビニに向かおうと歩いていると、聞きなれた声が背後から投げられた。月島だ。

 どこかへ行った帰りなのか、何か用事があったのか。はたまた日常になってしまっているバイデントたちとの戦いがあったのか。

 今日はほとんどスマホも触っていないので、街で何が起きていたかも知らない。なんなら今だって家に忘れてきた。ベッドの上で充電が満タンになっている頃だろう。


「今帰り?」

「はい、英時君は……今日は学校ではなかったんですね」

「ん。一日二日サボったって問題ない程度には、ちゃんとやってるし」


 まぁ、月島には夏期講習の話はしていたしな。本来は今日も夏期講習があったが、まぁ今日はサボりというやつだ。とはいっても一日寝ていたわけではないし、一応目も酷使していたので傾きかけた太陽の光にやられているわけだが

 制服ではないのが気になるのか、月島がまじまじと見てくる。そんなに面白いものでもないだろ。


「なぁ。P5がなんで街を壊して回っているか、聞いたか?」

「……何度か、戦っている時に」


 ほんの少し月島の表情が曇った。自分で聞いておいてアレだが、悪いな。

 なんとなくコンビニまでの道のりを連れ添って歩く。


「クライドって奴に褒められたくてやってるらしい」

「そう、ですか」

「ンで、イノセントジュエルがあれば、プルートの奴らが助かるんだってさ」


 ゆっくりと月島が息を吐く。ジワジワとセミの鳴く声が響く住宅街は、この暑さのせいか、人の姿はない。

 この街の人間からすれば、P5もバイデントたちも街を壊す存在で、脅威でしかない。


 けれど俺たちはアイツを知ってしまった。

 戦うべき相手ではあると思う。でも月島は、P5と何か別の関係になれるのではないかという願いもある。

 そしてそれは、俺も同じで。


「プルートってのは?」

「彼らの世界のことです。そしてその世界は、あまりいい状態ではないらしく……」

「だから奇跡が必要、ってことか」


 どんな事情があったとしても物を壊すのは良くない。などと言っても、その理由が正しくP5に伝わるかどうか。だったら、もっと他のことでアイツの気を引いた方が、いいと思うんだよ。

 ぐだぐだとこっちの事情や、向こうの事情を聞いて、どうしたいかをすり合わせるよりも。P5はずっと考え方が幼いんだから、一度気を反らして、上手く誘導してやるべきだ。

 アイツは良くも悪くも純粋で、物の善悪なんて分かっていない。


 正直、一高校生のやれることの範囲は超えていると思っている。

 世界を救いたいなんて、そんな英雄願望もない。ただ、目の前で知っている奴が道を踏み外しているのを黙って見ているのは、落ち着かない。

 たったそれだけの理由で、世界だの魔法少女だの、壮大なファンタジーに足を踏み入れている俺自身も、どうかしている。


 それでも。

 なんて、いつから俺は熱血タイプになったんだ?

 たった数ヶ月の間に、すっかり、月島やP5に絆されてしまったらしい。


「街を壊さないでイノセントジュエルを探す方法はないのか?」

「……今のところ、わからないんです。チュチュも、あまりその辺りのことは話さないですし」

「ふーん」


 妖精、だったか? ファンタジーでよくあるお助けキャラ的なやつかと思ったけど、案外何の情報もくれなかったりするんだな。まぁ、他責していても仕方がないか。

 じっとりとした空気が肌にまとわりつく。なんとなく気分が重く、日差しが傾き始めてようやく鳴き始めたセミの声だけが辺りに広がっている。


「P5ってさ、ガキみたいな奴だよな」

「え、っと。確かに幼いところはありますが……」

「なら。なら、何もわかってないアイツだけでも、引き留められないか?」


 俺は魔法少女の事情も、クライドって奴の事情も知らない。だから、P5がいいように利用されているようにしか見えない。

 だったら、せめてアイツが自分で善悪の判断ができるようになるまで、可能な限り引き留めてやることはできないだろうか。


 そのための方法、というか、考えていたことはある。すでに手を出している。

 アイツは良くも悪くも単純で純粋だし、気を反らせばいい。

 既に一度、それでその日限りではあるが、街の被害を未然に防いだこともある。

 だから。


「少しだけ、時間が欲しい」

「英時君?」

「試すだけ、試してみる」


 目を丸くして、それから心配そうに月島がこちらを伺う。

 なんだよ、その顔。お前がその顔するのはおかしくないか?


「信じろよ、お前が言ったんだろ? 俺といる時のP5は悪さしないって」




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