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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
【イエロー編】時計ウサギと昼の月
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10 できること、できないこと


 世の中には色々な奴がいるとは言うが、ここ一、二ヶ月俺の周りをうろちょろしている連中はいささか振り切れ過ぎていると思う。

 多分、物の善悪などわかってはいない子供みたいな奴と、良くも悪くも人の善性を信じている甘い女。

 悪いことではないが、世の中自分たちみたいな奴ばかりではないことも自覚してくれ。そして二人して、俺を見付ける度に嬉々として絡みに来るな。


 P5と月島に遭遇して以来、色々と振り回されている。

 バイデントという怪物の仲間を自称している奴と、それと敵対する魔法少女の一人であることを鑑みれば被害は軽微なのかもしれないが、俺の平穏な日常はお前たちとの出会いによって完全に壊れたと言ってもいい。


 今日も今日とて。P5がカーブミラーの上に登って、体を丸めるように屈み込み、鏡を覗き込んでいるところに遭遇する。何やってんだコイツ。

 毎回思うのだが、フェンスに挟まったり、電信柱を飛び降りたりと、わけのわからない行動ばかりしている。かと思ったら鳥や蝶に遊ばれて、足が絡まって転んでみたりと、お前本当にバイデントの一味なのかと問いただしたくなる。

 まあ、藪蛇を出したくないので実際に口に出したりはしないが。


「あ! エージ!」


 覗き込んでいた鏡越しに俺を見付けたのか、P5が声を上げた。

 くるりと、前転でもするかのようにカーブミラーの支柱を持ったままP5が体を宙に投げ出した。そのままカーブミラーにぶら下がっていた手を離し、綺麗に着地する。

 運動神経は悪くないのに、どうして隙間に挟まったり、足が絡まって転んだりするんだろうなぁ。


「時計見せて!」

「はいはい。ここじゃ邪魔になるから公園行くぞ」

「ハイハイ!」


 何が面白いのか俺の言い回しを真似してP5がケタケタと笑う。

 仕方なしとばかりに息を吐いて、目的地をいつもの公園へと変更する。肩を押しながら急かすP5を宥めつつ、然程学校とも、自宅からも遠くない公園のベンチに腰を下ろした。

 最近のコイツのブームは俺の時計を眺めることらしい。おかげで捨てるはずだった懐中時計は、いつまでもポケットの中の住人になってしまっている。


「ほらよ。手出せ」

「時計面白いねー」

「話聞いてねぇな、コイツ」


 ポケットから出した懐中時計を差し出しても、相変わらずP5は受け取らない。

 かわりとばかりに、俺の腕をがっしりと掴んで様々な方向へ頭を動かし時計を観察している。最近ずっとこれで、腕だけが筋肉痛になっているんだがどうにかならないか?


 キラキラと、ロウソクの火を瞬かせ時計を見るP5に幼少期の自分を思い出す。

 いつだったか、自分もそんな風に父の作った時計を見ていた時期があった。アレは一体いつのことだったか。


 最初にあったのは憧れのはずだった。黙々と時計を作る父親の背中に憧れて、父のような時計職人になりたいと思った。

 けれど次第に、煩わしいものになった。何度作っても、どれほど教えを乞うても。どういうわけか、父のような時計が作れない。

 作れば作るほど、粗や未熟さが目立ち、父のような才能はないのだと、思い知らされた。


 それでも、父の後を継ぐのは自分しかいなくて。父のようになりたくて。あの日の憧れを、捨てることはできなくて。

 ぐるぐると回る答えの出ない問題を、思考の渦から追い出すように頭を振るって息を吐いた。


「今日は一人か?」

「そー。リホ、作戦会議だって」

「やってること、筒抜けじゃねぇか」


 作戦会議って、普通敵対している相手に伝えるか? ……まぁ、月島なら言うか。正直そう言って笑っている姿が目に浮かぶ。

 P5もそう言われて素直に分かれるのもどうかと思う。いつものことだが、コイツら本当に敵対してるのか?


 一応、バイデントたちはイノセントジュエルなどいう物を探すために街を壊していると、月島は言っていた。

 だから、P5もそれに倣っている。はずだ。

 多分コイツは奇跡がどうとかではなく、単純に「探すと褒められる」とかそういう理由なのだろうけど。


「お前もイノセントジュエルってやつを探しているのか?」


 懐中時計を食い入るように見ていたP5が顔を上げた。

 不思議そうにロウソクの火が揺らめいている。


「んー。カロンとニクスは探してるよー?」

「仲間?」

「そう!」


 こっちも、情報が筒抜けなんだよなぁ。


「クライドって奴も?」

「クライドはねぇ、プルートを守ってる! いつも褒めてくれるんだー」


 ほら見ろ、言った通りじゃねぇか。

 P5は、でかい癖に子供っぽい言動が多い。だからきっと、コイツ自身に主体性はほとんどない。誰かに言われた、褒められるというのがP5の行動理由であって、それ以上の考えはない。


 ……だからといって、俺が現状をどうこうできるとも別に思わないが。

 それでもなんか、こう。上手く言い表せないが、微妙な気分になるんだよ。P5の扱われ方は。

 だって何も知らないし、善悪もわかってない奴を利用して、使っているってことだろ? それってかなりムカつかないか? いや、俺がP5のために何かしてやる義理もなければ、一般の男子高校生に怪物の社会情勢を正す術とか全くないんだが!


「お前、不満とかねぇの?」

「何それ、面白いもの?」

「面白くはねぇな」

「じゃあいらなーい」


 あーはい、そうですか。

 これで、何か愚痴の一つでも出てくれば、慰めるぐらいはしてやれるってのにな。

 マジでやってらんねぇ。



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