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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
【ブルー編】なべて茶店はこともなし
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28 Q and A

 問題。覚悟しろと言われましたが、二人の間に何かしらの変化はありましたか?

 回答。その後何かしらの進展はなく、暦だけが変わりました。


 クリスマスのあの日に宣戦布告のような告白を受けた後、普通に、ケーキを食べて少し話して解散だった。帰り際、押し付けるように渡されたプレゼントのマフラーを受け取ったぐらいで、本当に何もなかった。

 いや、別に残念だなんて思っていない。思っていないはずだ。


 その後も三十日までは紬を開けていたものの、七海ちゃんは店に姿を見せず、呆けて渡しそびれたプレゼントだけが店内に残されていた。

 正直、正月休み中に偶然どこかで会えたらという思いはあったが、そんな都合のいい展開なんてなく。家と紬の行き帰りでプレゼントを入れた紙袋の持ち手が少しくたびれたぐらいだった。


 そんな年末年始も終わり、スーパーマーケットの初売りと共に紬を開ける。

 正直もっと休みにしていてもいいくらいなのだが、家に居てもなんとなく落ち着かなくて紬に来てしまった。まぁ、店を開けていたところで、客なんて来ないのだが。


 ひとまず荷物を置いて、キッチンの換気扇と空調を送風のモードにする。数日の間とはいえ、籠った空気を入れ替えたい。もっとも、窓は嵌め殺しなので代わりに入り口を全開にしておいた。

 はたきで上から順番に埃を落としていき、掃き掃除とテーブルの水拭き。人が来ないのをいいことに、黙々と掃除を進めていく。


 この行動は思考の放棄でしかないのだが、一応少しは考えたんだ。

 正月休みで世間の動きもほとんど止まっている間に。


 我ながら非常に単純というべきか、七海ちゃんに好きだと言われて、腑に落ちてしまったのだ。名前を付けずに封印しようと蓋をしていたものを開けられて、これはそういう類の感情だったかと、妙に納得させられてしまった。

 彼女を眩しいと思うのも、失うのが怖いのも。また手を伸ばせず仕舞いなのかと落胆したのも。


 ……随分とまぁ、俺の安寧を極めた世界が脅かされているなぁ。何も起こることなく、平穏で凪のような日常で良かった。

 ただ、それをしているのが七海ちゃんであり、七海ちゃんと話すのは好ましいと感じている。それが痛いところを突かれることであっても。


 おおよその掃除を終わらせて一息つく。店内をぐるりと見渡して、自宅から持ってきた包みの一つを取り出した。カーテンだ。

 いつの間にか当たり前のごとく周知されていたブラックフライデーとやらのセールで安く買ったレースカーテンをばさりと広げる。定期的に洗濯はしていたがもう何年も使っていたし、そろそろ買い替え時だろう。


 悪戦苦闘しながらも古いカーテンを外し、真っ白なレースカーテンを取り付けていく。

 最後の一か所を取り付けた達成感にため息を吐いたところで、小さく窓が叩かれた。

 カーテンレールから視線を外せば、寒さのせいか少し頬の赤らんだ七海ちゃんがいて。


「初詣行きませんか?」


 おずおずと、開け放ったままにしていた扉から入って来た七海ちゃんが笑った。

 流されるままに生きて、閉じこもってきたことの自覚がある。ちゃんと、しないとなぁ。


 どうせ店を開けていても人も来ないだろうと、七海ちゃんに少し待っていてもらい、上着を羽織る。

 ふと、上着と一緒に置いていた紙袋が目に付いた。中には赤い背景と柊の葉という若干遅刻気味のデザインの包装紙に包まれたプレゼントが入っている。色々と思うところはあるが、一先ずそれを引っ提げて七海ちゃんを振り返った。


「お待たせ、行こうか」

「はい」


 店に鍵だけかけて、近くの小さな神社に向かう。

 道すがらの連れ合いは特に中身のない会話。当たり障りもなく、お互い踏み込みもしない。毒にも薬にもならないやり取りだ。


「ちゃんと、初詣にくるのは久しぶりだな」


 三が日を過ぎているせいか、人のいない神社を見渡す。


「そうなんですか?」

「うん。一人だとどうしても億劫になっちゃってね」


 石でできた鳥居をくぐり、小さな社を見上げる。昨日までならもう少し人がいたのだろうが、四日の昼過ぎならこんなものだろう。

 二人並んで、賽銭箱の前に立つ。小銭が木箱に落ちる音がして、鐘を鳴らした。特に何を願うでもなく、手を合わせる。


 数拍の無言の後、ゆっくりと賽銭箱の前を離れる。正直誰もいないのだからこのままでもよかったが、なんとなくだ。

 それにしても、風が冷たいな。後は帰るだけとはいえ、長居すると体を冷やしてしまうだろう。


「七海ちゃん、これ」

「どうしました?」

「この前、クリスマスの時に渡そうと思って渡しそびれたから、もらってくれないかな」


 久しぶりに足を踏み入れた百貨店で、店員に相談しながら選んだ空色の手袋は、クリスマスカラーの包装紙に包まれている。

 まぁ、うん。一応ちゃんとしたお店のものだし、色々相談したから奇抜なものではないはずだ。ただ、趣味が合わない可能性もあるが、その場合はできれば俺の知らないところで処分してほしい。


「あ、嬉しいです! あの、ありがとうございます、静一さん!」

「えっと、大したものじゃないんだけど」

「開けてもいいですか?」

「あぁ、もちろん」

「手袋! ふふ、嬉しいです」


 包装を開いて、ぱっと表情を明るくした七海ちゃんにつられ頬が緩むのを感じる。

 そんな風に喜んでくれるなら、持ち手がくたびれた紙袋だけでもちゃんとしたものに変えておけばよかった。


 七海ちゃんがいそいそと空色の手袋をはめて、空にかざす。

 なんとなく、胸の内が温かくなるのを感じる。この気持ちは、うん。きっとそういうことだ。だからこそ。


「初詣、久しぶりなんですよね。ならこれからは、私と来てくれますか?」


 俺なんかじゃなくて、もっといい奴と幸せになってほしいんだけどな。




結論。隙を見せた静一が悪い。

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