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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
【ブルー編】なべて茶店はこともなし
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56/123

15 アイスコーヒー


 多分それは、何の変わり映えもない日常の続き、だったと思う。

 まだ強い日差しが降り注ぐものの、暦上では九月を迎え七海ちゃんも学校が始まったのか制服で紬を訪れるようになった。


「そういえば、いつもこのラジオを流していますけど、お好きなんですか?」

「別に好きって程でもないけど、BGM代わりかな。小さい音量ならずっと流していてもそこまで気にならないし」


 家でもあまりテレビを見ないから、ラジオのニュースが主な情報源なんだよ。大して聞いていないけど。

 相変わらず奇妙な友人関係を続けてはいるものの、それなりに話をするようになって、女子高生の流行には少しだけ詳しくなったような気がする。


 七海ちゃんが話を聞きたいと、俺のことを知りたいと言われ、世間話をよくするようになったが、正直未だに聞き役に徹する機会の方が多い。

 というか基本家と紬の往復、紬で一人の時は目に付いた電子書籍を読んでいるだけで、基本的に変わり映えのない、面白味のない毎日だ。電子書籍だって時間をつぶすのに利用しているだけで、特に思い入れがある本があるわけでもないし。


 その手の話題で七海ちゃんの役に立てたことといえば、夏休みの宿題の読書感想文の本選びに貢献できたことぐらいか?

 アレだって長編でなく読みやすい小説を探すのを手伝ったくらいで、特に内容についてはほとんど触れていなかったし。


 まぁそんな感じで、七海ちゃんとは基本的に話を聞いて、質問に答えるような会話の続け方をしている。

 いや、申し訳ないとは思うよ? でも基本的に引きこもって一人で過ごしているせいもあって、何を話せばいいかもわからないし、楽しんでもらえる話題提供とかできないわけよ。

 だからこそ、勝手に話して気ままに話題を振ってくれるヨルには大分助けられているわけで。


「喜びなさい、来てやったわよ」

「もうちょっと、落ち着いて扉を開けられないんですか?」


 ガンガラと威勢のいいドアベルを鳴らしてヨルが現れた。

 けらけらと、何を言われても楽しそうに笑うヨルは、相変わらず七海に体をぶつけるようにしてカウンターに座る。何でそう、関わり方が乱暴なんだよ。そういうことするから、七海ちゃんに苦手意識を持たれるんだろ?


「アイスコーヒーでいいか?」

「ええ、とびきり冷たいのね」

「はいはい」


 ヨルの意識を、七海ちゃんから逸らすように声をかける。

 ざりざりとミルでコーヒー豆を挽けば、店内にまたコーヒーの香りが広がった。しかしまぁ、こういう関わり方ばかりしているのに、なんだかんだで仲が良いんだから女性って本当によくわからないや。


 挽いた粉をドリッパーにセットしてサーバーを用意する。

 せっせと冷凍庫の氷を取り出してきて作ったアイスコーヒーのグラスをカウンターに置けば、ヨルから短い礼が返ってきた。


「来る途中で聞いたんだけど、近くで怪物が出て暴れているらしいわよ」

「え、大丈夫だったのか?」

「迂回してきたし私は問題なかったわ。多分こちらへは向かってこないと思うわよ」


 なる、ほど? 一応この辺りにも怪物は出没しているらしい。

 多分俺が店を閉めて帰る頃には怪物も退散しているだろう。多少の心配はあるが、どうにも妙な納得感の方が強い。


「折角教えてあげたっていうのに反応薄いわね」

「いや、ちゃんと心配してるって」


 ちょっと実感がないだけでちゃんと心配はしている。ヨルに怪我がなくて良かったよ。

 ちらりと見た窓の外を行き交う人はいつも通り、特に急いだ様子もなく買い物袋を提げてのんびり駐車場を歩いている。ヨルの感じを見るに、やっぱりこの街の住人にとっても怪物は日常の一部になってしまっているのかもしれない。


「あら、どうしたの? そんなに怪物の話が怖かった?」


 ヨルの言葉につられて、七海ちゃんを見る。少し青い顔をしていた。

 前も不安そうにしていたし、七海ちゃんにとって怪物は怖いものなんだろうな。いや、怪物は万人にとって危険なものだ。ただヨルは慣れていて、俺は実感がわいていないだけで。

 七海ちゃんの反応が一番正常なのは間違いがないだろう。


「い、いえ! そういうのじゃなくて」

「七海ちゃん?」

「私! ちょっと用事を思い出したんで今日は失礼します! ごちそうさまでした!」

「え、ちょっと!」


 そういうと、七海ちゃんは慌てて紬を飛び出した。

 そんなに大事な用事だったのか? 怪物が出ているらしいし、巻き込まれないといいんだが。


「なん、だったんだ?」

「色々あるんでしょ?」


 ふぅ、と息を吐きながらヨルが言った。お前ね。意地悪しつつも、それなりに可愛がっているんだからもうちょっと心配してやれよ。

 スッと目を細め、ヨルがアイスコーヒーに口を付ける。このマイペースめ。


「ああ、そうだ。私セーイチに話があったのよ」


 取ってつけたような前振りで、ヨルがにっこりと笑った。

 紬には二人きり。音量の絞った美空町限定のローカル放送がご機嫌な午後を知らせている。残された七海ちゃんのアイスコーヒーのグラスには氷だけが残っており、溶けた氷がカラリと涼しげな音を立てた。


「私、もうここには来ないから」


 は?





いつも唐突にかき乱してくる人

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