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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
【イエロー編】時計ウサギと昼の月
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110/123

27 針は等速に進む


 受験期に何やっているんだろうなぁ、なんて思いつつも、気分転換と言い訳して隙間時間に組み立てていた時計が完成した十二月の後半。

 まぁ、予定していた時期には間に合ったし、勉強の合間にやっていただけでサボったわけではないので大丈夫だと思いたい。


 いずれは、なんて思ってはいたが、紹介してもらって早々に父さんの知り合いの店に世話になるとはなぁ。いつぞやP5に渡した時とは違い、きっちりと梱包した時計がスクールバッグの中で眠っている。

 ごくごく一般的な、包装の範囲だとは思う。包装自体は商店街にある雑貨屋で適当に見繕った物だが、時期が時期なもので、赤と緑のクリスマスをアピールしたものしかなかった。

 まぁ、クリスマスにかこつけて渡すんだから、何も間違いではないんだが。


 肌寒い風を受けながら、なんとなく梨穂と二人並んで歩く。

 この間、梨穂と連絡先を交換し、週に一度、何往復かメッセージのやり取りをしている。

 学年が違うとは言え、家の方向が同じこともあって頻繁に会うのでそんなものか。正直クラスの女子は授業中でも頻繁にメッセージのやり取りをしているので、多少覚悟していたのだがな。


 とにかく、だ。

 いつも通り学校に行って、冬季の追い込み学習があって、ささやかながらに家族とちょっとだけ季節ものの食事をするだけのつもりだったはずが。何をとち狂ったか、自分でもよくわからないんだが小さな箱に入れた時計を梨穂に押し付けている。


「これは?」

「まぁ、色々世話にもなっているし、最近元気なさそうだし」


 ここしばらくはP5のことを始め、魔法少女に関することで梨穂は考え込んでいるようだった。これはその慰めであって、特に深い意味はない。

 この年のクリスマスらしいイベントは、これぐらいになるだろうか。


「ありがとうございます、開けてみても?」

「ん」


 包装紙を丁寧に剥がしていく梨穂を横目にいつもの通学路を歩く。中途半端な時間ということもあって車の通行はないが、往来で手元に集中するのはどうなのか。別に俺が車に気を付けておけばいいだけではあるが、……転ぶなよ?

 梨穂がいそいそと取り外したクリスマスカラーの包装を畳んで小脇に抱え、小箱をそっと開ける。中身を覗き込んだ梨穂の表情が、喜色に染まるのを見て、こっそり口角を上げた。


「これ、もしかして!」

「P5にだけってのも、変な話だしな」

「ありがとうございます! 私、大事にします!」

「おう」


 植物には詳しくないのだが、花の刻印がされた外蓋に光の加減で虹色に反射するパールのような加工を施した文字盤。P5と違って女子だし、綺麗なものの方がいいかと思ってパーツを選んだつもりだ。

 自分にはこれしかできないし、時計作りを自分の人生の道として選択していくつもりでいる。

 だから、俺の作ったものが少しでも梨穂の気持ちの慰めになるのならと、隙間時間にコツコツと作っていたのだが。どうやら、思っていた以上に喜んでもらえたらしい。


「あ、でも私、何も用意していなくて……」

「いいよ。俺も勉強の息抜きに作っていた物だし」

「そうは言いましても。今度何かお礼をさせてくださいね」


 そう言いつつもまるで宝物を見つめるように、嬉しそうに時計を眺めている梨穂にふっと安堵のため息を吐く。

 P5に時計を渡した時もそうだったが、多分俺は、誰かのこういう笑顔が好きなんだと思う。そしてそう思えるようになったのはP5と、梨穂のおかげだ。

 梨穂が、素直に誰かを頼る方法を教えてくれた。それは彼女自身がそうありたいと思って、尻込みしていた方法なのかもしれないが、俺自身はそのおかげで前に進めた。


「P5のこととか、色々あるだろうけど、ムリはすんなよ」

「……はい」

「俺の方からも、会ったら話しておくから」


 状況は、あまり良くないのだろう。今まで進んで街で暴れていなかったP5が、イノセントジュエルを探すために動き始めようとしている。

 時計を贈ることで気を反らせたら、という当初の目的通りにはいかなかった。けれどしばらくの猶予はできたと思いたい。


 そもそもP5は楽しいから、褒められたいからという理由で行動していたんだ。

 バイデントの仲間がすべてだったP5に、一緒に居たいと、そのためにイノセントジュエルを交渉材料に自分のところのボスに話を通すと言わしめたのだし、ある意味大金星ではないか。

 元々大したこともできないのは承知の上。何も解決していないが、前には進んでいる。


「ムリすんなよ」

「うん、もう大丈夫。だって私、一人じゃないから」


 ここから全部まとめてひっくり返して大団円、なんて都合のいい機械仕掛けの神様なんて、信じているわけじゃない。

 それでも、一度信じたんだ。最後まで諦めないでいよう。その先にある結末に別れがあったとしても。せめて納得のできる別れであるように。


 冷たい風が吹く。最近急に風が冷たくなってきた。

 梨穂がP5と話したという日から、俺もP5とは会っていない。どこで何をしているのやら。俺が知らないだけで、もうすでに街を壊すためにP5がバイデントを従えているのかもしれない。けれど、それでも。

 どうか。この寒々しい風に、アイツのロウソクの火がさらされていなければいいと思う。





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