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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
【ブルー編】なべて茶店はこともなし
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03 騒がしくも穏やかな日常


 基本的に、紬は落ち着いた雰囲気の喫茶店、のはずだ。

 少なくとも午前中や日が落ちた後など、スーパーマーケットの駐車場の一角にひっそりと佇み、世の中の喧騒から隔離された憩いの場所。の、はずなんだがなぁ。


「わっかんない子ねぇ! 出せばいいってもんじゃないのよ!」

「いけます! 私十代ですよ! これくらいやらないと見向きもされないんだから!」

「だからタイミングを見極めろって言ってんの!」


 騒がしいな。

 何やら雑誌を持ち込みテーブル席でヨルと七海ちゃんが話し込んでいる。他に客がいるワケでもないので別にいいんだけどさ。他所ではもうちょっと声量下げような?


 きゃいきゃい、というよりもぎゃいぎゃいと。仲が良いんだかケンカしているんだかはわからないが二人並んで肩を寄せ合って雑誌を見ている辺り、邪魔はしない方がいいんだろう。

 いつもならカウンター席にくる二人を遠目に眺め、一人カウンターでカップを磨く。


 何が言いたいかっていうと、非常に手持無沙汰だ。

 二人が仲良くやっているのならそれでいいんだが、さすがに顔馴染みの相手とは言えさすがにタブレットで電子書籍を読むのはいささかまずいよなぁ。二人はあんまり気にしないだろうが、客が来ているっていうのにそれはどうなのって話で。


 そもそも。ヨルも七海ちゃんもよく紬に来てくれるが、若い女性はもっと生クリームだとかチョコレートソースとかがたくさんかかっているタイプのコーヒーの方が好みなのでは?

 紬で出せるのは祖父の代から継続して買っている豆くらいで、ホイップクリームだの抹茶ソースだのはない。よくて貰い物の果物がたまに出せるくらいだ。


 とはいえ一人でやっている店だし、集客をしたいわけではないのでメニューを増やすのもなぁ。

 いくら余裕があるとはいえ、無駄にする前提で仕入れをする気にはなれない。ほぼ客も来ないし、ただ痛むのを冷蔵庫で待つのもな。


 磨き終わったカップを移動させ、手元にスペースを開ける。振り返りカウンター後ろの食器棚を見た。ずらりと並んだ様々な柄のカップは大体祖父の趣味で集められたものだ。

 正直このカップの価値は俺にはわからないし、その辺りは祖父も教えてはくれなかった。

 なんとなく色が綺麗とか、目に留まったという理由で使っているが、この中に高価な物が混じっていても気が付く自信が全くないぞ。


 棚から二セット、カップとソーサーを取り出してカウンターに置いた。

 ちらりとテーブル席を盗み見れば、相変わらず雑誌を挟んであれこれと言い合っている。二人の手元にあるカップは端に除けられているところを見るに、既に空になっているのだろう。


 邪魔にならないようにそっとキッチンに戻りお湯を沸かす。その合間にコーヒーミルに三人分の豆を入れてくるくるとハンドルを回す。ざりざりと音がして香りが広がった。

 しばらくそうしてコーヒーの香りを楽しんだ後、挽いたばかりの粉をドリッパーに移動させお湯を注いだ。


 そうして入れ終わったコーヒーの内カップに注いだ二つをトレーに乗せる。冷蔵庫から取り出した牛乳をミルクピッチャーに入れるのも忘れずに。自分も飲む分だし、基本的に二杯目はサービスだ。

 コーヒーを二人のいるテーブルの上に置けば、ヨルがちらりとこちらを見て笑った。


「あらありがと」

「ありがとうございます。って、ねぇなんでいつも私の分に勝手にミルク入れるんですか!」


 すかさずヨルがミルクと砂糖を七海ちゃんの分に入れまた二人がケンカを始める。

 随分とにぎやかになったなぁ。以前はもっと静かだったのに。まぁ、俺自身も割と現状を楽しんではいるのだが。


「ちょっと見なさい、セーイチ。アンタはこの服どう思う?」


 早々に引っ込んで外野に徹しようかと思ったところに、ヨルに声をかけられた。

 彼女の視線の先には雑誌が広がっており、幾人かのモデルが何やら露出のある服を着ている。具体的に言うなら肩やら腹やらが出ているが、……最近はこういう服が流行っているのか?


「着る人に似合っているならいいんじゃないか?」

「そういうのじゃなくて。これを着てる女が目の前に居たらどう思うかを聞いてんのよ」

「どうって……腹冷えないのかなって」

「これよこれ! コイツはこういう奴なの!」


 何の話か一切見えないが、とりあえず失礼なことを言われているのはわかる。不満を訴えるようにヨルを見下ろせば長い爪でつつかれた。

 地味に痛い。


「あ、あの。じゃあ私だったら、どんな服がいいですか?」

「七海ちゃん? 別に……普通のでいいんじゃない?」


 そもそも俺流行りの服とかわからないし。適当に店で買ったシャツとパンツを着まわしているだけの人間に、女の子の服を選ぶのは無理難題過ぎる。

 その点、制服って楽でいいよな。毎日考えなくていいし、フォーマルな場にも行けるし。


「ね? 言ったでしょ? コイツに服で勝負するのはムダなのよ」

「あ、ははは。そうみたいですね」


 え、何よ本当に。訳知り顔で視線を交わす二人に首を傾げる。全くもって意味がわからん。

 二人で仲良くするのは構わんが取りあえず、コーヒー、冷めないうちに飲んでくれな?







かしまし二人と唐変木

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