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【三部連載中】魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
【イエロー編】時計ウサギと昼の月
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07 出来損ないの時計


 今日も今日とてよくわからない変な奴らに絡まれている。

 P5を自由に走らせるにはもってこいの公園の、屋根付きの休憩所のベンチに陣取って息を吐く。暖かな春の日差しに晒されながら一口、コンビニで買った紙パックのジュースを飲んだ。


 なんで俺、こいつらとピクニックもどきをしているんだろう。

 いつもの通り月島とP5に絡まれて公園に来たまではいい。そこからどうして渡されるがままに、月島が家庭科の授業で作ったらしいカップケーキを食べているんだろうか。

 いや、ダメではないんだが。ちょっと平和過ぎねぇ? 一応、こいつら敵対しているバイデントの仲間と魔法少女なんだろ?


「リホ! これオイシイ!」


 にこにこと喜んでいるP5の横でチョコチップの乗ったカップケーキをかじる。まぁ、美味い。

 混ぜて型に入れて焼くだけという、おおよそ小学生でもできる工程の調理実習だが、月島が高校に入学してすぐのことを鑑みると、らしい内容なのかもしれない。


「オイシイ! エージ!」

「はいはい。美味い、美味い」

「ウマイ!」

「あらあら。溢していますよ」


 ぽろぽろと溢すP5に月島がポケットティッシュを渡す。

 ばかりとデカい口を開けて食べるかと思いきや、ちまちまとついばむように食べるP5に妙な感心をする。

 美味そうに食うなぁ。食べながら時折、左右からカップケーキを眺めている。よっぽど気に入ったのか。


 貰った分を食べきって、手に付いた油分を食べかすを払うために、ポケットに入れっぱなしにしていたハンカチを取り出す。

 カチャリと音がして、ハンカチを掴んだ手と一緒に硬い物が飛び出した。


「大丈夫ですか?」

「……ワリ」


 月島が拾ったそれを、できるだけ落ち着いて取り返す。

 ああ、そうだ。あの時P5に遭遇したせいで、すっかり忘れてしまっていた。あの日、この出来損ないを捨てようと思って校舎裏に向かったんだった。

 結果。出来損ないの時計を捨てることもできず、何ならわけのわからない奴らに絡まれる結果となった。


「なにそれ、見せてー」

「ダメだ」

「なんでー?」


 月島から受け取ったそれを、P5の視線を遮るように握り込む。


「懐中時計ですか?」


 まとわりついてくるP5を避けながら、ため息を吐く。

 拾ったのは月島なのだし、まぁ、蓋があるとはいえサイズ的にもわからなくはない、か。


「……そうだよ。捨てようと思っていたやつだ」

「それは、どうして?」

「失敗作だから」


 不思議そうな顔をした月島を前に、後頭部を掻く。

 多分。話したところで、月島なら悪いようにはしないだろうが……。


「俺の家、時計屋なんだよ」

「時計、屋さん」

「言葉に出して言われたわけじゃないけど、一人息子だし、いずれ後を継ぐことになるからたまに作っているんだよ」

「そうだったんですね」


 幼い頃からずっと、黙々と時計を作る父親の背中を見てきた。父のような時計職人になりたいと、思っていた。

 俺にとって時計は、完璧でないといけない。憧れであり、理想そのもの。


 だからこそ、俺の作った時計は失敗作だ。

 カチカチと、秒針は絶えず動いているがその振れは不安定で、微かに異音もするような気がする。

 作成の手順はあっている。パーツも、拵えも多分大丈夫。けれど何かが違う、何かが足りない。


「ふーん。……時計って何?」

「は?」


 大人しくカップケーキを食べていたP5が、奇妙な物を見る目で口を開いた。

 ……いや、そうか。バイデントの世界と俺たちの世界では、社会常識も違うものか。時間の概念がないわけではないだろうが、それを計測する器具がない可能性はあるかもしれない。


 この間の、あのバイデントが消えて行った謎の黒い空間の向こうが、P5の本来の世界なんだ。

 何もかもが違う世界の存在なんだよなぁ。


「時間を測る計測器ですね。P5の世界にはないんですか?」

「知らなーい」


 これどっちだ? 本当にP5の世界に無いのか? それともマジでP5が知らないだけか? 

 勝手に俺の手を捕まえてムリヤリ指を開けようとしているP5に、諦めて手のひらを開く。

 カチカチと、異音を含んだ音を立てる時計がそこにあった。


「動いてる!」


 人の手のひらを掴みながらP5がぴょんぴょんと跳ねる。おいこらやめろ。テンションが上がったのか、パチパチと火の粉が舞っていて危ないんだよ。

 何が面白いのか、月島も俺とP5の様子を見てにこにこと笑っているし。


「すごいねぇ、おもしろいねぇ」

「えぇ、本当に。英時君が作ったんですよね? すごいです」

「ね! エージすごい!」


 こんなものの、何がいいんだ。秒針の振れも歪で、すぐに正確な時間を示さなくなるのは目に見えている。

 時計というのはもっと完璧な物でなければいけない。時間は誰にでも等しく過ぎて行くものだ。もっと正確でなければいけない。

 にもかかわらず、こいつらは出来損ないの時計を見て笑うのか。


 あー、嫌だ嫌だ。

 こいつら変な奴だけど、妙に天然で純粋なんだよ。

 だから、嫌でも言葉に裏がないのがわかってしまう。


 この時計は、俺にとっては何度目かの失敗作なのに。

 そんなにいい物じゃないのに。


 どうしてこの二人の目に映っている時計は、価値のある物に見えてしまうのか。



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