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【三部連載中】魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
【イエロー編】時計ウサギと昼の月
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01 晴れ時々変な奴


 この世界には、怪物がいる。

 何の前触れもなく現れて、街を壊して、魔法少女とやらに倒されて去っていく。


 テレビのニュースやら、ネットに上げられている動画では、とにかく黒い体に赤い爪と眼を持っているようだ。

 実物を見たことはないが、大きさはまちまちで、人間より少し大きいくらいの奴から、おおよそ二階建ての建物より少し小さいくらいの奴など様々。要は個体差がある。

 と、まぁ。俺がなんでこんなことを言っているかというとだ。


 目の前で、明らかに人間じゃない奴がフェンスに頭を突っ込んで身動きが取れなくなっているからだ。


「やっほー、君何してるのー?」


 いや、お前が何してるんだよ。

 目の前の奴は、首から下は人間だ。でもフェンスに突っ込んで動けなくなっている頭はおよそ人のものとは言えない。

 ロウソクだ。人の顔のあるべき場所にドカリとロウソクが乗っていて、ギザギザと横に割れたような切れ目を作っては、そこから声を出している。それ口、なのか?


 え? マジで何?

 明らかに人間ではなさそうだが、俺の知っている怪物とも微妙に違う。そんな奴が学校の校舎裏のフェンスに首を突っ込んで動けなくなっている。マジで何なんだこいつ。


「お、お前こそ何してるんだ?」

「んー。なんか毛むくじゃらな奴を追いかけていたら動けなくなっちゃった」


 しょんぼり、というようにフェンスの向こう側に残した肩を落としながら答えるロウソク頭に正直ちょっと眩暈がした。心なしロウソク頭の上に灯っている火も元気がなさそうに小さくなっている。

 毛むくじゃらのやつってなんだよ。動物か? 猫か何かがいたからなのか? 今時ガキでもそんな理由で針金フェンスに首突っ込んで動けなくならねぇぞ?

 フェンスもフェンスで、なんでそんなに都合よく穴が開いているんだ。


 俺はただ学校の焼却炉に個人的な物を捨てに来ただけだったんだが、なんで未知との遭遇をしなきゃいけないんだよ。

 ため息を吐いて、じろりと目の前の未知の生物を見やる。所々ほつれや破れはあるがシャツにスラックスに、裾の長い執事みたいな上着。一見して見られる格好をしている。それだけにフェンスに頭を突っ込んで動けなくなっているのが、ノイズすぎて理解が追いつかない。


「お前、怪物なのか?」

「なにそれー?」


 いやまぁそうか。怪物なんて人間が勝手に呼んでいるだけで、こいつらにとっては違う名称なのかもしれない。

 名称はわからないが、暫定怪物は相変わらず退屈そうにフェンスに頭を突っ込んだまま気の抜ける声を上げている。


 姿形は人と変わらないのに、その頭部だけは大きなロウソクとなっていて、目も鼻もない代わりに大きな口だけがある。

 昨今街には怪物なるよくわからないものが度々現れているが、目の前の存在は一等おかしい。もっとこう、人の言葉を話さなかったり、姿形も人とは離れたものじゃないのか。


「ねぇー、君は何をしているのってばー」

「え、ああ。別になんでもねぇよ」


 目的はあったんだが、お前のせいでそれどころじゃなくなったんだよ。

 手のひらに握り込んでいた懐中時計をポケットに押し込む。本当は焼却炉に放り込もうと思っていたんだがな。


 さて、ひとまずこの状況をどうするべきか。

 別に俺はたまたまこのロウソク頭の奴に遭遇しただけで、これ以上関わる理由もなければ何の責任もない。放っておいてもいいのだが、こう……。何とも間抜けな様子を見せられては放っておくのも気が咎める。


「おい、そこから出たいか?」

「んー、うん。飽きてきたー」


 間延びした返事をしつつ、わたわたとフェンスの向こう側の手足を動かすロウソク頭にため息を吐く。

 なんだってそんなところに頭を突っ込んだんだか。普通に考えてわかるだろう。頭が入っても体は通らないって。いや、そもそも穴があっても頭を突っ込むなという話なんだが。


「ちょっと待ってろ」

「はーい」


 ロウソク頭が飛び出しているフェンスに近寄って、首周りにあるフェンスの針金の一部を広げてやる。引っかからないように外向きに針金の先を折り返しつつ、一本ずつ丁寧に穴を広げていった。

 ……何をやっているんだろう俺。よくわからない奴を助けるためにフェンスの穴を広げて、こんなことになるならさっさと帰ればよかった。

 頭の中で軽く現実逃避をしつつ、不満そうに「まだー?」と声を上げるロウソク頭に「お前のせいでこうなってるんだろう」口には出さずに悪態をついておく。


「あと、少しでっ」


 そう言って指先に力を込めた時、視界の端に何かが映った。

 そちらへ首を向けると、自分と同じく制服を着た女子生徒が一人、こちらを見て怪訝な顔をしている。

 女子生徒の手には袋に詰められたごみがあって。掃除当番だったのか、この先にある焼却炉に正当な用事のある生徒だと一目でわかる。


「え、えーと。お取込み中でしたか?」


 こちらを気遣うような、困惑した声。

 何なら若干引いたような表情をしている。


 待て、違う。誤解するな。

 何が誤解なのか、自分でもわかっていないが、とにかくこの事態は俺が原因じゃない!




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