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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
【ブルー編】なべて茶店はこともなし
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05 良くも悪くも

 七海ちゃんは学生なので、基本的に紬に来るのは昼以降。早くても十五時を過ぎてからだ。

 それに対してヨルは昼夜問わず、気が向いた時に来ているようだ。一体、何の仕事をしているのやら。


 結局、普段ヨルが何をしているのか聞きそびれているが、俺と年も近いようだしまだ学生、という線もある。あ、大学院とか行っている? 

 大学は一、二年の時に必要な単位を取り切って、祖父が死んだ二年の冬以降は殆ど行っていなかったので進学システムについてはよくわかっていない。


 不労所得のおかげで道楽と余暇を持て余している俺が言うのもなんだが、時間があるのは良いことだな。

 こぽこぽと、カップにコーヒーを注いでカウンター席に座るヨルの前に差し出す。短いお礼と共に受け取ったカップから立ち昇る香りを彼女が楽しんでいる。


 ヨルはまだ寒さの残る二月の終わり、閉店前にふらりと来てコーヒーが気に入ったのか、それ以来頻繁に顔を出すようになった女だ。

 七海ちゃんにはもちろん、俺にも無遠慮にきつめの言葉を投げかけるものの、ころころと表情が変わりよく笑う。


 目に付いた相手に臆せず話しかけに行って。相性がいいのか悪いのか、七海ちゃんのように言い合いになる場合もあるが、特に後に引きずりもしない。

 良く笑い、よく話す。どちらかと言えば騒がしいと言われる人種。その癖にふとした拍子に、コーヒーを見つめ優しげな表情を見せる。


「何? 惚れた? 悪いわね、私には心に決めた人がいるの」


 その笑顔に見とれていれば、にやりとした笑みを向けられた。


「なんで俺がフラれたみたいになっているんだよ」

「照れなくていいわよ。私がいい女なのは自覚しているわ」

「だからなんでそうなる」


 どこからくるんだその自信は。

 いやまぁ、ヨルの見た目は綺麗な方なんだと思うが、今はそんなことどうでもいい。なんで俺がフラれてるんだ。別にヨルに何かしらの感情があるわけではないんだが?

 呆れてため息を吐けば、来店を告げるベルが鳴る。声をかけようとそちらを見れば、わなわなとしている七海がいて。


「また二人で仲良くしてる!」


 小型犬がキャンと抗議の声を上げるように寄って来たかと思うと、七海ちゃんはヨルに肩をぶつけながら隣に座った。

 ……仲は、いいんだよな?


「あらなぁに? 嫉妬?」

「うるさいですよ」


 この前七海ちゃんにヨルと仲が良いと言われたが、正直自分ではそこまでいうほど、親しいかと言われると疑問である。だからといって仲が悪いわけではないが。

 実際ヨルが何をやっているのかも知らないし、七海ちゃんのように会話が弾むことも少ない。

 まぁ俺自身あまり話す方ではないので、ヨルが一方的に話しているのに返事や相槌を打つばかりだな。


 なんというか、あんまり人付き合い得意じゃないんだよ。別に面白いことも言えないし、日がな家か紬で電子書籍読むくらいしかしていない。

 仲良くなりたいと言ってくれた七海ちゃんには悪いが、つまらない人間の自覚がある。とは言え、そう言ってくれた気持ちには報いたいなどとも思う面倒臭い性格なわけで。


「ヨル、あんまり意地悪してやるなよ。七海ちゃんも飲むでしょ? コーヒー」

「はい!」

「ふーん?」


 空のサーバーを持ち上げて問いかければ、七海ちゃんから元気な返事が返ってくる。対するヨルは一瞬驚いた顔をしたが、すぐににやにやと笑った。

 なんだよ、その顔。言い方が引っかかったのか、ヨルが面白そうにこちらを見ている。


 ああこれは何かしら突っ込まれるな。だが、ここで何も言わないのも何か違う気がしたし。

 ほら、アレだよ。ひとまずコーヒーでも飲んで落ち着いてくれってやつだ。


「どういう心境の変化よ?」

「別に? なんでもいいだろう?」


 相変わらずズケズケとした物言いだなぁ、別にいいけど。というか酷くないか? 確かに半引きこもりだし、割と無気力な人間ではあるが、仲裁ぐらいはするぞ?

 そんな俺の考えなど知ったことはないとでも言うようにヨルは七海ちゃんの方に腕を回してしなだれかかる。


「よかったじゃない、庇ってもらえて。ね? 嬉しい? 飛び跳ねちゃう?」

「そ、そんな子供っぽいことしません!」

「嬉しい癖に~」

「ヨルさんちょっと黙って!」

「ヨル」


 咎めるように呼びかければくすくすとヨルが笑った。何がおかしいのやら。

 七海ちゃんに構うヨルを横目にいつものように豆を挽く。ざりざりと音を立てながら粉になっていき、挽きたてのコーヒーの香りが店内に広がった。


 からかわれるのは嫌だがヨルが嫌いではない、か。この間話した時七海ちゃんはそう言っていたが、……どの辺りまで関わって仲裁すればいいんだ?

 ヨルと話すこと自体は七海ちゃんもまんざらでもないようだし。


 沸かしたお湯をサーバーに注ぎ、コーヒーを抽出する。視線を上げれば、さっきまで言い合いに発展しそうだったのに、ヨルと七海ちゃんはもう肩を寄せ合って何かしらを話している。

 これ、もしかして俺がわざわざ間に挟まらなくてもいいやつじゃね?

 いつもの日常とはいえ、本当に仲が良いんだか悪いんだかわからない二人だ。



騒がしい人たち

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