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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
【イエロー編】時計ウサギと昼の月
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05 無関係でいたいんだが?


 P5は変な奴だ。

 変な奴だが……、訂正やフォローの入れようもないくらい変な奴だ。


 そもそもフォローを入れろっていう方がムリだろう。会う度に何かに挟まっていたり、けらけらと笑いながら虫やら動物やらを追いかけては逃げられているんだから。

 縦にひょろ長い癖に、やっているのは子供みたいな行動だ。アイツの精神構造なんてまるで興味はないが、裾の長い上着が地面に擦れるのも気にせずしゃがみ込む辺り、中身は子供と見ていいだろう。


 なんというか、ちぐはぐなんだよな。P5って。

 こう、一見して執事みたいな堅苦しい服装をしているのに、よく見れば服の端々がほつれたり擦り切れたり。果ては穴が開いていたりもする。


 まぁあいつも、怪物の仲間らしいし、戦っている間に服が傷んだりもするのだろう。

 P5が戦っている姿など全く想像できないが。


 だってそうだろう? ニュースだのなんだので騒がれている怪物ってのは、街を襲う存在で、P5はそういう物とはかけ離れた精神性をしている。

 だから、そういう奴らからも、切り離された存在だと思っていたんだがな。


「あれ? エージだぁ」


 目の前にはムダにデカい怪物の肩に乗ったP5が、俺を見下ろしている。

 映像の中でしか見たことのないようなそいつは、黒く大きな体に鋭い爪、赤い眼光を光らせている。


 多分、一振りで簡単に街を壊せるだろう爪は、少しばかり浮かされて、いつでもこちらへ振り下ろす準備はできているようだ。

 よくこの爪で、死傷者を出さずにいられたものだな。日頃の避難訓練と防災放送の賜物か? というかコイツ、本当に怪物の仲間だったんだな。


「何してるのー?」


 どうする? と、でも言いそうな怪物をムシしてP5が俺に声をかけてくる。P5の態度はいつも通りなのが、余計にうすら寒いものを感じさせた。

 不思議そうな顔しやがって。こういう状況になった時、人がどう感じるかなんて微塵もわからないんだろう。


「エージ?」

「……よう、とりあえず降りて来ねぇか? 見上げんの、首いてぇんだよ」

「わかったー」


 微かに震える声で、精一杯強がってみる。口角を上げてもみたが、頬の筋肉が突っ張るばかりで上手く笑えていない気がした。

 それでもP5は、怪物の肩を降りようとするのだから素直にもほどがある。もうちょっと疑った方がいいぞ、仮に怪物の仲間だっていうんならさ。

 俺としてはそのまま呑気に過ごしてくれていた方が助かるが。


「……そいつ、何?」

「エージ知らない? バイデントだよ」


 ひょいっと怪物の肩から飛び降りたP5が首を傾げた。

 小器用に、ロウソクの上に灯った火がゆらゆらと揺れている。


 これが噂の怪物ね。そういえばP5と月島の会話の中にそんなような名前が出てきたような気がする。

 あの時は自分には関係ないし、関わることもないだろうと、気にも留めなかったんだったか。……フラグ回収するの早くね? もうちょっと猶予というか、潜伏期間を設けようとは思わねぇの?


「壊すのか? 街を」

「ウン!」


 あーハイハイ。子供らしく無邪気な返事しちゃって。勘弁してくれ。

 何だったか、話半分に聞いていたが、誰かに褒められるんだったか? まぁそうだよな。コイツの仲間は何とかジュエルを探して街を壊していて、コイツはそいつらを慕っている。

 ならそいつらに褒められるために、P5は街を壊そうとする、か……。


「あー。なぁ、今日は他のことをしないか?」


 別に、この発言に深い意味はない。

 月島のように住んでいる街が壊されたくない、なんて正義感からの言葉ではない。本当のところを言うなら、自分でもどうしてそう言ったのかすら、わかっていない。


 ただ、焦りにも似た何かが胸の内にあって、P5の後ろで今か今かと鋭い爪を待機させている怪物に襲われたくないのはもちろんだが、なんとなく見たくなかったんだよ。

 コイツが笑いながら、街を壊しているところを。


「他のこと?」

「あぁ。なんか、ほら。楽しいこととか」

「楽しいこと? やる!」


 ぱっとP5の声色が明るくなる。生憎ロウソク頭なので表情らしいものはないのだが、代わりに頭の火がしゅぽしゅぽと元気よく燃えているので不満ではないのだろう。

 ほんの少し軽くなった胸の内に、何を安心しているんだと、妙な心地の自分に言い捨てる。


「おう、じゃあ公園行こうぜ」

「うん! あ、お前もう帰っていいよ」


 困ったように目尻を下げた怪物改めバイデントに視線を向ける。悪いがP5の言う通り、帰ってくれな。さすがに身の危険を感じながら、これ以上の会話を続けるのは勘弁なんだわ。

 仕方なしとばかりに、バイデントがどこからともなく現れた謎の黒い空間の中へ帰っていく。

 一応、これで危機的状況は脱したのか?


「ほらほら、早く行こうよー」


 ウキウキで肩を押して、公園へ向かおうとするP5に、そっと息を吐く。

 つか、アレにこの街が襲われてるの? 人間勝ち目なくね? だから魔法少女がいるんだと言われればそれまでなんだが。

 ……月島の奴、普段あんな奴らと戦っているのか。


 別に。怪物だとか、魔法少女だとか。俺には関係のない話だと思っていたんだがな。

 俺はなんだってこう、おかしな状況に巻き込まれているんだ。

 マジでいい加減にしてくれ。



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