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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
【ブルー編】なべて茶店はこともなし
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32 願わくば


 七海ちゃんを見送ってしばらく、七海ちゃんとあのウサギのぬいぐるみの話を整理しようと一人紬で頭を抱えていたら、不意に空が暗くなった。

 平日昼間。いくら冬場とは言えまだ太陽が高い位置にあるはずの空が、天気が崩れたのとは違う様相をしている。何かが、起こっている。


 どういうわけかと店の外に出てみるも、見上げた空は黒く、果ては空中に裂け目のような何かが浮かんでいる。あれは何だ。七海ちゃんに何かあったのか。

 俺と同じようにスーパーマーケットの駐車場には買い物に来ていた人々が空を見上げ不気味がっている。


 各々で指差し合っている空の裂け目に目を凝らせば、奥に何かが見えた。あのウサギのぬいぐるみに聞いた怪物の世界とでもいうのだろうか。

 それがわかったところで俺に何ができるわけでもなく。しばらく空を見上げていたものの、何かしらの行動も思い付かずすごすごと店内に戻る。

 しばらく店内で一人悶々としていると、場違いなほど陽気にドアベルが鳴り響いた。


「ただいまなノ!」

「えぇと。おかえり、でいいのかな?」

「ただいま、です」


 七海ちゃんが、俺を見て肩の力が抜けたように笑った。

 あのウサギのぬいぐるみと、いつだったか七海ちゃんと一緒に紬に来てくれた女の子たちもいる。


「え? え!? チュチュ!? 隠れなきゃ!」

「大丈夫ヨ。さっき全部話しちゃったノ」


 まぁ、そうなるよな。七海ちゃんもさっきは慌てて誤魔化そうとしていたし、このウサギのぬいぐるみの存在や魔法少女であることは彼女たちにとって隠すべきことなのだろう。

 慌ててウサギのぬいぐるみを抱え、自分の後ろに隠そうとする女の子に苦笑いして空のコーヒーのサーバーを持ち上げる。


「ひとまず皆温かいものでも飲まない? と言っても、コーヒーしかないんだけど」


 一瞬目を丸くしたお嬢さん方が、顔を見合わせた後緊張がほぐれたように笑った。


 そうと決まれば早速取り掛かるとしよう。

 キッチンでお湯を沸かしている間に、手早くミルでコーヒー豆を挽いていく。手回しのミルはいつもより豆の量が多いので回しにくいが、彼女たちのがんばりに比べたらどうってことないだろう。

 因みにだがあのウサギのぬいぐるみも、皆と同じコーヒーでいいんだよな?


 豆を挽く片手間に七海ちゃんが飛び出して行ってからの経緯を聞く。

 なんとなく察しはついていたが、七海ちゃんの友達二人も魔法少女という存在らしい。七海ちゃんがイノセントジュエルを持って他の魔法少女と合流し、先ほどウサギのぬいぐるみが言っていた世界を救う以外の使い方をしたようだ。


 結果、怪物の仲間の一人を倒したらしいが、望んだ形ではなかった。それはつまり、わかり合えなかったということだろうか。

 話をするにつれ、皆の表情が次第に暗くなる。


「もっと私が上手くできたら、カロンのこと、救えたのかな」

「さくら……」


 サーバーに抽出したコーヒーをカップに注いで、カウンター席に座るそれぞれの前に出した。

 悩んでいる彼女たちにかけるべき言葉が見つからない。がんばれ、とか。ムリしないで。も、なんだか俺が言うのは違う気がして。

 少し居心地の悪さを感じながら、渡したコーヒーを楽しんでいるウサギのぬいぐるみに視線を落とした。


「あの空について聞いてもいいか?」

「アレは、二つの世界が重なりかけている証拠よ」

「二つの世界」

「この世界とプルート、怪物と呼ばれる存在がいる世界のことですわ」


 器用にカップを持ってコーヒーを飲むチュチュに、もう一人の子が補填を入れてくれる。完全に二つの世界が重なってしまうと、世界に怪物が溢れてしまうのだとか。

 なる、ほど? あまりよくわかっていないが、それって大丈夫なのか? いや、大丈夫じゃないからこんな状況になっているんだろうが。


「心配しなくても大丈夫ヨ。イノセントジュエルがあれば、世界が一つになるのを防げるワ」

「それを知っている君は何なの?」

「チュチュはただの妖精ヨ」


 にっこり。ウサギのぬいぐるみ改め、チュチュと名乗った妖精は言った。

 よくわからないが、信じていいんだな?


「あの、絶対大丈夫です。私が世界も、静一さんのことも守りますから」

「……ありがとう。でも、ムリはしちゃだめだよ」


 意気込むように握りこぶしを作った七海ちゃんを宥め、そっと息を吐く。歯痒いって、こういう感情なんだな。

 何とも言えない無力感を覚えながら、そっと目を細める。


「前にも言ったけど、俺は七海ちゃんに幸せになってほしいんだよ。だから……」

「心配してくれてありがとう、静一さん。巻き込んでごめんね」

「いや、今まで何も気が付かなかった俺の方こそごめん。おまけに何もできないし」

「ううん、いてくれるだけでいいの。静一さんがいてくれるから私は強くなれるから」


 そう言って笑う七海ちゃんに、思わず目頭が熱くなる。俺は本当に、このカッコイイお嬢さんが笑っていられるように何かできているのだろうか。たとえ、世界を救うような大掛かりなことができなくても、それでも何か。

 そうだったらいい。

 そうでありたい。




後10話ほどで二部完結予定!


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