表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
【イエロー編】時計ウサギと昼の月
PR
86/123

03 説明書を添付してくれ


 一度、状況を整理しよう。


 野暮用で焼却炉に来たら明らかに人間ではないロウソク頭がフェンスに首を突っ込んで動けなくなっていた。

 よせばいいのに、それを不憫に思って助けてやろうとしているところを、同じ美空高校の後輩らしい女子生徒に目撃された。


 その時点ですでに腹がいっぱいなのだが、どうにも助けてやったP5と名乗るロウソク頭は、実は怪物の一味で、街を壊す存在らしい。

 本当にコイツが? フェンスに頭を突っ込んで動けなくなるような奴なのに? と顔を引きつらせる俺を他所に、隣で訳知り顔をしていた女子生徒も自己紹介をするのだ。


「美空高校の一年、月島梨穂です。魔法少女、プリズムトリニティをしています」


 ちょっと待て。


「は? 待て、魔法少女?」

「はい。聞いたことありません? 最近ちょっと世間をお騒がせしちゃっている魔法少女です」


 ……魔法少女ってアレだろ? 数ヶ月前から、街に現れ出した怪物を倒して去っていくっていう、正体不明の女三人組。自分たちよりもでかい怪物相手に武器だのビームだのを出して交戦している存在。

 怪物から街を守ってくれているのは有り難いが、その魔法少女が、コイツ?


「……そういうのって秘密にするもんじゃねぇのかよ」

「どうなんでしょう? なんとなく誰にも言わずにいましたが、話してはダメとは言われていませんし」


 いい、悪いの問題でもないんだが? パッと見普通の、女子生徒にしか見えないのに、マジで何を言い出すんだコイツは。

 そもそも怪物も魔法少女も自然発生するものではないだろうし、何かしらの伝達があってなるものでは? 伝達してきた奴にルールとか聞かなかったのか? 今時、PDFとかで説明書もらえねぇの?

 いや別にそこまで関わる気もないので、詳しく知りたいわけじゃねぇけど。


「リホ、プリズムトリニティなのー?」

「そうですよ。イエローなんです」


 和気あいあいとするな、敵同士だろ。

 どちらも正体を隠す気すらなく、正体を知ったところで気にするでもなく。街を壊す怪物の一味と、それと戦う魔法少女がのほほんと話している風景を眺める一般人の心情を十字以内で答えよ。

 マジで意味わからん。


「君はー?」


 肩を落としていると、不意にロウソク頭がこちらを向いた。正直、こいつの顔にあたる部分は全部ロウソクだし、口らしきものしかないので本当にこっちを見ているのか怪しいが。

 兎にも角にも、P5と名乗ったそいつがおかしそうに笑いながら上からのしかかるように体重をかけてくる。

 やめろ、お前でかいというかひょろ長いし絡みつかれると鬱陶しいんだよ。


「重い、寄りかかるな」


 ケタケタと笑うP5と困ったように笑う自称魔法少女にため息を吐く。なんだってこんなに絡まれてるんだよ。

 覆い被さるように体重をかけてくるロウソク頭を押し返しつつ声を上げるも、びくともしない。コイツ力強いな。


「柊英時、三年」

「じゃあ英時君ですね」

「エージ!」


 一応先輩なんだが? と、思いもしたが、口を開くと面倒なことになりそうだったのでだまっておく。

 人の上で話すロウソク頭の怪物がどのようにして声帯を振るわせているのかも気になりはするが、今はこれ以上余計な情報を頭の中に入れたくない。

 聞いたら聞いたで、余計に絡んできそうなので。今度こそ切りのいいところで退散しよう。


「リホは何してるのー?」

「ゴミを捨てに来てたんですよ」

「ふーん?」


 ゴミ袋を掲げる自称魔法少女の女子生徒に、よく普通に話ができるなと視線を向ける。

 にっこりと、慈愛の笑みを向けられた。そんなに話せるなら、コイツ引き取ってくれねぇ?


「エージはー?」

「あ? 俺もそんなとこだよ」


 どうせ何を言っても暖簾に腕押しなので、この場限りだと諦めて当たり障りのない回答をしておく。

 ため息交じりの返答も何のその、何やら次の話題に移り始めた可笑しな奴らに肩を落とした。


 最初から見ないふり、とまではいかなくとも早々に退散すればよかった。妙な仏心を出すから変な奴に絡まれるんだ。

 今後、戒めとして心に刻んでおくのでこの辺りで解放してはくれないか? そうか、ダメか。


「エージとリホはいつもここに居るのー?」

「そうですよ」


 ……なんだか頭が痛くなってきた。そろそろ切り上げよう。

 いくら間の抜けた怪物だとしても、そう毎回フェンスの穴に首を突っ込んで動けなくなることもないだろうし、魔法少女を自称する女子生徒も学年が違うからそう会うこともないはずだ。


「おら離せ。俺はもう行く」


 絡みついているP5の腕をムリヤリ剥がし、女子生徒の方に押し付ける。通りすがりの一般人に怪物も魔法少女も手に余る。あとはそちらの方で、勝手にやってくれ。俺は一般人なので退散する。

 P5の手が離れればこっちのものだ。不自然にならない程度に早足で校舎裏を離脱する。


「あら残念」

「またねー」


 後ろから不穏な声が聞こえたが、この際ムシだ。

 まかり間違っても「また」はない。ないはずだ。


 この街には頻繁に怪物が現れているし、魔法少女を名乗る女子生徒が同じ高校の中にいるが、学年が違えばそう会うこともないはずだ。多分。

 ……一応、当分の間は焼却炉に近付かないでおこう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ