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【三部連載中】魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
【イエロー編】時計ウサギと昼の月
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13 いつもと同じ朝


 さっき明けたばかりのカーテンから強い光が入って、早々に後悔する。随分とまぁ、天気のいい。

 夜の間降っていた雨はすっかり止んで、窓の外では楽しげに鳥たちが飛び回っている。腹が立つほど清々しい朝だな。


 もう少しベッドの上に居たい気持ちをこらえ、いやいやながらに朝の身支度をする。可能ならもう少し朝寝をしたいが、生憎今日は平日なのでそうも言っていられない。

 制服に着替え、脱ぎ捨てたパジャマを拾って自室を出る。階段を降りてリビングへ向かう道中に、洗面台に寄り道をして洗濯機の中にパジャマを放り込んで顔を洗った。


「おはよう、英時」

「はよ」


 リビングに入れば、いつものようにキッチンでぱたぱたとコンロとシンク前を行ったり来たりしながら弁当の用意をしている母さんがいて。ついでに机の上には、すでに出来上がっている朝食が並んでいる。

 いつもの風景だ。ただ一つ違うのは、自分の隣の席が空いていることくらいか。


「父さんは?」

「先に出たわよ。今日は朝から荻野さんが時計取りに来るんだって」

「ふーん」


 名前言われてもわからないって。母さんが知ってるってことは、昔から父さんの店を贔屓にしてくれている人なんだろうけどさ。俺が父さんの店に入り浸ってたの、何年前だと思ってる?

 とりあえずリビングの椅子に座って、机の上に用意してあるコップにお茶を注いで飲む。何だか今日の母さんは機嫌が良さそうだ。


「そうだ。聞いたわよ?」

「何」

「時計のお勉強頑張っているんだって?」

「……別に」


 何で知ってるんだよ。

 確かに昨日、家に帰ってきた後少し間、父さんに時計を見てもらった。結局あの時計の異音の正体は、何度も分解と組み立てを繰り返した結果、パーツの一部が傷んでいたからだと笑われた。

 雑に扱ったつもりはないが、それでも細かい傷はついていたらしい。あの不出来な時計を見ながら父さんに、何度も練習したのかと頭を撫でられた。


 ……別にこの年になって撫でられて喜ぶとか、ないんだが!? そもそも撫でられたのだって子供の頃に数度あったかどうかで、何なら俺もうすぐ十八だぞ。一体いくつに見られてるんだ。

 突然の子供扱いに苛立ちはないが、もやつきはある。いや、嘘だ。苛立ちもある。父さんに褒められた時、ちょっと嬉しかった自分に。褒められて喜ぶとか、ガキかよ。


「お父さんね、すっごく喜んでたわ」

「……そんなに?」

「うん。ここ数年はもう英時は時計に興味がないのかってずっと寂しそうだったんだから」

「さすがに言いすぎでしょ」

「そんなことないわよ。顔には出ない人だけど、朝も嬉しそうにしていたし」


 それで母さんも機嫌がいいのか? まぁ、二人が喜んでるならいいけど。

 いい加減、朝食を食べよう。まだ遅刻するほどの時間ではないが、食べた後の食休みもしたいし。


「ね。英時はお父さんのお店、継ぎたい?」


 母さんが、おかずを詰め終わった弁当箱を袋に入れながら俺を見た。


「それは、まぁ」

「そっか。ならお母さん応援するね」


 いつもの明るい口調で母さんが笑う。

 母さんが言いたいのは多分、進学についてだ。もう七月になったし、大学に行くなら、ちゃんと勉強もしておかないといけない。

 許してもらえるなら、大学か、専門学校に行って、時計について学び直したいとは思っている。


 昨日、父さんと時計を組み直した。時計を捨てそこなっていた時計の部品をいくつか入れ替えたところ、可笑しな挙動も異音もしなくなった。

 やっぱり父さんはすごいんだ。一目見ただけで、どこの歯車が緩んでいるかや、パーツの傷みを見抜いて、パッと代用の部品を探して来た。


 結果。俺の作った出来損ないの時計は、父さんの指示を受けながら組み直した時計になったわけだが、果たしてこれは完璧な時計と言えるのだろうか。

 俺にとって、時計とは完璧であるべきものだ。……それは、何を以てして完璧というのか。どうしてそれを求めるのか。わからないから、ひとまず手を動かす。


 時計屋の一人息子として、というのもあるがそれよりも、単純に俺がもっと知りたいと思った。

 時計のことも、父さんの仕事のことも。なら、俺がやるべきは。


「はい、お弁当できたわよ」

「ありがと」


 ふと、スマホの通知音が鳴って電源を入れる。SNSのトレンドニュースの紹介がポップアップ通知としてホーム画面に浮かんでいた。

 中身はいつも通り、最近流行りのアイドルの曲とか、どこかのタレントの電撃結婚だとか。そういうのに並んで、俺にとってごく身近で、出来れば遠くのことであってほしいようなバイデントが街で暴れて云々のニュースも入っている。


 一応、被害は出ているんだよなぁ。人が死んだ、っていうのは聞いてないが、壊れた建物を覆うように工事中の幕が張られているのだったり、避難中に転んでけがをしたとかはたまに聞く。

 そういうのを、P5と月島が、なぁ。


「携帯触っていないで、早く食べちゃいなさいね」

「ん」


 ぼんやりと画面をスクロールしていたスマホを机の上に置き直し、残りの朝食を食べる。

 作ってもらっているし文句とかは言ったことないんだが、機嫌がいい時の母さんってご飯盛りすぎる癖があって、朝にそれやられるとちょっときついんだよなぁ。



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