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【三部連載中】魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
【イエロー編】時計ウサギと昼の月
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02 怪物と魔法少女。あと一般人。

 目の前にはこちらを見たまま若干引いたような、怪訝な表情をする女子生徒。

 反対側にはフェンスの穴に首を突っ込んで抜けなくなったロウソク頭。

 誰かこの状況を正確に説明できる奴がいたら名乗り出てくれ。いや、正確に説明されても余計にややこしくなりそうなので、出てこられても困るのだが。


 とにかく俺はこの首を突っ込んで動けなくなったこのロウソク頭を助けているだけの善良な一市民だということをここに表明しておく。

 だからそんな不審者を見るような目を向けるな。


「あ、抜けたー」


 ぐいぐいと、フェンスの針金を広げていた手を離せば、ロウソク頭が間の抜けたような声を上げた。

 スポンッと、それこそ漫画的な擬音が鳴りそうな勢いで、穴の中から無事に脱出したロウソク頭が嬉しそうにフェンスの向こうで小躍りをしている。

 よかったな。ついでにこの状況についてあの女子生徒に説明してくれないか? このままだと、俺まで変な奴だと認定されたままになるんだが?


「穴にはまって、いらっしゃったんですね」

「あ、ああ。何かの動物を追いかけていたらしい」


 ひとまず自由になったロウソク頭の事情を女子生徒に説明して、自分は無関係であるとアピールしておく。

 あくまで俺はたまたま通りかかっただけ。善意で手助けをしようとしたが、それ以上の関係はない。何なら今すぐ、ここを離れたって何の不都合もない人間だ。


「お知り合いで?」

「いや。ここで初めて会った」

「そうなんですか」

「ねぇー、ひらひらしたのがいるよー?」


 おい待て、そこのロウソク。その調子でまた変なところに突っ込んで動けなくなるとかやめてくれよ? どうせ今みたいに興味の赴くままにふらふらしてフェンスの穴に首を突っ込んだんだから。

 正直、自分でも状況を正確に説明できているとは思えないので、この説明で納得する女子生徒の方も心配になる。いや、納得してくれてありがたくはあるんだが。


「そっち行ったー」

「待て待て、また穴に首突っ込むなよ」


 猫の次は蝶かよ。再びフェンスの穴に手を突っ込んで蝶を掴もうと、手を伸ばすロウソク頭に呆れる。このままだとまたフェンスの中に頭を突っ込みかねない。

 完全に解散し損ねたな。


「届かないー」

「上から登れませんか?」

「そっかー」


 女子生徒の問いかけに、ロウソク頭が嬉々とした声を上げてフェンスを見上げる。

 あまり良くない提案だが、フェンスの穴を広げていた俺が指摘できることでもない。


 シャカシャカと、虫みたいな動きで三メートルほどのフェンスを登り切り、フェンスの上からこちら側へ飛び降りてきた。キモイな、おい。

 まるでどこかのスーパーヒーローのように地面に着地すると、ロウソク頭は一度立ち上がって「どーだ」とばかりVサインを向けてくる。はいはい、すごいすごい。


 かと思えばよろよろとしゃがみ込み、着地の際に地に付けた膝をさすっている。あぁ、やっぱり痛かったんだ。一応それなりに高さのあるフェンスだもんな。

 明らかに人ではなさそうだが、ちゃんと痛覚はあるらしい。


「こんにちは」

「なぁに? それ」

「会った時の挨拶ですよ」

「ふーん。コンニチワ」


 緩いなぁ。一応このロウソク頭って怪物の仲間なんだろ? ニュースやSNSに書いていることが本当なら、それなりに被害を与えている存在のようだが、なんでこんなに気の抜ける奴なんだよ。

 え? こんな奴に俺ら襲われてんの? 今のところ死傷者はいないらしいけど、こんな奴にやられるのはちょっと尺なんだが?


「最近街で暴れているのは、あなたのお仲間ですか?」

「そーだよー?」

「そんなあっさり」


 こういうのって秘匿するものじゃねぇのかよ。こう、誰にも知られずこっそり人間社会に混じって、みたいなのが普通だろ? 違うの? つうか、この女もぐいぐい踏み込んでいくなぁ。

 あっさり怪物の仲間だと認めたロウソク頭もロウソク頭だが、一般的な女子ってそういうの、怖がるもんじゃねぇの?


「あなたも街を壊して回るつもりで?」

「うん!」


 元気な返事だなぁ。なんで普通に会話を成立させているんだよ。

 街を壊して周る怪物と女子高生の邂逅とか、漫画とかフィクションの中だけの話にしてくれ。誰もそういうのを現実で求めてねぇんだよ。

 ただでさえ怪物が街で暴れるから、交通規制で通学路を遠回りさせられたりもするっていうのに。


「お名前を聞いても?」

「ボクP5ー!」

「まぁ、そうなんですね」


 『ピー・ファイブ』とは、何とも記号的な呼び名だこと。どういう意味合いで付けられたものかは知る由もないし、知ろうとも思えない。

 そもそも街を壊して周っている怪物と、その被害を受けている人間が仲良く異文化コミュニケーションを取れる方がおかしいのだ。


 俺はあくまで、このP5と名乗ったやつがフェンスに首を突っ込んで動けなくなっていたから助けただけでこれ以上関わるつもりはないぞ。

 そうと決まればさっさとこの場を退散してしまおう。

 この女には悪いが、関わったのは自己責任ということで。お前も切りのいいところで退散しろよ? 健闘を祈る。


「美空高校の一年、月島梨穂です。魔法少女、プリズムトリニティをしています」


 だから、お前もかよ。

 せめて、戦っている相手にぐらい正体を隠せ。


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