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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
【ブルー編】なべて茶店はこともなし
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14 目も眩むほど


 夏も盛りと言うべきか。

 カンカン照りの太陽の日差しを手の甲で遮りながら息を吐く。


 本当に嫌になるほど元気だな。店に誰も来ないのをいいことに、徒歩三十秒のスーパーマーケットまで最近、消費の激しいガムシロップと食器用洗剤の詰め替え、ついでにゴミ袋を買いに出た。

 ものの三十秒ほどの距離が直射日光のせいで遠い。鍵を開けるにしても一分ほどの時間なのにな。屋根がないだけでこれほど億劫とは。


 ポケットの中に無造作に放り込んだ鍵を取り出し、意を決して日差しの中に出た。あっつ。

 一瞬で汗が噴き出るのを感じながら車を避け駐車場を横切れば、見慣れた後姿が紬の前に佇んでいる。


「七海ちゃん?」

「え、あ。静一さん。お買い物行ってたんですね」

「うん、紬で使うものを。ごめんね、暑かったでしょ」


 鍵を差し込んで扉を開ければ、冷房を付けっぱなしにして出ていたおかげでひんやりとした空気が漏れ出して来た。

 外に待たせてしまっていた七海ちゃんを先に中に入れて、俺も涼しい店内に帰還する。


「アイスコーヒーでいい?」

「はい、お願いします」

「うん、じゃあちょっと待っててね」


 買い出し品を持ったままキッチンに引っ込み、それぞれを棚に仕舞いながら薬缶に水を入れて火をかける。

 カウンターに戻って、いつも通りコーヒー豆をミルの中にざらざらと入れた。豆の種類は日ごとに気分で変えている。粉が混ざっても美味しくないし、一日の終わりにミルを清掃してから帰るのがルーティンだ。


 程よく粉になったところで一度手を止め、キッチンでカタカタと音を立てていた薬缶の火を止めた。

 薬缶をカウンターまで持ってきて、今度はドリッパーとサーバーを用意する。氷で薄くなるのを見越して粉の量は多くして濃い味にする。そのままこぽこぽとお湯を注いでいけば、よく馴染んだコーヒーの香りが店内に広がった。


 えーっと。一連の動作をじっくり見られていたようですが、そんなに面白いものじゃないでしょ?

 俺の視線に気付きもせずに、七海ちゃんはサーバーの中へ零れ落ちていくコーヒーを見つめている。


 真剣に見てくれているところ申し訳ないが一旦、サーバーごとキッチンに引き上げて冷凍庫で大量に生成された氷を入れる。熱を取っている内に二人分のグラスに氷を入れて、ミルクピッチャーも用意する。冷えたグラスにコーヒーを注げば完成だ。

 さっき買ったガムシロップと一緒にトレイに乗せてカウンターまで運べば、こちらを見ていた七海ちゃんと目があった。


「お待たせ」

「ありがとうございます」


 グラスをカウンターに置けば、お礼が返ってくる。

 なんというか、こういう時もうちょっとフランクに話しかけられたらいいんだがなぁ。いやもしそういう性格なら俺は日々紬に引きこもって暮らしてはいないんだが。


「そういえば、この間の悩みごとは解決しそう?」

「うーん、どうでしょう? 正直さらにわからないこととか、納得できないことが増えちゃったりしています」

「そっか」


 結局。いい話題が思いつかず、暑くなりかけの頃に聞いた話を掘り返してみた。あの時は結局ヨルが変な回答をしてうやむやになってしまったんだが、その後はどうだろう。

 ちゃんとしたい自分と、そうでない他人への折り合いの付け方。その答えはまだ見つかっていないらしい。


「友だちには相談したりは?」

「さくらは背負い込みがちだし、梨穂はちょっとマイペースなところがあるから私がしっかりしなくちゃって。……相談、しても迷惑にならないかな?」

「きっと大丈夫だよ。七海ちゃんの大切な友だちなんだから」


 伺うようにこちらを見た七海ちゃんに返せば、安心したような笑顔が帰ってくる。


「あーあ。もっとこう、しっかりしたいのに。いつまでたっても子供っぽい気がする」

「そんなことないと思うけどなぁ」

「大人ぶってるだけですよ、静一さんの前では特に」


 大人ぶりたい年頃ってやつなのかなぁ。

 七海ちゃんしっかりしているし、悩むほどでもないと思うんだが。少なくとも、俺の高校時代よりはずっとしっかりしている。そもそも俺はちゃんとしようなんて考えたこともなかったし。


 そもそも、喫茶店と家のみで生活して閉じこもっている俺が、世間一般よりも狭い範囲で生きていて圧倒的に経験不足過ぎるのでは?

 さらに問題なのは、その状況に胡坐をかいて特に危機感を覚えていない辺りとか。

 まぁ、うん。何とかなっちゃってるし、現状に不満もなければ平穏に暮らせてしまっているからなぁ。


「でもいいんです」

「そうなの?」

「はい。いい女は逃げないって、ヨルさんに教えてもらいましたから」


 七海ちゃんがにっこり笑った。


「納得できないことも多いけど、全部私なりに乗り越えていくつもりです」


 それは決意表明だった。

 なんというか、眩しいなぁ。こういうのが青春ってやつか。生憎縁がなかったので、非常に眩しくて、キラキラしていて、手が届きそうにない。


 にこにことしながらアイスコーヒーに手を伸ばした七海ちゃんに倣って、俺も自分のグラスに口を付ける。

 アイスコーヒーって本来はホットのものよりも氷がある分苦みもマシなはずなんだが、今日のコーヒーは特別苦く感じた。



特技は見ないふりと現状維持

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