04 午後三時三十分、公園にて
高校の校舎裏で奇妙な奴らに遭遇して早一週間。
もう一週間経ったと言えばいいのか、一週間しかっ経っていないと言えばいいのか。とにかくこの一週間は怒涛だった。
一度学外へ出ればどこからともなくP5が現れ、へらへらと笑いながら絡みついてくる。ある時は上から降ってきたり、またある時は生垣に絡まっていたりと、様々な遭遇の仕方をしたものだ。
その度にその度に手を貸してやったり、説教したり……。あの場限りのつもりだったんだがなぁ。
唯一の救いと言えば高校に奴が入って来ないことだな。聞けば、「学校内には勝手に入ってはいけない」とあの魔法少女、月島に言い含められたらしい。
そこ、手綱握れるんだったら学外でも絡んでこないようにしっかり言い聞かせておいてもらえませんかね。
そうして学外ではP5に絡まれ、学内ではいつの間にか視界の端に月島がいたりと、奇妙な奴らに絡まれる一週間が過ぎたわけだが。
なんで俺は学校帰りに公園のベンチで月島と並びつつ、公園の遊具ではしゃぐP5を眺めているんだ? まるで意味がわからない。
五月の暖かな日差しは、ベンチを覆うように建てられた屋根のお陰でいくらかマシになっているが、目を刺すように眩しい。
滑り台を転がったりジャングルジムで絡まったり。春先にしてはかなり気温が高いというのに、全く元気なやつだな、あのロウソク頭は。
ご機嫌なのか、ロウソクの火がしゅぽしゅぽと元気よく灯っている。アレは表情の代わりなのか?
何度か帰ろうかと立ち上がったが、その度に目ざとくP5に見つかり、このままでは家まで付いてきそうなので、何もできないまま屋根付きの休憩所に腰を下ろして今に至る。
結局やることもないので、コンビニで買ったパックジュースを飲みつつ、隣にいた月島に視線を向けた。
「お前ら、敵同士なんじゃねぇの?」
初めて遭遇した時と変わらずのほほんとした顔でP5を眺めている月島に声をかければ、それこそ驚いたように目を丸くして俺を見た。
そんなにおかしなこと聞いてねぇだろ。P5は怪物の仲間で、お前は魔法少女なんだし。
「バイデントが街を壊すので」
「壊すと褒められるからー」
「うおっ、急に出てくるなよ」
つい先ほどまでジャングルジムの頂上で空を見上げていたはずのP5が、背後からのしかかるようにして姿を現す。
なんでいつも人の上に乗ろうとするんだ、重いんだよ。あとそのまま人の上で会話を続けようとするな。
「あら、褒められるんですか?」
「うん! クライドが褒めてくれるんだー」
いがみ合えとは言わないが、なんで仲が良いんだか。
それだけ言って満足したのか、単に目の前をひらひらと横切った蝶に気を取られただけか。呑気に蝶々を追いかけるP5に「転ぶなよ」とだけ声をかけ、改めて月島に疑問を向けた。
「結局何なんだよ。怪物も、魔法少女も」
「何、と言われるとちょっと困りますね。私もわかっていないことが多いので」
「わからないまま戦ってんの?」
「ええ。誰だって、住んでいる街を壊されるのは嫌でしょう?」
それは、まぁそう。
月島曰く、他の魔法少女の戦いを目撃し、そのまま素養があるとかでうっかり魔法少女になってしまったのだとか。そんなうっかりあってたまるか。
まだ月島の方が話は通じるが、それはそれとして変な奴でもあるんだよなぁ。
「あぁ、でも。チュチュが言うには、バイデント、所謂怪物たちはイノセントジュエルという奇跡を起こす鉱物を探しているそうですよ」
「イノセントジュエルねぇ。チュチュってのは何?」
「可愛いウサギの姿をした妖精ですよ」
「やっぱそういうのいるんだ」
にしてもイノセントジュエル、か。……奇跡とか、ファンタジーじゃねぇんだから。怪物だの魔法少女だの、充分ファンタジー世界の住人ではあるが、これ以上不可思議な要素を現実世界に持ち込まれてたまるかよ。
そもそも触れ込みが子供だましのようなものだろう。そんな都合のいいものなど存在するわけがない。
そういえば月島が隣で、困ったように笑った。
「まぁ確かに、本当にあるのかもわからないものですけど、バイデントたちが街を襲ってくるのは変わらないので」
「ご苦労なことで」
全国各地に現れていた怪物が、少し前からこの街に重点的に現れるようになったらしいが、その辺りで月島は魔法少女になったってわけね。
しかし、だ。ニュースやSNSの動画で時々怪物が街で暴れている様子は見るが、そいつらとP5が仲間だとか、正直信じられないんだが?
だってアイツ今、蝶に遊ばれてるぞ? あ、足絡まって転んだ。
あんなのに襲われている時点でちょっと街の方にも隙があるんじゃないかと思うわけよ。
今のところ建物を壊される被害はあるものの、人が死んだ、なんてニュースは聞いたことがないし、案外どうとでもなるんじゃないのか?
頻繁に避難訓練と避難所の位置確認をさせられて、疲弊しているんだが?
「ひらひらの奴、どっか行ったー」
ふらふらと、P5がベンチまで戻ってくる。心なし頭の火も力がなくしょんぼりしているようだ。蝶に遊ばれて落ち込めるぐらいには怪物って脅威でも何でもねぇんじゃね?
呑気そうなP5と、戦いとは無縁そうな梨穂を見てため息を吐く。
案外、平和そうで何よりだよ。




