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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
【ブルー編】なべて茶店はこともなし
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58/123

17 違和感

七海視点。


 切れ切れになる息を整えて、辺りを見回す。

 通り過ぎる人が不思議そうにこちらを見るだけで、いたって普通の街並みがそこに広がっていた。


 これは、いったいどういうことだろう。ヨルさんにバイデントが近くに出たと聞いて、思わず紬を飛び出したものの、今のところ町や住人が被害に遭った様子は見受けられない。

 迂回してきたと言っていたし、ヨルさんが無事なのはよかった。バイデントが紬に向かってきていないのも。


 当てもなく飛び出して、辺りを見渡す。困ったなぁ。太陽が傾いて日差しが弱まって来たせいか、昼間より人が多い。

 上手く隙を見てアクアブルーに変身したいんだけど、すぐにはムリそう。上からなら、きっとすぐにバイデントが暴れている場所を見付けられるのに。


 気を付けて人の流れや、話し声を聞いては見るものの、今一どこにバイデントが現れたのかわからない。

 最近皆、避難に慣れてきたせいか、バイデントが出ても慌てる人が少なくなってきている。パニックになってけがをする人が増えるよりはずっといいんだけど、それはそれでどうなのよ。

 ヨルさんにどの辺りにバイデントが出たかだけでも聞いておけばよかった。


 しばらくうろうろして、ようやく人のいないところに出たので一息つく。さくらと梨穂はもうバイデントのところにたどり着いただろうか。遅れちゃって申し訳ない。

 最近ずっと持ち歩いているプリズムパクトを鞄から取り出して、ふと妙な心地になった。


 紬を飛び出した後、辺りを走り回って探してもバイデントはいない。住人も、普通に出歩いていて、特におかしなところもない。

 変なところも変わったところもない? それって、何かおかしくない?


 え? 今までも、多少皆慣れてきているとはいえ、バイデントが出たらその周辺にいた人はちゃんと避難していたし。

 避難所に行かなくてもある程度離れたところに固まって状況を確認している人だかりがあったりした。それが、今日は見当たらない。


 じっと、パクトを見つめる。確かにヨルさんは「怪物が近くに出たらしい」と言っていた。

 でも思い返せば、あの時プリズムパクトはバイデントの出現を知らせていなかった気がする。だってバイデントが現れるとパクトが光を放つもの。ちょっと大げさなぐらい光って、いつも鞄から光が漏れ出てないか心配になるほどだった。


 それが、あの時はどうだった?

 多分、私はあの時鞄の中なんて確認していなかった。ヨルさんの言葉を聞いて、早くさくらたちと合流しないと、と思って鞄を持って紬を飛び出したんだった。


 どういうこと? バイデントは、現れていないの? いえ、毎日のように街で暴れられても困るし、バイデントが出ていないなら出ていない方が助かるんだけど。

 じゃあどうしてヨルは「怪物が出たらしい」と言ったの? それも「迂回してきたし私は問題なかったわ。多分こちらへは向かってこないと思うわよ」なんて最もらしい理由を付け加えて。


「あら。こんなところにいたのね」


 不意に声をかけられて振り返る。

 ついさっき聞いたばかりの、年上の友人の声だ。


「ヨルさん?」

「はーい」


 にこにこと、いつものように陽気に笑って手を振っている。何がどうなっているの? ヨルさんは紬に残して来たはず。

 バイデントを探して歩き回ったから少し時間は経っているけど、いつももっとゆっくりしているから、ここに居るなら私が紬を出た後すぐに追いかけてきたことになる。


「あの、どうしてここに?」

「ナナミにも、ちゃぁんと話しておかないとって思ってね」


 少し俯き加減になったヨルさんが前髪をかき上げる。大きな変化はなかった。でも、確かに変わっていた。

 何処にでもある茶色い瞳が、まるで月みたいに金色に輝いて。大人の女性を思わせる赤いリップが、真っ黒に染まる。

 どうして気が付かなかったんだろう。何度も会っていた。この前だって。なのに。


「ほら。これでフェアってやつでしょう?」


 ヨルさんが。

 バイデントの仲間、ニクスが、からりと笑った。


「なに、言って。なんで! ヨルさんが!」

「人間って案外バカよねぇ。目の色とリップ変えるだけで気が付かないんだから」


 そう言って何か黒いものがぐるぐるとヨルさんの体に巻き付いて、いつもニクスが着ていた服を身にまとうヨルさんが現れる。

 くすくすと笑うニクスに、意味がわからなくなる。


 だってニクスは、不真面目で、悪い奴なのにちゃんと悪い奴をしてくれない奴で。他のカロンやP5にばかり戦わせて、自分は逃げてばっかりな卑怯者で。

 イノセントジュエルを探すために街を壊してまわるバイデントの仲間だ。そんなのがヨルさんだなんて、嘘に決まってる。


 ヨルさんは確かに意地悪だけど、いつもにこにこ笑ってて楽しそうで、言い難そうなこともはっきり言えて、自分を持ってて、綺麗で、私の、憧れの人。

 なのに。


 信じたくない。何がフェアよ。目の前でそんなことされたって、公平なんかじゃない。公平にしたいなら、最初からあんな風に接しないでよ。

 紬に来ていたあなたは何だったのよ。楽しそうに笑って、静一さんの入れたコーヒーを楽しんでいたあなたは。こんなの。


 嘘だと言ってよ。


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