表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
【ブルー編】なべて茶店はこともなし
47/69

06 空の見え方

七海視点


 私、青空七海には二つ秘密がある。

 一つは魔法少女として日々街を守っていること。


 プルートと呼ばれる異世界からやって来た怪物、バイデントを倒すためにさくらと梨穂の三人で魔法少女、プリズムトリニティとして活動している。

 最初こそ、さくらとバイデントの戦いに巻き込まれた形だった。でもあの子向こう見ずなところがあるし、心配していたらいつの間にかチュチュに変身パクトを渡されて私まで魔法少女になっていた。


 もちろん戸惑ったわよ? でも、その……魔法少女になれば作戦会議と称して静一さんの店に通える頻度が増えるのでは? なんて思っちゃったりもして。

 た、確かに動機は不純だけど、バイデントから街を守りたいのは本当よ? バイデントはイノセントジュエルを探すために美空町を壊して回っていて、美空町には静一さんと静一さんのお店、喫茶「紬」がある。


 好きな人と、その人のお店を守りたいって思うのは普通のことでしょう?

 これが、私のもう一つの秘密。

 私、青空七海は、行きつけの喫茶店のマスターさんに恋をしている。


 お母さんに頼まれたスーパーマーケットへの使いの途中、喫茶店前を掃除する静一さんに一目惚れして以来、ちょくちょくお小遣いをやりくりして喫茶店に通い詰めている。

 誘われるままに初めて入った喫茶「紬」でムリをして飲んでいたブラックコーヒーに、サービスと称してケーキをくれてますます憧れになった。


 本当は憧れたままでよかったんだけど、ある時ヨルさんが紬に通うようになった。

 年も静一さんと近いし、それにどんどん静一さんと仲良くなっていって。だから。私も焦って、私の方が早く知り合ったのにって。

 焦りが嫉妬になり、憧れが恋になった。


 ヨルさんはからかってくるし苦手。でも嫌いって程ではない。大人の癖に、なんであんなに子供っぽいことするんだろうとは思う。

 大人って、もっとこう静一さんみたいに落ち着いているものなんじゃないの? あんな風にころころ表情を変えたり、子供みたいに意地悪するもの?

 そんな話を振っても、さくらは一緒に悩んでくれるけど、梨穂はにこにこ笑うだけだし。


 ため息と一緒に肩を落とす。折角の休日なのに今日は部屋にこもりきりだ。

 叶うなら今日だって紬にお邪魔したい。でもさすがに連日は厳しい。一応お小遣いは貰っているけど、毎日のように紬に通うのはちょっと心許ない。何なら今だってお財布の中は寂しい。


「バイト、しようかなぁ」


 でもそうすると、バイデントが街に現れた時にすぐに駆け付けられない。あと、頻繁に紬にも行けなくなる。

 そうしている間にまた静一さんとヨルさんが仲良くなっていたらと思うと、ちょっと苦しい。ヨルさんは誰に対してもちょっと距離が近いし、年が近いせいか静一さんもヨルさんには気安いし……。


 鬱々と考えていた頭を切り替えるため、がばりとベッドの上で体を起こす。部屋の窓から見える空は悲しいほどに天気がいいのに、なんとなくそんなにいい景色に思えない。

 私にとっては、紬の窓から見えるスーパーマーケットの駐車場の方が心躍る景色に見える。


「お母さん、ちょっと出かけて来るね」

「遅くなる前に帰ってくるのよー」

「はーい」


 机の横にかけていた鞄を掴んで部屋を出る。リビングにいるお母さんに声をかけて家を出れば、さっきよりも鮮明な青空が広がった。……まだ、晴れやかな気分になる風景ほどじゃないわよ。

 とりあえず気分転換よ。適当に歩いていれば気分も紛れるかもしれないもの。紬に行くかは未定。お財布と要相談して決める。


 静一さんは優しい。言えば私のお財布事情も考慮してくれそうだけど、そんなことで甘えたくない。

 むしろ頻繁にコーヒーのお代わりだとか、ケーキとか果物とか。サービスしてくれ過ぎなのよ。


 静一さんから見たらきっと私なんて子供過ぎないんだろう。でも私は静一さんと対等になりたいの。もっと仲良くなりたい。

 好きなの。

 ヨルさんより私を選んでほしいの。


 そっとため息を吐く。

 紬に向かいそうになる足を方向転換させた。もっと冷静に、大人にならなくちゃ。こんな気持ちで紬に行っても、きっとまたヨルさんにからかわれるだけだもの。

 だからちょっと、安心した。


 鞄の中で荷物に混じってプリズムパクトが明滅する。バイデントが街に現れたんだ。

 周囲をそっと伺っても街を歩く人は普通にしている。きっとバイデントが現れたのは少し離れたところだ。人通りのないところまで移動して、今度こそパクトを開く。


 鏡の中に私が映っていた。

 きゅっと口角を上げれば、パクトの中から溢れた光が私の黒髪を水色に染める。パシャリと水の撥ねるような音がして、波紋のようにいくつもの重なったパニエとスカートが広がった。


 プリズムトリニティのアクアブルーに変身したところで私は私なんだけど、それでもこの姿になると自信が湧いてくる。いつもよりも強く、自分の気持ちに素直になれる気がする。

 地面を蹴って、思いっきりジャンプした。建物の上で街を見渡せば、離れたところに街を壊そうとしているバイデントを見付けた。


 正直に言うわ。これはちょっとした八つ当たりよ。

 この今ひとつ晴れない鬱々とした気持ちを追いやるためにも、街を壊すバイデントに容赦なんてしてやらないんだから!




世界のためだけじゃない魔法少女

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ